麗司は雑貨屋を後にし、ビルの廊下を静かに進んだ。外の風は冷たく、彼の頬を撫でるように通り過ぎていく。不安が心を満たしながらも、確かなものを手に入れた安堵感も交錯していた。リュックの中には缶詰やカップラーメン、暖かいセーター、懐中電灯、そしてついに手に入れたナイフが詰まっている。これからの生活に必要な品々であることは間違いない。しかし、彼はこの物資だけでは到底乗り越えられない状況にいることを痛感していた。
出口に向かう途中、麗司はたびたび耳を澄ませる。どんな音がするか、何が近づいているか気にかけながら、緊迫した足取りで進む。頭の中にはゾンビ化した人々の恐怖が浮かび上がり、その影が彼を追い立てる。しばらく進んだところで、外の様子が見える窓の近くに立ち止まった。彼は外の空気を吸うことで冷静さを保とうとしていた。そこに広がっているのは、廃墟と化した都市。かつての美しさは失われ、すべてが影だけを残している。
彼はつい、この異常な光景に目を奪われる。街中の車は無造作に放置され、人々の足跡は消え去った。明るい色彩が一切消え、薄暗い色合いに包まれている。自分の目の前にはどれだけの人が恐怖の中で命を落とし、どのように街が崩壊に至ったのか、誰にもわからない。麗司は、自分自身がこの世界で生き残るためには何が必要かを冷静に考える必要があると感じた。
決して楽観視できない現実。彼は自分の状況を振り返り、今持っている物資の価値を再評価しなければならなかった。缶詰やカップラーメンは重要ではあるが、彼の生存を支えるためにはさらなる道具や食料が不可欠だった。次にどこで物資を見つけられるのか、どうやって確保するのか、今後の計画を立てることが優先だ。
麗司はゆっくりと呼吸を整え、冷静に考える。監視できる範囲を広げるため、近くのビルや地下道に目を向けることが有効だ。リュックの中は一杯になったが、まだ探し続けられる可能性は無限にある。彼はまずスーパーでの遭遇を思い出し、次に何を探しに行こうかと考えを巡らせる。
「次はどこに行こうか」
自問自答しながら、リュックの重さを感じつつ出口へ向かう。暗い廊下を通り抜け、その先に広がる日差しを惹きつけられるように眺める。外に出た瞬間、麗司はまるで他の世界に足を踏み入れたかのような印象を抱いた。景色は荒廃しているが、自由な空間が彼の心を広げてくれる。しかし、その自由の裏には危険が潜んでいることを忘れてはならない。
通りを行くと、周囲の様子を注意深く観察する。動いている者はいるのか、音がする者はいるのか。麗司は警戒しながら段々と緊張感を高めていく。かつての街は彼の人生の一部であり、今彼はその街で最も大切なことを見つけるために行動する。目の前にはスーパーやコンビニが視界に入るが、そこには危険が待ち受けていることを彼は知っている。
麗司は南の方へ足を運ぶ。かつての交差点が思い起こされ、彼の心に微かな期待が湧き上がる。人々が賑わっていたころ、何気なく過ごした日々が恋しい。しかし、その日々はすでに過去のもの。現実には、彼の生死がかかっている。
やがて、麗司は遠くで崩れかけたスーパーを見つけた。あそこに行けば何か物資が見つかるかもしれない。彼は慎重に方向を定め、一歩ずつ進む。危険の兆候を感じ取るため、耳を澄ませながら進むことが重要だ。この世界では、周囲に何が潜んでいるのかは誰にもわからないのだから。
途中、倒れた車や残骸を避けながら進むと、彼の視界に付近の家々が映る。かつては人々の生活の場であり、温もりがあふれる場所であったが、今はただの廃墟に過ぎなかった。何の気配も感じることなく歩き続ける麗司の心の中には、どれほどの孤独が渦巻いているのか。彼は脳裏に様々なことを思い描きながらも、その孤独が自分を強くしてくれると信じている。
スーパーに近づくにつれ、徐々に周囲の状況に目を配る。風が吹く中、何かの影が見えると彼は鋭い視線を向ける。心臓が高鳴る音に耳を傾けながら、近づいている物に気を留める。ゾンビが現れる前に、何かしらの警告を受け取らなければならない。彼は納得し、さらなる警戒を呼びかける。
「落ち着いて、冷静に。今の自分にできることを考えよう」
自らに言い聞かせながら、次の行動を決める。スーパーの入口には無残な状態の扉があり、崩れた棚や倒れた商品が散乱していた。しかし、彼の心には期待の光が宿っている。食料を求め、物資を見つけるためには、この場所が最適だと判断した。
麗司はそっと扉を押し開け、静けさの中に入っていく。内部は薄暗く、かつての賑わいは一掃されていた。彼のリュックにはすでに貴重な物資が詰まっているが、欲に駆られるようにさらなる備蓄を求めて足を進める。息を潜めて周囲を見渡し、不審な影を感じないよう注意を払う。
「この先に必要なものがあるはずだ」
心の中に誓いを持ちながら、麗司は店内を歩き回る。冷蔵庫はすでに機能を失い、食料が溶けかけているが、彼が手に入れたいものはそこにはなかった。棚を見回し、何が残っているかじっくりと探す。音を立てぬよう、心拍を抑え、何が見つかるかを待つ。次第に自分が求めるものが見えてくる。
缶詰のコーナーに足を運び、残っている品々を確認する。奥の棚には散乱した食品がある。何が生き残っているのか、どの缶詰が食べられるのか、判断するまでもなく、そこには希望の光が隠れている。麗司はゆっくりと手を伸ばし、いくつかの缶詰を掴み取ってリュックに突っ込む。
それから、彼はすぐに冷静な判断を取り戻し、次に進むことを決める。常に今後の生活を考え、無駄な動きを避けなければならない。次の物資調達のために、何か生活必需品が必要だと考え続ける。飲料水が確保できていない今、どこかで手に入れなければならないと念じていた。
その時、彼の耳に小さな音が聞こえた。麗司は一瞬、ぷつりとした音に身を縮こまらせる。動いているものがいるのか、心は再び警戒を高めていく。彼は静かに音の方向を探り、その正体を突き止めようとしていた。音が近づくにつれ、自身の決意が揺らぎかける。
「生き延びるためには行動し続けなければならない」
彼は自らの心に言い聞かせ、再び動き出すことを決めた。リュックをしっかりと担ぎ、何を探しに行くべきか一瞬が頭に浮かぶ。周囲に何が潜んでいるのか考えて、より多くの物資を集めなければ生き残れない。最終的には食料、水、道具、すべてが必要だ。
彼は次のエリアに移動しながら、多くの状況を把握し続ける。暗い倉庫のような場所へと下がっていくと、何か大きな物の存在に目を向ける。物陰に隠れるように、未だかつての物資が残されているのだろうか。運が向いてくることを期待しつつ、次のステップに進むのだった。生き延びるために選ばなければならないいくつもの選択を心に留めながら、麗司は未来へ確かな一歩を踏み出していく。