第26話 「冬の温室で過ごすひととき」

青志は一日の作業を終えると、ゆったりとした時間を過ごすことにした。温室の中で、植物たちの成長を見守る時間は、彼にとって非常に大切なひとときであった。この冬の厳しさの中で、彼はこの小さな緑の生命たちに自分の心を重ねているようだった。
「彼らも私のように、厳しい環境を生き抜こうとしている」
と思い、自分の生きざまをふと重ね合わせてみる。

青志は布団から引き上げた使い古しのクッションに腰掛け、周囲を眺めた。温室の蒸気が薄らと立ち昇り、心地よい温かさが彼の身体を包む。ただ、その温もりと対照的に外は氷点下の寒さで覆われた世界だ。窓の外には、白い雪が積もり、厳しい寒風が吹きつけている。
「改めて、温室が私の命綱だ」
と思い、ここでの生活の大切さを痛感する。

時間が経つにつれ、静けさの中に青志は再び意識を集めた。
「明日の準備を整えなければ」
と無意識に思った。新しいアイデアが心に浮かぶ。しかし、どれを優先するかが課題となる。彼は自宅の内装を見渡し、何か新たな手を加えることで、より快適な空間を作り上げられるのではないかと考えた。

明日は、温室の保温をさらに強化するために、新しい素材を探しに行くことにした。古い布や段ボール、発泡スチロールを使って断熱材として活用するためだ。いくつかのアイデアが思い浮かぶ中、彼は過去に集めたアイテムが役立つと思った。
「材料さえあれば、どんなものでも作れる」
と、彼は自信に満ちた思いを抱きしめた。

明日も寒さが厳しいであろうことは明白だった。青志は自分に言い聞かせるように、計画を立てた。
「まずは周囲の雪を掻き分けて、必要な道具を探しに行こう」
と心の中で確認する。それからは、無駄のない動きが自分を助けるだろうと、自らを鼓舞した。

冷たい外の空気が彼を待っている。ファーストステップとして、青志は温室を出て、周囲の様子を探ることにした。彼はそのために、厚手のコートと手袋を装着し、外に踏み出した。温室のドアを開くと、刺すような寒さが彼の肌に直撃した。
「この中の温暖さが、本当にありがたい」
と、身にしみて実感する。

外に出ると、青志はまず足元を確かめながら、慎重に雪を踏みしめて進んだ。目指すは、少し離れた場所にある廃材置き場だ。そこには、捨てられたものの中から自分の生活に必要なものが見つかるかもしれない。一度行ったことのあるその場所に向かう途中、様々な事を考えた。

「寒さの中でも、どんな工夫ができるか」
という問いが心の中で渦巻く。
「全く新しいものは買えない。そこで自分の想像力を発揮する必要がある。それこそが、私らしい生き方なのだ」
。青志は独り言のように呟き、自信に満ちた視線を持った。

廃材置き場に到着すると、目の前には様々な道具や素材が散乱していた。雪に埋もれているものも多く、何が使えるのかしっかり確認する必要があった。
「すべてが役立つ可能性を秘めている」
と思い、必要な道具を選ぶべく、彼は作業を始めた。

古い木材、錆びた金属、さらには破れた布まで、彼はその一つ一つを厳選しては選んでいった。
「これは温室の断熱に使えるだろう」
と思うと、どんどん心が躍る。
「少しの選び方次第で、今後の環境が大きく変わる」
と自分を励ましながら、作業を続ける。

しばらく掘り進めると、彼の目に留まったのは、傷んだ段ボールだった。
「これも断熱材として使えそう」
と、すぐに手に取った。周囲の雪に埋もれていたが、意外にもしっかりとした状態で残されていたのだ。段ボールを集めるついでに、古びた毛布も見つけた。
「これは非常にありがたい」
と彼は喜び、しっかりと手を押さえながら収集した。

集めた素材をまとめると、遠くから物音が聞こえてきた。
「誰か近くにいるのだろうか」
と思い、青志は周囲を警戒する。最近は、物を盗む者がいるという噂を耳にしたからだ。それでも、急に警戒心を持つのは稀で、次第に展望が進んでいる気配を感じた。

「何か足りないものはあるだろうか」
と考える青志は、しばらくその場から目を離すことができなかった。
「これは貴重な材料、無駄にしたくないから早く帰るべきだ」
と、判断を下し、彼はぐるりと回りながら帰路に就いた。

集めた材料が、決して贅沢ではないことを理解している青志にとって、それでも十分に働いてほしいと願いながら家に戻る道を進んでいった。足元が雪に埋もれているため、さらに注意しながら動くものの、思っていたよりも順調に進んでいた。急な気温の低下を実感しつつ、早速作業に戻る気持ちでいっぱいになっていた。

やっとのことで温室に戻ると、青志はすぐに温かさが戻る心地を感じた。集めてきた段ボールや毛布は、これから更なる保温に役立ちそうだ。
「少しでも快適に、少しでも温もりを保っていこう」
と心に誓い、そっと材料を置いた。

改めて改装を進める計画を立て始めた彼は、
「この寒さにおいても、自分ができる仕組みを作るのだ」
と決意した。
「どんなに厳しい環境でも、自然の力や手仕事によって、温もりを感じることができる」
こうした思いは、彼の生きる力となっていった。

この日はどんな仕組みを作るか、具体的なイメージを思い描くことに統一した。温室の周辺に貼り付ける段ボールや毛布を上手に活用するには、どんな構造が良いかを考える。中に敷くことで、土が凍結するのも防げるだろう。

その中で、古い段ボールの形を崩さないようにし、温室の外側を覆い隠す形にすると良いと考えた。あたりを見渡しながらそれぞれの素材感を把握し、
「一つ一つを丁寧に整えた方が、明陽山がしっかりと守られる」
と心に描いた。

青志はしばらくして手を動かし始め、段ボールで包む作業に入った。
「手から生まれる暖かさを実感することで、これに命を注ぎ込むのだ」
と感じながら、彼はその手を忙しく動かしていった。丸みを帯びた大きさの段ボールを整え、できる限りの固定をしていく。

全ての作業ができたとき、彼は一息ついた。
「これで少しは保温効果が上がったに違いない」
と胸を張り、温室内の植物たちを見つめる。
「彼らが元気に育つため、この努力が報われたのだ」
と信じていた。

この瞬間、青志の心には安堵感が広がっていった。
「どんな環境でも生き延びられる力は、少しずつ身についてきている」
と実感し、自分に与えられた力に感謝した。夜が訪れ、周囲は静まり返ったが、青志の心の光は消えることはない。

すべての作業を終え、自分の計画を再確認した青志は、明日もまた新たな準備をする意気込みを感じた。
「次の準備は何にしようか」
と心の中で想いを巡らせ、彼は新たな挑戦を待ち望んでいた。自らの道を切り開く力が、心の底から湧き上がるのを感じながら、彼は静かな夜の中で夢を見つめた。