第24話 「サバイバルの決意」

麗司は暗い食堂の中で息を潜めながら、背後に迫るゾンビの声に耳を澄ませた。薄暗い隙間から漏れる微かな光が、荒れ果てたテーブルや椅子に影を落とし、まるで彼自身の逃げ場を隠す場所を探しているような気がした。心拍数が高まり、冷静さを保つのが難しくなっていく。

「冷静になるんだ、麗司」

彼は自分に言い聞かせる。今はただ、この場所で隠れ、次の行動を練る時間だ。冷蔵庫から食材を取り出し、急いでこの部屋に移動して以来、彼は恐怖と緊張に包まれたまま身を潜めていた。しかし、このままでは生き延びられない。得た食材が無駄になるようなことは避けなければならない。

音は遠くに移動していくが、否応なく彼の心の焦燥感を煽っていた。今の静けさは、次の危機が迫っている前触れに過ぎないと、本能的に感じ取っていた。彼は周囲を見渡し、隠れる場所を見つけるべきだと心に決めた。

テーブルの間に身を隠し、ゆっくりと外の音を聞いていると、ふと目に入ったのは、破れたカーテンの隙間から覗く外の光景だった。街は静寂の中で荒廃し、かつての賑わいが嘘のように無残だった。人々がいた風景が何もかも崩れ去り、ゾンビがうろついている。その少し遠くに、彼が見覚えのある商業施設の残骸があった。人間の気配が失せた世界において、思い描いていた平和な日常は、もはや遠い昔の記憶なのだと痛感した。

「このままじゃいけない」

そう考えた麗司は、冷静さを振り絞り周囲の状況を再度確認した。音の方向や、どのようにして逃げ出すかを考えなければならない。食材を確保したことは嬉しいが、これからどう生き延びるかが肝心だ。ここで立ち往生していては、何も意味がない。

彼は深呼吸をして、その思考を整理した。まず、ゾンビの声がどれだけ遠くにあるのかを確認。すると、少なくとも今は安全だと判断できる距離だとわかった。しかし注意を怠ってはいけない。もし彼が足音を立ててしまえば、瞬時にその注意が自分に向けられるのだ。彼は焦りに苛まれながらも、慎重に次の一手を考えなければならなかった。

「先に出口を探して、次は他に物資を確保する」

そう決意した彼は、ゆっくりと身を起こし、隠れる場所から移動し始めた。薄暗い店内の中を音を立てないように気をつけながら、 レストランのレジカウンターやテーブルを越えて、出口を目指す。途中、目に留まったのは、使用された形跡のある調理器具。しかし今はそれを手に入れる余裕はない。麗司は心の中でその器具の存在を記憶に留めておき、次回のサバイバルに活かすことを考えながら素早くその場から離れた。

彼は目の前の廊下を進み、複数のドアの先に出口らしき場所を探し続けた。その中で、少しずつ流れ出る音の波が変化し、背後のゾンビが再度こちらに向かおうとしている感覚を覚えた。麗司は不安に押しつぶされそうになりながらも、必死に冷静さを保とうとした。

「先に進む。隠れる場所を見つけなければ」

彼は自分を鼓舞するかのように、何度も自分の状況を頭に浮かべて確認する。次の行動を冷静に選ばないと、いつかその気持ちが揺れ動き、命取りになりかねない。警戒心を胸に抱きながら、彼は緊張した面持ちで廊下を進んだ。

やがて、彼の目の前に大きなガラスの扉が現れる。その先には外の空気があふれ、人間として当たり前だった生活の匂いが消え去っていた。麗司は少しずつドアを押し開こうとしたが、すぐにその行動がリスクを伴うことに気づく。音を立てぬよう、何とかその扉を開こうとした瞬間、背後からまた不気味な声が迫ってきた。

「まずい」

麗司は思わず足を引っ込め、ドアを閉じる。その瞬間、彼の心臓は再び高鳴り始めた。ゾンビの姿は見えなかったが、気配は明確に近づいてきている。どうにかして隠れ場所を見つけ、しばらく時間を稼がなければならない。すぐ近くのキッチンへの道を選んだ。たとえリスクがあっても、そこで何かしら逃げる手立てを考えなければならない。

隣のキッチンへ滑るように入り、棚の影に身を隠す。息を潜めながら静かに耳を澄ませた。確かな動きが何かに反応し、音が近づいてくる。果たしてあのゾンビは、彼に気付くことはないのか?以前の静寂から一瞬で切り替わり、耳の奥まで響くような呻き声があたりを満たした。

「何とか逃げる道を確保しないと…」

麗司は暗闇の中で少しずつ思考を整理している。その中で、無情にも現実が彼の背中を押していた。どんな状況でも生き抜くためには、必ず脱出を試みなければならない。料理器具や食材を頭に浮かべつつ、彼は再び動けるタイミングを待つことにした。

目の前のガラスのドアからはまだ逃げ道の気配を感じるものの、その近くにいるゾンビの動きが彼の心をザワつかせる。何とかこの場から離れる時期を見計らうが、時間は止まることなく流れている。彼は生き延びるために、さらに戦略を練っていた。

どれだけ待てばいいのか分からないほど心の片隅で惑っていた。運に恵まれた瞬間を祈りながら、外の様子も見ながら不安を抱える日常を想像。他の場所を探して進むのが良いのか、もしいまこの瞬間に動き出してしまったら不安の中に生き延びる選択肢があるのか。そんな思考の迷路に悩み、自分を何とか冷静に保つ必要があった。

彼は力を入れながら、巣に隠れる生き物のように注意深く動く。その様子はまるで静寂の中で息をひそめた不安そのものであり、彼はその瞬間すら利用し生き延びるための努力が必要だと再認識した。今彼がいる場所に何が残っているのか、それをよく見計らう。

隣の部屋の音が再び変化し、ゾンビは特に興味を持たずにその場を通り過ぎていくようだった。そんな生き延びるチャンスを逃さないために、彼は素早く身を起こし、もう一度動き出すことに決める。慎重にガラスの扉に近づいてみる。

「行けるか…?」

彼の心の中で呟きながら、ドアを押し開ける。静かに音を立てずに外に出る。目の前に広がる光景は、彼が先ほど見た荒廃した街と同じような光景だった。静まり返った街は、もはや生きた都市ではなく、ゾンビが徘徊する死の世界だ。ただ静かで無機質な景色の中にポツリと体を持たせた麗司の心には、次の目標を見据えねばならないという意志が強くあった。

目の前の道を確認しながら、彼は生き延びるために必要な選択をしなければならない。それぞれの場所に隠されている食材の存在、目標の拠点、そして次なる行動を模索し続けている。その瞬間、彼は一瞬立ち止まり、冷静さを取り戻す。これからどうするのか、どの方向に進むのか、決断をしなければならない。

「ファミリーレストランを目指す。それが今の目標だ」

冷静に心の中でその考えを告げ、麗司は自らの意志を再確認する。そして、次なる行動を開始した。この異常な世界で、彼は何があっても決して屈しない。その未来を手に入れるために、彼のサバイバルは続く。すべての選択肢が彼の心の中で浮かんでいた。

彼は都市崩壊の静寂の中に立たされたままだった。その壁には絶望感が満ちあふれているが、彼の意志は崩れることなく、正確な生存の道を求め続けている。沙漠の中で命を繋ぐ意志は、果たして生き延びる力を与えるのだろうか。

「続けよう。生き延びるために」

麗司は一歩を踏み出した。前方には希望が残っている。ゾンビたちが彼を待ち構えているかもしれないが、それでも彼は立ち向かう理由を見出している。サバイバルの次なる行動、そして新たな可能性が開けるその時を待ちながら、彼は今、この瞬間に生きていくために動き出すのだった。