麗司は図書室を後にし、静かな廊下を通り抜ける。手にしたリュックは、今やあらゆる可能性と共に重く感じていた。彼は生存するための知識と物資を得たことで、少しだけ心の支えを感じるようになったが、その一方で、
「次に何をすべきか」
という思考が頭の中を巡っていた。
廊下の出口までやって来ると、外の状況を頭に思い描く。廃校、無人の教室、そしてゾンビの脅威—恐怖は彼の日常に密接に絡みついていたが、どうにか更なる生存を考えなければならない。彼に残された選択肢は、非常に限られている。安全な場所に行くための準備を整えなければ。一歩ずつ、慎重に計画を立てる必要があった。
廊下を歩きながら、麗司は自らのリュックの中身を再度確認した。缶詰の食糧や医療品、いくつかの本資料に加えて、金庫から取り出した薬瓶が新たに加わった。そのひとつひとつが互いに重なり合い、彼にとっての支えとなる。しかし、物資だけでは足りない。街にはまだ多くの危険が待ち受けているのだ。
「それでも、今は次の行動を考える時だ」
と心の中で呟く。
「外に出て、物資を追加するか、何かの隠れ場所を見つける必要がある」
と考えていた。彼は、廃校がどれくらいの安全を提供してくれるのか、周囲の状況を冷静に検討する。しかし、他に行くところがあるのだろうか—彼の思考は全く新しい可能性に開かれていた。
国道へ出るまでの道のりは厳しいかもしれない。廃校の周りはゾンビや野生動物によって侵略されていることを想像すると、彼の心は不安に包まれる。しかし、思い出すのは、図書室での収穫のような小さな成功だった。
「一歩一歩進むしかない」
と、自分に言い聞かせるように前に進んでいく。
教室を通り抜け、廊下を抜けることに成功すると、彼は外の空気を感じるためにドアを押し開けた。そこには荒れきった校庭が広がっていた。画廊も無残に壊れ、草が生え放題の風景が現れる。以前の賑わいはどこに行ったのか。静かに荒れ果てたこの場に、麗司は嫌でも自分の現実を受け入れなければならなかった。
「今すぐに外に出る必要がある」
と再び思考を整理しつつ、彼は校外へと足を踏み出す。新鮮な空気に触れた瞬間、周囲は静寂に包まれていた。まるで時間が止まったようだ。彼の心臓が高鳴るのを感じながら、ゆっくりと視線を巡らせる。果たしてどの方向に進めば良いか、どこに何が待っているのか見極める時だ。
まずは近くにある空き教室が残している物資を調査するのが良いかもしれない。そして、周辺にいる可能性のある脅威—ゾンビや野生動物の存在を意識しながら、慎重な行動を心がけなければ。彼は意を決し、その不安を抑えつつ周囲の探索を開始する。
「安全な場所を見つけて、次のリソースを確保しないと」
心で繰り返し、自らを鼓舞する。まずは目の前にある教室のドアに手をかける。軽く音を立てずに静かにドアを開け、内部を確かめながら入室した。
教室の内部はかつての面影を残しつつも、今は不気味な静けさが漂っている。机や椅子は乱れ、カーテンはほこりをかぶっている。しかし、過去のきらきらした学生の時代の痕跡が、新しい悪夢に忘れ去られたかのように、彼に記憶の断片を引き起こさせる。
「この教室に何かあるかもしれない」
と思い、まずは机の中をひとつひとつ確認してみることにした。
最初の机は空っぽだった。続いて別の机へと移動する。中に残された文房具や教科書。役立ちそうなものは見当たらない。しかし、隣の机の引き出しを引劈くと、何か光るものが見えた。
「これは…」
麗司は懐疑的に近づき、口元に微笑が浮かぶ。中にあったのは、小さな懐中電灯だった。
「これがあれば、暗い場所でも安心だ」
と心の中で了承し、懐中電灯をリュックに詰め込む。
他の机もチェックし、少しでも有用なアイテムを探す。文房具や古い教科書の束が無駄に多く置かれているが、その中で彼は他の教室の文房具や食事に役立つ道具を発見した。それらをすべて運び出すのは大変だが、ひとつでも手に入るものがあれば、彼にとっては希望の光と変わる。
数時間の間教室を徹底的に調査したが、意外と彼は多くの道具と物資を手にすることができた。それらを全てリュックへ詰め込み、彼はまず
「成功だ」
と心の中でそんな自負を抱く。これで少しでも次への作戦が楽になるだろう。
教室から出た後、
「次は何を優先するべきか」
と考える。周囲に落ち着く時間は与えられない。そして、今この瞬間、何かが彼を刺激していた。すぐ近くにある文化祭のように飾られた建物が視界に入った。
「そこにも何かあるかもしれない」
と考えるが、廃校を離れる前に、周囲の監視を怠らず、堂々と歩く勇気が必要だった。
外に出て、何かの脅威が迫ってくるのが不穏な気配を感じながら、その閘門に近付く。自分に言い聞かせた。数ステップずつ、衝動的に行動を奨励しつつ、彼は軽い回転で進んでいく。周囲の状況をしっかり把握しなければならないので、彼の目は一瞬たりとも緊張を緩めることが許されない。
次のポイントは、街中での物資確保だ。彼は事前に調査した場所を思い浮かべながら、すぐ外にある建物—スーパーマーケットへ向かう準備をする。
「仮想的に、この道を選ぶのは正しい選択だ」
と心の中で決意を新たにする。
そのまますぐさま動けるわけではない。最初に周囲にゾンビや他の生存者がいるかどうかを確認しなければ。麗司は一瞬息を呑み、建物の側面に寄り添うように進み、備えられたその他の道の様子をうかがった。
真偽も定かではない音が背後から聞こえた場合、沈黙がすぐに破られるのではないかと警戒する。彼は内面の恐れを労わり、
「自分一人なら、何とかやっていける」
と感情を翻弄しつつも自らに言い聞かせていく。自己防衛の意識を強調しながら、物音を聞き逃さないように注意深く進める。
近寄ると、スーパーの入り口が見え始める。破れた看板が印象的で、身の毛もよだつような破壊の跡があちこちに残っている。しかし、麗司にはもう後退の道は残っていない。確実に必要な物資を得るために、勇気を振り絞って入り口のドアを押し開ける。
入口から中を覗き込むと、薄暗い空間に広がる商品棚が目に飛び込んできた。静寂の中、遠くに異音がするようだ。
「中には何もいないといいが…」
彼は、不安を胸に秘めながらも、それに立ち向かう決意を固めていた。
「まだまだ生き延びるための道は長い」
そう自分に言い聞かせながら、麗司はスーパーの中へ入っていく。全身の感覚を研ぎ澄ませ、緊張感を持ったまま、彼は生存への道を歩み続けた。