第59話 「探偵女子大生の事件簿」

久遠乃愛は、大学の文学部で推理小説を愛する女子大生であった。彼女の黒髪は長くストレートで、いつもポニーテールにまとめられていた。その姿は一見冷静で神秘的な印象を与え、実際の彼女の性格もそれにふさわしかった。
「~ですわ」
と優雅なお嬢様口調で話すが、その裏には深い観察力と論理的思考が秘められていた。

乃愛の相棒、雪村彩音は、彼女の幼馴染で同じ大学に在籍している。明るく人懐っこい性格の彩音は、茶髪のボブカットが特徴で、常に周りの人々を笑顔にしていた。二人は大学のサークルで知り合い、以来、さまざまな事件を共に解決してきた。

ある日、乃愛と彩音はサークル合宿で訪れた山荘に滞在していた。山荘は静かな山の中にあり、美しい自然に囲まれている。夜も遅く、みんなで楽しく過ごしている中、大きな声がしてきた。
「誰かのバッグが盗まれた!」
という悲鳴だった。

駆けつけた先には、部室で知り合ったOBたちが集まっており、彼らの表情は混乱していた。バッグを持っていたのは、最近サークルに参加した中学生の子だった。驚いたことに、そのバッグには財布や携帯電話が入っており、生活に必要なアイテムが詰まっていた。

乃愛は、早速事件の調査に乗り出すことを決心した。
「彩音さん、私たちにできることをしましょう」
乃愛は冷静に言った。

「ああ、乃愛ちゃん!私、あの中学生のお手伝いする!」
彩音はキラキラした目で返した。彼女の言葉を聞いた乃愛は微笑みを浮かべ、早速行動に移ることにした。

部屋に戻った二人は、バッグが置かれていた場所を精査し始めた。周りにはまだ人々が動き回っていたが、乃愛はその中から手がかりを見つける必要があった。しかし、気になることが一つあった。
「彩音さん、ここにある匂い、何か変ですわね」

彩音は首をかしげ、匂いを嗅ぎ取ってみた。
「そうだね、何か知らない香りだね。これって何かの花の匂いじゃない?」
彼女は呟いた。

乃愛はその香りを記憶し、周りの人々の様子を観察する。その中で、一人のOBが他の人々と異なる挙動を見せていることに気付いた。彼は仲間のものをしきりに見ており、少し不自然だった。

「彩音さん、このOBに注意を払ってみましょう。彼の行動が妙ですわ」

二人はOBの動きを観察したが、その彼はバッグの事件とは関係がないようだった。乃愛はため息をつき、再び匂いに意識を戻した。
「この未知の香りが何を意味しているのか、解明できる必要がありますわ」

その後、乃愛と彩音は、サークルの仲間に話を聞くことにした。サークルのメンバーは、事件の話題で盛り上がり、各々の意見を交換している。

「このバッグ、だれが持ってたの?誰かが気になることを知ってて、情報を隠しているのかしら」
乃愛は静かに考えていた。

「確かに、みんながこのバッグを持ってた子をよく知ってたよね」
と彩音が続ける。
「でも、その子は本当にこのバッグを盗まれたことを気にしているのかな?」

乃愛は微笑んだ。
「素晴らしい指摘ですわ、彩音さん。私たちが思っている以上に、何か大きな問題が潜んでいるかもしれませんわ」

すると突然、部屋のドアが開き、部室のOBが入ってきた。彼は落ち着いた表情を浮かべ、乃愛に近づいて言った。
「君たち、もしバッグを探すのなら、私も手伝うことができるかもしれない」

乃愛は彼の目をしっかりと見つめ、
「あなたがこの事件にどう関わっているか、教えていただけますか?」
と尋ねた。彼は動揺を隠すように目を逸らし、何かを思案している様子だった。

その瞬間、乃愛は再び未知の香りが漂ってくるのを感じた。彼の後ろに控えている時、何かの異変を感じ取ったのだ。じわじわと迫るような気配を察知した。

「彩音さん、あなたは外に行ってみることができる?」
乃愛はできるだけ落ち着いて指示した。
「外には何か手がかりが隠れているかもしれませんわ」

彩音は即座に立ち上がり、扉の外に出た。
「分かった!いろいろ探してみる!」
と元気に返事をした。

乃愛はOBに再度目を凝らす。
「あなたが何かを隠していることは分かりました。私たちはあなたのことを知っているかもしれませんね」

OBは一瞬硬直し、やがて重たい口を開いた。
「私には、家族の遺産に関して複雑な事情がある。だから、つい気を引く目的で、あるものを使ったんだ」

乃愛はその言葉に耳を傾けながら、彼の様子をじっくりと観察した。OLBの手元から、匂いの素となるものが何かを持っていると感じたからだ。彼の緊張した様子は、単なるバッグの盗難事件では勇気を振り絞るようなものだった。

その時、彩音が戻ってきた。
「乃愛ちゃん!外に、BAの秘密を知りそうな人がいるよ!」
彼女の言葉に乃愛は目を輝かせた。
「彩音さん、その人物はどなたですか?」

「あの、例のOBの親友らしい。彼は何か知っているはず」
と彩音が熱心に説明した。

乃愛はOBの表情を再確認し、意を決した。
「どうやら、あなたには本当に話さなければならないことがまだあるのですわね」

OBはついに心の内を明かすことにした。
「実は、遺産争いが関わっているんだ。私の家族には、いくつかの秘密がある。このバッグの中には、重要な証拠が隠されていたんだ」

乃愛はその言葉を聞き、冷静に状況を分析した。
「では、このバッグが盗まれることで、何が失われたのか。それが分かれば、状況が一変しますわ」

OBはゆっくり頷いた。
「私の母が、遺産を隠していた。私を利用して、他の家族が彼女に近づかないように、婚姻を模倣したんだ」

その瞬間、乃愛は心の中で一つのピースがはまった。あの未知の香りこそ、証拠となる遺産そのものを示唆していることに気づいたからだ。
「あなたの言葉が正しければ、バッグに残っている匂いが次の手がかりですわ」

OBは動揺しながら、乃愛の言葉に反応した。
「もしこれが本当なら、私の将来がどうなるか…逆転のチャンスさえ得られるかもしれない」

そして、彩音は再び気を引きつけるように言った。
「私たちがその証拠を手に入れれば、あなたはすぐに動き始められますよ」
彼女は前向きな言葉を持ち寄り、周囲を励ました。

結局、乃愛と彩音、OBの三人が協力し、隠された証拠を掘り起こすことになった。彼らは周囲の部屋を徹底的に調査し始めた。そこで見つけたのは、家族の秘密を物語る文書が記されたノートだった。

「これで全てが明らかになりますわ。あなたが隠していたものが、実は他の人々にとっての大きな問題をもたらすものだったのですわ」
と乃愛は言った。

数時間後、皆が集まった場で、乃愛は自信を持って言った。
「私たちは全てを解決しました。このバッグの真実は、遺産を狙った家族の争いから生まれたものですわ」

OBは歓喜に満ちた表情で、乃愛に感謝の言葉を述べた。その後、彼は自らが役立てるように、遺産争いを解決するための行動を起こす決意をした。

夜が更け、星が煌めく空の下、乃愛と彩音は山荘のテラスで一杯のお茶を楽しんでいた。
「今日もまた、無事に事件を解決できてよかったですわね」
と乃愛は微笑みながら言った。

「そうだね、乃愛ちゃん!でも次の事件はどんなものだろう?」
彩音は楽しげに空を見上げた。
「また、いろいろなストーリーに巻き込まれていくんだろうね!」

乃愛は少し微笑んで、
「そうですわ。だからこそ、私たちは探偵なのですわ」
と言い放った。未来の事件に胸を膨らませ、二人の友情と探偵活動はこれからも続いていくのだった。