第46話 「サバイバルの決意」

麗司が自宅へ戻ると、安堵感が一瞬だけ彼を包み込んだ。しかし、それもつかの間、彼の心の中には冷静さを取り戻すための次の行動が待っていた。今、この室内は彼にとっての安全基地であり、ここからどのようにサバイバルを続けるのかを慎重に考える必要があった。

彼はまず、確保した水をロッカーのように設置された棚の中にしまった。その水がどれほど貴重なものであるか、彼は痛いほど理解していた。数日分の飲料水があるとはいえ、無駄にすることは許されない時代なのだ。水を扱いながら、麗司は冷静にさらなる計画を練る。

次の食料を確保するためには、飲み物を収集しただけでは不十分だ。数日分のインスタント食品が残っていても、その後の糧をどう確保するかが今後の生存を左右することを理解していた。
「周囲の状況を把握し、私ができる手を打つしかない」
と、彼は決意を新たにする。

まずは周囲の環境に目を向ける。窓から外へ目をやると、遠くに見える雑踏には相変わらず不気味な静けさが漂っている。あのゾンビたちが数匹でも近くにいたら、麗司の目の前の状況が一瞬でひっくり返ってしまうことを思い知らされる。そのため、周りの状況を細心の注意をもって観察することが、今の彼にとって最優先課題だった。

窓辺に立ち、周囲の人影や音を探る。彼は耳を凝らしていたが、何も聞こえない。僅かな風の音さえも、彼の耳には神経を尖らせる存在になった。どれだけの孤独が彼を取り巻いているのか。自らがこうした状況に陥ることになったのかを思うと、感情が再び胸に押し寄せた。

「不安に苛まれても仕方ない」
と自らに言い聞かせながら、麗司は部屋の隅に置き忘れたリュックを思い出した。あれは、予備の物資や工具を収集するための重要なツールになるだろう。リュックを担ぎ、必要な道具を見つけるために心を引き締める。

彼は部屋の中を再度見渡し、自分が利用できるアイテムに目を向けた。まず目に入ったのは、使い古されたサバイバルナイフだった。大学時代から持っていたもので、他に頼るものがない今の彼にとっては貴重な武器となる。彼はそのナイフを手に取り、鋭い刃が光を反射するのを見つめながら、自らを奮い立たせた。

次に、家電製品の中で彼に必要不可欠なのは、懐中電灯であった。暗くなるとゾンビたちの移動が活発になることを考慮し、光を頼りに動くことが生存のカギだ。懐中電灯を手にした時、彼は心のどこかでほっとする。自らを照らす光が、今後の明るい未来を感じさせるように思えたのだ。

これらを手にした後、麗司は次の行動を考え始めた。
「どこに行くのか」
その問いは夕方の冷たい風と共に彼の心を暗くする。周囲の状況が厳しく、孤独にもかかわらず、彼は生き延びる意志を強く持ち続けていた。

彼が向かう先は、マンションの近くにある別のスーパーマーケットであった。葬られた街の中、彼が次に手に入れたいのは、残された食品の数々である。しかし、崩壊した都市でそれを手に入れることは簡単ではない。冷静でなければ、彼の命さえも奪われる危険が常に付きまとっている。

出発する準備を整えた麗司は、最後に顔を鏡で見つめた。無表情であったが、どこか強い意志を感じた。
「今から本当にサバイバルが始まる」
それを胸に出発する。一歩一歩が命を賭けた行動であり、自分自身の成長を感じながら、外の世界へ踏み出していくのだ。

マンションの階段を下りる際も、足音が生まれないよう意識する。冷たいコンクリートの感触が、彼の不安を一層引き立てたが、迷うことは許されない。彼は心の中で
「生き延びるために、安定した防衛線を築く必要がある」
と念じる。

外の空気に触れると、彼は以前から感じていた不安感が一層強くなった。かつての町は、かすかに残る記憶と、今はただの廃墟であった。この景色の中で生き残っていく覚悟を決めなければならない。緊張しながらも冷静さを保ったまま、麗司は再び足を進める。

近くの公園には先ほど見たゾンビがまだいるかもしれない。彼は先ほどの池の場所を記憶しつつ、なるべく音を立てないよう、配慮しながら動く。心の中で
「もしも、見つかったらどうしよう」
という恐怖が渦巻くが、彼はその感情を押し殺す。

雑草が生い茂る公園の中で、彼は周囲を確認しながら進む。近くに見えた自販機にも目を向けている。
「何が残っているかな」
とつぶやくように心に思いを巡らせた。自販機が万が一倒れている場合は、その飲料水を運ぶことが重要だと考えた。何かしらの飲み物が必要だからだ。

公園に到達すると、無残な光景が広がっていた。かつて家族連れが笑顔を交わし合ったであろう遊具は朽ち果て、草が生い茂っている。彼は思わず目を背けたくなる気持ちを押し殺し、冷静に先を見つめる。
「今は生き延びるために、過去の記憶を捨てなければならない」

彼は自販機の前に近づき、目の前の状況を冷静に観察した。数本の飲み物が放置され、その中には腐る前の飲料も見受けられた。彼は周りに人間の気配がないことを確認し、急いで自販機を開けると、目には目の前に滑り込む冷たい空気が心地良く感じる。

品を確認しながら、彼は
「どれを持ち帰れば安全で、効果的なんだろう」
と思考を巡らせた。最終的には、彼は一番新しいペットボトルを選び、作業を急ぐ。

自販機の飲み物を確保した後、彼は周囲を再度確認する。ゾンビが近くにいないことを確認しつつ、自販機の周辺に何かまだ有用な物がないか探す。しかし、目に映るのはただの廃墟で、避けるべき危険だけだ。

「ここから出なければならない」
と告げる自分の心に従い、麗司はゆっくりと後退する。間近にあるゾンビに見つからないよう、その静けさの中で一歩一歩気をつけて動く必要がある。

公園を離れると、彼は十分な決意をもって近づいている場所を目指す。まだ周囲の状況は分からないが、希望的な材料を持ち帰ることができた満足感が胸を支配する。

マンションへ戻る道のりはさらに慎重になる。抵抗しなければならないと思う瞬間が続くが、その反面、彼は生存のチャンスを切り開くために何ができるかを考え続ける。
「次は、どこを調べるのか、どんな新しい物資を見つけられるのか」
と。

麗司は道を曲がった瞬間、彼の心の中にある孤独感が再び彼を襲う。彼女や仲間と共に過ごしていた過去が思い出され、その記憶に身を重くする。しかし、彼はそれを振り払う。
「今は生き延びるために行動することが重要だ。仲間を作りたくても、できることは私だけだ」
と自らを鼓舞しつつ、マンションへと戻った。

マンションのドアを開けると、ほっとした気持ちがこみ上げてくる。しかし、その安全が永遠のものではないと彼は理解していた。すぐに行動を開始しなければ、明日をも知れぬ状況であることを忘れてはいけない。手に入れた飲み物を確認し、次に考えなければならないのは食料の確保であった。

彼は新たなサバイバルの舞台へと進む。孤独な生活の中で生き残り、都心での崩壊が彼に試練を与えていた。だが、それを乗り越え生き延びるための知恵が試されるのだと感じ、
「次は、どうするか」
その想いが促進していく。

再び窓の外を眺め、冷静に次の行動を定める。
「次はどこに行こうか」
。彼は不安を抱えつつも、冷静さを忘れない。
「自らの運命を切り開く力がある」
と信じ、彼は次なる情報を探し続ける準備を進めている。