第28話 「温室での作業と孤独な決意」

青志は、次の準備を始めるために、早朝から温室の中で手を動かし始めた。温室内の温度は、外の冷たい空気に比べて暖かさを保っているとはいえ、朝一番の冷気はまだこの狭い空間でさえも侵入してくる。彼は、その冷気を防ぐための最初の作業に取り掛かることにした。

「まずはダクトの強化からだ」
と心の中で念じ、青志は用意しておいた材料を手に取った。冷たさは手をかじかませたが、彼の心は前向きであった。昨日集めた古い木材に、布やタオルを組み合わせて、保温効果を最大限に生かすように設計していく。青志は熱心に計画を練り、思い描いた形を自分の手で作ることに情熱を注いでいた。

温室の中央に位置するダクト。その周囲に使用する布や古いタオルを丁寧に裁断し、必要なサイズに整えていく。裁断した布の断面が冷たく身に染みるが、彼はそれを気にすることなく、次々と作業を進めていく。
「この材料をうまく活用すれば、さらに効率よく保温することができるはず」
と、青志は自らを鼓舞した。

彼はまず、外壁の木材の上にに布を貼り付けていく。テープで固定しながら、隙間なく密着させることが重要だ。手先が器用な彼にとっては、細かい作業は得意分野だった。
「これがきちんと効果を発揮すれば、温室内の温度が安定するはず」
と頭の中で計算を巡らせながら黙々と作業を続ける。

しかし、手が冷え切ってしまったことに気づく。
「もう少し仕事を進めたいけれど、これ以上続けていたら手が動かなくなってしまうかもしれない」
と青志は一瞬足踏みをした。そこで、彼は一度ダクトの作業から手を放し、温室の隅に置かれた小さなストーブのところに移動した。ストーブをつけることで、そこだけ小さな温もりを得ることができ、いったん手を休めることになった。

冷えた指先から温かさを感じると、青志は再び意欲を取り戻した。
「これで、手が動かせる」
と思い、再度作業に戻る。彼はすぐに、ダクトの周りに追加の布を取り付ける作業に取り掛かった。材料の配置や接着方法をあれこれ試行錯誤しながら進めていく。1枚ずつ、意識を集中させて、確実に設置していく。

作業を進める中、彼の心の奥には孤独感がうっすらと漂っていた。周囲には誰もおらず、自分一人の力で生き延びる生活が続いている。時折、ふとした瞬間に人の温もりが恋しくなることもあった。しかし、彼はその孤独を悪いものとは思わなかった。自分の手の動きが、今の生活を支えているのだという強い実感があったからである。
「孤独であることは、自分の力をより研ぎ澄ますチャンスだ」
と彼は自らを奮い立たせた。

製作中の温室の様子を見ていると、植物たちが青志の労力を受け取っているように思えた。
「この植物たちが生き続けることで、俺の努力の意味が生まれる」
と彼は考える。これらの作業が彼だけでなく、小さな命のためにも価値があるのだと実感し、彼はますます熱心にダクトの設置作業に打ち込んだ。

「次はダクトの固定だ」
と心の中で決意し、金属片と古い釘を用意した。周囲の状態を確認しつつ、彼はダクトの正確な位置を決めて、金属片で補強を施した。打ち込みながら、少しずつダクトに力を与えていく。青志は、これが強固な支えになってくれることを願った。同時に、外部の冷気がしっかりと防がれることも期待した。

心地良く作業に没頭していると、外から吹雪の音が響き渡ってきた。その音は、風が強くなってきたことを示していた。
「風が強くなると、さらに寒さは厳しくなる。今のうちに作業を終わらせなければ」
と青志は心の中で思う。彼はラストスパートをかけて、ダクトの周囲をしっかりと囲み、強化していくことに注力した。

その後、すべての材料を整えていくと、ダクトは見た目にもかなり立派に仕上がった。組み合わせた布地が、温かさを閉じ込める防護壁として機能することを願った。
「これで一安心」
と青志は心の中で安堵感を持ち、少しばかりリラックスした。

作業を終えた武者は、今後のために環境を整えることを考え始める。
「次は何をするべきか」
と自分に問いかけた。まだ周囲の寒さを考慮すれば、他の部分も強化する必要がある。特に、水場や貯蔵環境は一番注意が必要だと感じる。
「このままでは、冷えてしまう」
と思い、対象を明確にする決意を固める。

続いて青志は、水場に目を向けた。
「水は生命の源。それを守るためには、もっと周囲を調整する必要があるはず」
と思い立ち、予備の保温素材を用意することにした。彼は温室内の隅に置いてあった古いバケツを取り出し、そこに水を入れて保温する方法を模索した。

まずは水を貯め、それに布や段ボールをくるんで細工していく。そして、それが保温効果を発揮できるような手法を考えていると、ふと気持ちが軽くなる瞬間があった。
「この小さな仕事が、将来の厳しさを軽減するはず」
と信じて作業を続けた。

水を包み込むためのじゅうたんのようなものを探し、彼は手元を忙しく動かす。思いつく限りの工夫を凝らし、新たな設計図を心に描いた。
「こうすれば、温度を確実に保ってくれるだろう」
と信じて、手を止めることなく動き続けた。

その作業も無事に終え、最後の水バケツ周りを整えた時、彼の心には充実感が広がっていた。
「これで心配が一つ減った」
とほっと息をつく。
「明日もさらに強化を進める必要がある」
と思い、青志は大きく息を吸った。次の挑戦にどう向き合うか、すでに頭の中には浮かんでいた。

夕暮れが迫る頃、青志は作業を終え、温室の中を見回した。
「今日は頑張った。これで少しは快適な環境が築けたはずだ」
と満足感に包まれた。周囲の植物たちも元気そうに見え、彼はそれらの世話も忘れずに続けていくことが大事だと実感した。

そして、明日への期待を胸に抱き、自分が行った努力と成果を振り返ると、青志は確かに自分の進んできた道に自信を持っていた。
「これからも一歩一歩、前へ進んでいこう」
と新たな決意を胸に、明日への準備を確かに進めていた。