毎日の学校生活において、私の心の中にある秘密は、まるで大きな宝物のように輝いている。それは、私が同じクラスの村上和真くんに抱いている恋心だ。彼は、のんびりとした優しい笑顔が印象的で、いつも周囲を和ませてくれる。そんな和真くんに密かに恋をしている私だが、私の想いは『密かに』とは程遠い。むしろ、クラスメイトたちにはすっかりバレていると思う。彼を見つめると、思わず顔がほころび、心拍数が上がり、その様子は周囲から見ても明らかだ。
そんな私の心の中を理解しているのは、彼の友人たちかもしれない。私が和真くんの視線を追う姿や、彼が楽しそうに話すのを見つめる目は、明らかに乙女のそれだ。そして、私が『和真くん』と呼ぶその声は、まるで愛を語るように響く。だけど、和真くんは私の気持ちにまったく気づいていない。それどころか、私の行動を
「重すぎる」
と思うことさえあるようだ。そんな彼の無垢さに、私はいつもいじらしさと同時に、少しの嫉妬を感じたりする。
「黒川、今日の試験勉強、どうする?」
という和真くんの言葉が、私の心を大きく揺り動かした。彼が私に問いかけてくれることは、私にとって特別な意味を持つ。和真くんのこの優しさが、私の心に火を灯すのだ。
「はい、和真くん。教え合う時間はすごく大切ですわ」
と、流れるように返す私の声には、少しの緊張が混じっていた。この瞬間、私の胸は高鳴っていた。今日は和真くんと試験勉強を教え合う時間がある。このチャンスを逃すわけにはいかない。彼に、私の気持ちを少しでも伝えられたらいいなと思った。
教室の隅に用意した机には、二人分の参考書が並んでいる。和真くんが隣に座ると、彼の優しい香りが漂ってくる。それはまるで、彼の温かさそのもののようで、私の心を一瞬にして癒してくれた。この瞬間を大切にしたい、彼と一緒に勉強するというこの特別な時間を、心から楽しみたいと思った。
「さて、まずは数学からにしましょうか」
と、私が提案すると、和真くんは素直に頷いてくれた。しかし、いつも通りの彼の反応を見ていると、どうしても
「彼に対して特別な感情を抱いている」
と知ってほしい思いが込み上げる。彼にとって私が友達なのか、または特別な存在なのか、その境界線を越えたい。この勉強タイムは、私のアプローチを試す良い機会だと思った。
「黒川は、数学得意なの?」
と、和真くんが尋ねる。
「ええ、得意ですわ。和真くんに教えることができるのが嬉しいですわ」
と、心の中では、私の気持ちを少しでも彼に伝えたいと焦っていた。お嬢様口調で話すことに少し気恥ずかしさを覚えつつも、それを自分のメソッドにしている私は、意地でもこの状況を楽しもうとしていた。
彼は私の応えを聞いて、嬉しそうに微笑んでくれた。その笑顔が、私の心を一層高鳴らせる。
「じゃあ、教えてもらえると助かるな」
と、彼が続けた。私の心はまるで羽ばたく小鳥のように、嬉しさで満ち溢れた。
私が問題を教え始めると、和真くんはちょっとした困り顔をして、私の言葉に耳を傾けている。その姿は、とてもかわいらしい。さらに、彼に教えながら私も少し緊張し始める。彼に近づくこの時間は、私の大きな宝物のようだと思った。
「和真くんがもっと理解できるように、しっかり教えますわ」
と心に誓う。少しずつ、私の思いが彼に届くように。
しかし、私の心の中では和真くんの視線を感じて冷静さを保とうとするのは非常に難しい。彼の無邪気な笑顔と、そのモジモジした仕草を見ていると、私はどうしてもドキドキしてしまう。
「このまま彼の心に入り込みたい」
と、私の想いはどんどん重くなっていく。
「例えば、この問題なんだけど」
と、私が教えた問題を指差すと、和真くんは頷きながらじっと見つめてくれる。彼の目は私の目を見て、さらにその周囲をじっくりと観察しているかのようだった。もしかして、彼は私の心の中を覗いているのではないかと思った瞬間がある。心の奥底で、彼に対する想いが強くなり、私はこの瞬間を一生の思い出として心に刻みつけることを決めた。
和真くんが私の講義を受けている姿が、何ともいえない愛おしさを生み出している。教えている自分も、彼の反応に夢中になってしまう。彼が
「なるほど、そういうことか」
と頷くたびに、私の心は喜びの波に包まれる。そして、彼に向ける視線を隠しつつも、私の気持ちを叫びたい衝動が押し寄せてくる。無邪気な君に心を奪われているのですわ、といった気持ちが溢れている。
「じゃあ、次はこの問題にチャレンジしようか」
と私は提案したが、心の中では次の言葉への期待と緊張が高まっている。彼が私の言葉にどんな反応を示すのか、一緒に頑張っているこの時間が、私たちの距離を更に縮めるのではないかと思った。
「次は僕がやってみるよ」
と、和真くんがそのまま自分で挑戦することになった。この瞬間に、私の心はドキドキし始める。彼の挑戦をそばで見守りながら、自分の心の中で思いを伝えられるタイミングを探すのが難しくなってくる。
和真くんが問題を解こうと頑張っている姿に、私はつい見入ってしまった。彼の真剣な表情や、時折眉をひそめる仕草がとても愛おしい。彼が問題に詰まるたびに、思わず自分も手を差し伸べたい衝動に駆られるが、その気持ちが通じるのだろうかと不安になる。私の心はもはや抑えようのないものになっていた。
「黒川、これってどういうこと?」
と和真くんが尋ねたとき、私は彼の目を見つめ返す。その瞬間、私の心臓が大きく動いた。しかし、私の思いをそのまま言葉にすることができずに、ちょっとしたため息をつく。
「これは、こういう風に考えると分かると思いますわ」
と、例を挙げながら説明することがやっとだ。
やはり彼は天然なのだろうか、私が彼に向けて講義しているその時も、無邪気に笑って応え返してくれる。彼のリアクションに心が洗われる思いで、私は教えるだけでなく、どれだけ彼への想いを語るかを諦められずにいた。その微笑みに励まされ、私の意志も次第に強まっていく。
「私、和真くんのこと、もっと知りたいですわ」
と、心の奥底で叫びながらも言葉にはできない自分がいる。それでも、私は勉強に色を与えようとする。和真くんが私と一緒にいること自体が、私にとっては特別な時間だとわかっていたから。それ以上の関係になりたいと、どうしても思ってしまう。
教え合いながら、時折目が合う瞬間がある。その瞬間、私の心の内側は小さな爆弾のように破裂する。彼と私の距離が近づき、その心の距離も少しずつ縮まっていく。和真くんがどれだけ私のことを大切に思ってくれているのか、私と一緒にいることで彼が何を思うのか、様々な想いが交錯してしまう。この瞬間を大切にし、私だけの時間として閉じ込めたいと願った。
しかし、まるでその思いとは逆風のように、私の告白は緊張の滞りに阻まれているようだった。
「今日はきっと大切な言葉を言える日にせねば」
と心に誓った。私の気持ちを伝えられなければ、まるで自分の心が抑圧されているかのように感じる。
勉強が終わる頃、私は
「また一緒に勉強しましょう」
と言って、彼に近づく。
「もちろんだよ、黒川」
と笑顔で頷いてくれた瞬間、私の心の中は、彼に少しずつ近づけた気がした。もしかしたら、次の機会には私の想いを伝えられる日がやってくるかもしれない。心が弾む思いと共に、その期待が高まっていた。