第42話 「恋する高校生のスピーチコンテスト」

高校2年生の黒川梨乃は、学校生活のすべてを愛する村上和真を密かに思っていた。我が家でのんびりした時間を過ごす彼の横顔を思い浮かべたり、クラスで彼が笑っている瞬間に心がドキドキするのが日常になっている。私の心は、彼の姿を見れば見るほど、高鳴り、そして不安になる。

カラフルな教室の片隅で、私はやっぱり彼のことを考えていた。ああ、和真くん、今日も優しい笑顔で私のことを見てくれるかな。そんな淡い期待が心を温める。しかし、その期待と同時に、暗い影も忍び寄る。彼が他の女の子に優しくする姿を見てしまうことが、私の心に深い傷を残すことも少なくなかった。

「梨乃、スピーチコンテストの練習、やらない?」
と友達が声を掛けてくれる。それを聞いた瞬間、思わず心臓が高鳴った。ああ、これはチャンスだわ。和真くんと同じテーマでスピーチを組み立てることができれば、彼ともっと近づくことができるかもしれない。

私は即座に答える。
「もちろん、しますわ」

友達たちはにっこりと微笑んで、席に戻った。しかし、その瞬間から私の頭の中は和真くんとのスピーチ練習のことでいっぱいになった。
「和真くんの意見を聞かなきゃ」

「彼にぴったりのテーマを選ぼう」
と考えるうち、私はすでに彼との時間を思い描いていた。

その日の放課後、私は彼に声を掛けた。
「和真くん、スピーチコンテストの練習、一緒にやりませんか?」

少しびっくりしたように目を丸くした和真くんが笑いながら、
「うん、いいよ。黒川はどんなテーマを考えてるの?」
と言った。その優しい口調が、私の心にじんわりと響いた。

「私、環境問題について考えていますわ。和真くんは?」
私は彼の反応をじっと見つめた。

まったくもってお人好しの和真くんは、
「僕は動物をテーマにしようかな。最近、ペットブームとか聞くし、みんなが動物について考えるきっかけになればいいかなって思ってさ」
と答えた。彼の言葉に、私の心が高鳴る。

その発言を聞き、私は心の中で一瞬戸惑った。
「和真くんも動物が好きなんだわ。でも、他の子と話している姿を思い浮かべると、やっぱり不安になる…」
そんな私の心を知る由もない彼の優しさに、逆に胸が締め付けられた。

「じゃあ、私のテーマも少し動物に近い内容で考えてみようかな。和真くんを意識しているってみんなに思われちゃうかしら…」
内心ドキドキしながら、私は次第に彼とのスピーチのことで考えを巡らせていった。

放課後の図書館で、和真くんと私のペアで練習が始まる。彼はノートに動物のことを書き始め、私も環境問題に関する資料を広げた。自然に隣にいる彼の存在感を感じながら、私はその笑顔に魅了される。

「梨乃、これいいよ。動物は本当に大切だし、みんなにそのことを知ってもらいたいね」
と彼が言ってくれると、私は思わず目を輝かせた。
「はい、和真くん、そう思いますわ。私も動物について大事なことを伝えたいです」

「ペットを飼う意味って、すごく深いよね。彼らからたくさんのことを教えてもらえるし、感謝しなきゃね」
と語る彼に、私は心の中で
「うう、和真くん。あなたのその気持ち、もっと私に伝えて欲しい」
と叫びたくなる。

スピーチの練習が進むにつれ、私の気持ちは高まっていく一方で、和真くんが他の女子と仲良くしている光景がちらついて、少しずつ不安が増していった。そんな気持ちを抱えながらも、一緒にいる時間が心地よくて仕方なかった。

練習を続ける中で、私は彼との会話がどんどん楽しくなってきた。和真くんも笑顔が増え、私の話に耳を傾けてくれる。そんな一瞬一瞬が私を幸せでいっぱいにする。でも、また不安もやってくる。
「この時間が終わったら、和真くんは他の女の子と楽しむのかしら…」

ある日の放課後、練習が終わった時、彼は私に向き直って言った。
「梨乃、スピーチが終わったら、みんなでどうか遊ぶ?」
まったく意図しないお誘いに、私は心が揺れ動く。みんなで遊ぶということは、彼を独占することができない可能性が高い。心の声が叫んでいる。
「どうしよう、和真くん、私はあなたが好きなのに…!」

「それ、楽しそうですわ。でも、和真くん、もし他の子と仲良くなるとしたら、私…少し、寂しくなるわ」
と伝えると、彼は
「ああ、梨乃なら大丈夫だよ。みんなで楽しくやるからさ」
と少しも気に留めずに笑顔で返してきた。まったくもって鈍感すぎて悩ましい。

練習のたびに彼の優しさに触れ、その度に想いがさらに強くなる。私の心は和真くんの周りでエコーのように鳴り響き、
「もっと彼に近づかなくては」
と焦る気持ちが止まらなかった。

時が経ち、スピーチコンテスト日が近づいてきた。何度も練習を重ね、私は自分の感情を乗せたスピーチを完成させた。もちろん、和真くんとの距離を縮められる機会だと期待を膨らませていた。もっともっと彼を感じたくて、私の心はウキウキしていた。

スピーチ当日、私は気合を入れて会場に向かった。和真くんも一緒で、その姿を見た瞬間、思わず嬉しくなった。
「頑張るわ、和真くんのためにも!」
と思いながら、彼を支える気持ちが高まる。

私たちの番が訪れ、緊張しながらも彼の隣に立つ。緊張する彼に、
「大丈夫ですわ、和真くん。一緒にやるから」
と励まし、私も心の中で
「私の想いを伝えなきゃ」
と意気込んでいた。

彼が話し始めた瞬間、思わずその声に耳を傾けた。
「動物は、僕たちにたくさんの愛をくれるんです。それに、私たちの生き方を一緒に考えてくれる存在です」
と言った瞬間、私は心の底から彼の気持ちを理解できた。

スピーチが進むにつれ、私の心は彼と同じ気持ちを抱いてしまった。
「この場で伝えたい。それが、スピーチコンテストでの私の思いのすべて。そして、和真くんと一緒に考えたいと思っていること」

彼の隣に立つ私の番が来た。意を決して話し出す。
「私は環境問題について考えた時、動物たちがどれだけ私たちに大切な存在であるかを知りました。また、私たち人間も同じように愛を求め、愛される存在です。そして、私たちの身近にいる人々と一緒に歩む道を、同じ気持ちで考えたいと思ったのです」

この瞬間、和真くんが私の目を見ていることに気づく。その視線が私を励ます。彼が感じる何かを私も感じる。私たちの目が合い、その瞬間、和真くんの優しさが背中を押してくれるようだった。

スピーチが終わって拍手が起こる中、ラスティックな緊張から解放された私は、和真くんの顔を見上げた。
「どうだった?」
と聞くと、彼は笑顔を浮かべて答える。
「とっても素晴らしかったよ、黒川。お礼も言いたい。でも…」
その後の言葉が心に引っかかり、私は不安になる。
「でも、やっぱり他の子たちの反応も気になるな」
と呟く。

私は思わず目が潤んできた。
「和真くん、私とあなたの気持ちは…」
言いたいのに言えない。その夜も、私の心にはずっと不安が残った。

その次の日、私は思い切って友達に相談をする。
「私、和真くんが好きで、でも、彼には他に可愛い女の子が…」
考えが巡るほど、心が揺れて、涙さえ溢れ出そうになる。友達は困惑して私を見つめ、
「それなら、梨乃が自分の気持ちを正直に伝えればいいんじゃない?和真くんも喜ぶかもよ」
と言ってくれた。

その言葉に勇気をもらい、私は決意した。
「そうですわ!和真くんに、私の気持ちを伝えよう」
次の日、図書館で彼に思いを告げた。
「和真くん、私…あなたに伝えたい気持ちがあるの」

その瞬間、彼のなんとも言えない優しい表情が私の心に響いてきた。
「ぼくも梨乃とのこと、ずっと考えてたんだ。ただの友達としてじゃなく、もっと特別な関係になれたらいいなって」

その言葉に、胸がいっぱいになった。私の心の中にあった不安が吹き飛んで、同時に彼に抱く想いが一層強くなった。
「それ、私も同じ気持ちですわ!」
その瞬間、ふたりの心が通じ合った。

私たちは、互いに思いを寄せ合っていたことに気づき、笑顔で結ばれた。これからの未来を一緒に歩んでいくことを期待している。恋愛の思い出は、新たな扉を開く第一歩だった。私たちの心は一つになり、そこから始まる愛の物語は続いていくに違いない。