第45話 「恋する教室の午後」

ある雨の降りしきる日の午後、私、黒川梨乃は教室の隅でこっそりと村上和真を見つめていた。彼の笑顔が、それはそれは眩しく、私の心はドキドキと高鳴る。和真くんのふんわりとしたミディアムヘアが窓から差し込む光を受けて輝く。彼は、まるで私にだけ向けられた太陽のように温かい存在だわ。

「黒川、また村上くん見てるの?」
友人が耳打ちしてきた。私は冷静を装うけれど、その見透かされる視線が気になる。こんなことがバレてはだめ、彼を監視しているなんて思われたくない。だけど、やっぱり和真くんが気になる。彼に見つからずに観察するのが私の趣味になってしまったのだから。

その時、授業が始まった。教科書を開き、先生の話を聞きながらも、心の中は和真くんのことでいっぱい。どうにかして、彼に自分の想いを伝える方法を考えなくちゃ。でも、私の想いはすぐに顔に出てしまうから、どうしたらうまくいくのか…本当に困ったことだわ。

教室の中には少しざわつきがあった。授業中に紙飛行機が飛び交っている。私も思わず目を惹かれて、和真くんの方を見ちゃう。どうして彼が飛ばしたものに惹かれるのだろうか。彼の行動を見ていると、心臓が高鳴るの。自然と微笑みがこぼれる自分に気づく。

その瞬間、和真くんも紙飛行機を飛ばしていた。彼のランダムな動きに微笑みを隠せない。飛行機は私の方に向かってまっすぐ飛んでくる。ああ、なんて運命的なのかしら。彼からの信号!勘違いだって分かっているのに、私の心は期待に胸を膨らませている。

「黒川、捕まえろ!」
和真くんが笑いながら叫ぶ。そして、紙飛行機が私の直近でひらりと舞い下りる。咄嗟に手を伸ばしてその紙飛行機をキャッチしたけれど、周りからの視線は私に集中する。

「黒川、さっきからおかしいよ!」
クラスメイトが笑う。その声に気を取られ、私は思わずフリーズ。自分のあまりの行動を恥ずかしく思い、頬が赤く熱くなる。考え込んでいるうちに、教室の静けさを保っていた先生の声が響いてくる。

「黒川、何をやっているんだ!授業中にそんなことをするとは…」
先生が私に視線を向ける。ああ、恥ずかしい!想いを伝えるどころではない。

「すみません、でもこれは…」
言いかけたものの、恥ずかしさに呂律が回らず、言葉が出てこない。色々なことが頭の中を駆け巡る。どうやって和真くんに自分の気持ちを伝えればよいのか。いつもお人好しで、誰にでも優しい彼は、私のこの重すぎる思いに気づいてくれるのだろうか。

授業が再開すると、私の心はどこか浮ついてしまった。和真くんの近くにいることがこんなに幸せなのに、どうして素直に彼に近づけないのかしら。彼が他の女の子と楽しそうに話しているのを見ると、胸の奥がキュンとする。なんとかして彼を独占したい、そんな気持ちが強くなっていく。

そしてクラスメイトたちが和真くんに向かって騒ぎ出した。どうやら和真くんがまた紙飛行機を作っているらしい。それを見た私は、急いでその場に近づく。無邪気な彼の姿はまるで小動物のようで、思わず視線が引き寄せられる。

「和真くん、その紙飛行機、私に見せて!」
と、私の声は自然と出てしまった。彼は驚いた顔をしながら、にっこりと笑いかける。

「いいよ、黒川。これ、すごく飛ぶんだ!」
その言葉に、ドキリとする。和真くんが私に特別に見せてくれる、なんて思ってしまった。私はその瞬間、心の中で小さくガッツポーズをする。

その後、彼は私のために紙飛行機を何度も飛ばしてくれた。周りは大盛り上がりだ。私も楽しい時間を感じながら、でも心のどこかで不安が渦巻いていた。彼が他の女の子と仲良くする姿に、ちょっとした嫉妬が生まれる。

「ねえ、これを黒川がキャッチしたら、どうなるかな?」
と楽しそうに言う和真くん。私はその声に恥ずかしさを感じながらも、意を決して言った。

「私、和真くんのためならなんでもするから、飛ばしてみて!」
自分の言葉に驚き、心がどきっとした。しかも、自分がどれだけ真剣に伝えたつもりなのか、彼には気づかれない。
「なんでも」
なんて、まさか真正面で言ってしまうなんて…これで彼が気づくはずだったのに。

和真くんは自分のために言ってくれたと思い、無邪気に笑いながら紙飛行機を作り続けた。それを見ていると、私の心はどんどん重たくなっていく。どうしても彼にアプローチしたいのに、私の要望は軽い冗談に感じられてしまうなんて…。色々な思いが台頭し、私の心はますますあり得ないことを考え始めた。

その思考は恐ろしいものだった。このまま彼が他の女の子を好きになってしまったら、私はどうするつもりなのか…。自らの想いが重くなる一方で、不安が押し寄せる。

「黒川、なんかあったら言ってね!」
和真くんが怪訝な顔をしながら心配してくれる。彼は本当に優しい人だわ。だけど、その優しさが私をドキドキさせる。彼の言葉が心の奥に響く。どうしてもっと早く素直になれなかったのだろうか。

「やっぱり、私がもっと自分の思いをしっかり伝えなくちゃだめね…」
心の声がさらに強まった。その時、思いついたのは、彼と一緒にいることをもっと増やしていくことだ。つまり、自然に彼の傍にいることで、彼の心に私の存在を刻んでいこう。

その後、授業が終わり、教室を出るときに私は和真くんに声をかけた。
「和真くん、明日、放課後に一緒に帰らない?」
ドキドキしながら待つと、彼は嬉しそうな顔を見せる。

「うん、いいよ!黒川と帰れるなんて嬉しいな!」
その言葉を聞いた瞬間、心の中で小さく優越感が芽生えた。

もしかしたら、これからも私の思いが伝わるかもしれない。そして、彼との距離をもっと縮めるチャンスが訪れるのだ。心は高揚し、前進する勇気を感じる。

さあ、明日からの展開が楽しみだ。私の強い恋心が、和真くんと私の未来を描いていく。彼の傍で、思いを伝える日を夢見て、厚い愛情を糧にしていこうと思うのだ。そう、自分の気持ちを、彼に届けなくては!私は愛を重く背負い、更に進化していくのだ。これからの毎日が、ワクワクすることだわ。