第26話 「探偵女子大生の冒険と友情の物語」

久遠乃愛(くおん のあ)は、大学の文学部に通う20歳の女子大生である。彼女の黒髪はロングストレートで、クールな印象を与えるが、内に秘めた茶目っ気も魅力の一部だ。
「~ですわ」
といったお嬢様口調で話す彼女は、周囲から助言を求められることもしばしばあった。それもそのはず、乃愛は幼少期から推理小説に親しみ、趣味で探偵をすることにも熱心だからである。

しかし、彼女には一つの大きな相棒がいる。それが、幼馴染の雪村彩音(ゆきむら あやね)だ。彩音は明るく社交的で、人懐っこい性格をしている。乃愛が冷静に事を進めるのに対し、彩音は行動力と天然な一面で新たな視点をもたらしてくれる。どちらも同じ専門の学生で、互いに支え合いながら生活しているのだ。

ある日の午後、乃愛と彩音は居酒屋の個室で打ち合わせをしていた。心地よい木の香りと、軽やかな音楽が流れる中、彩音が興奮した様子で言った。
「乃愛ちゃん、最近キャンパス内で誰かが不審な行動をしてるらしいの!」

乃愛は冷静に尋ねた。
「それについて詳細を教えていただけます?」

「ええと、友達からの情報だけど、教授たちが会議を開いたりしているとき、必ず一人だけ帰る人がいるの。しかも、いつもイタリアンレストランで誰かと一緒に食事をしているらしいのよ」
と彩音が続ける。

乃愛は少し考え込んだ。
「その情報はなかなか興味深いですわね。これは何か大きな問題が隠れている可能性がありますわ」

間もなくして、二人はその教授の正体を突き止めるために動き出した。午後の光が輝くキャンパスを歩きながら、乃愛は冷静に考える。
「教授が何か隠しているのなら、その動機を探る必要がありますわね」

居酒屋の個室へ向かう道中、彩音の元気な声が響いた。
「乃愛ちゃん、行動力で何とかなるって!私の友達の繋がりを使って、情報を集めるわ!」

乃愛がイメージを描くと、いくつもの手がかりが思い浮かんだ。彼女は一瞬笑みを浮かべながら、
「彩音さんの力を信じますわ」
と口にした。

居酒屋の店内に入ると、静かな雰囲気が包み込む。こんな場所で不審な行動をしている教授が、居酒屋のどこかで待っているのだ。個室に入ると、彩音はすぐに連絡してみることに決めた。
「私の友達、今すぐに調査を始めてくれるって!」

乃愛は彼女の横で座り、心理学の知識を使って観察することにした。彩音は少々焦った様子で
「私は何か見つけてくるね!」
と言い残し、その場を離れた。乃愛は一人でいる間、冷静に周囲の人々を観察した。

予想通り、教授の話題が耳に入ってくる。
「あの教授、最近は不自然な行動が目につく」
と。人々が口にする言葉を一つ一つ拾い集め、思考を巡らせながら、教授の人生に何が起きているのかを掴もうと努めた。

彩音が戻ると、彼女は嬉しそうに報告した。
「乃愛ちゃん、友達の情報によれば、その教授は料理教室に通っているみたいよ。でも、何度も言ってる『料理教室』は実際には存在しないらしい!」

乃愛は驚いた。
「つまり、その行動には隠された動機があるということですわね」

さらに彩音は続ける。
「それだけじゃないの!キャンパス内で彼が週末にいつも見かけられるのも、怪しさを増してる!誰かに会いに行っているのが頻繁に目撃されているみたい!」

この情報に乃愛は興奮を覚えた。
「それなら、次の土曜日、実際にそのキャンパス内を観察しに行きましょう」

そして、時は流れ、約束の日がやってきた。塾講師が人混みに紛れ込むように、乃愛と彩音はキャンパス内を歩き回った。陽射しが照りつけ、学生たちが弾む声を上げながら、活気がある瞬間だった。彼女たちは、教授の動きがどこに向かうのかを見定めるため、忍耐強く待った。

そう、そしてついに教授が現れた。彼は周囲を見渡しながら廊下を進んでいく。乃愛は少し息を呑んだ。
「あの方向は、居酒屋の方ですわ」

二人は静かに後をついて行った。先ほどの教室の方角へと、教授は急いで何かに向かっているようだった。
「何を見つけようとしているのか、気になりませんか?」
と彩音が尋ねた。

乃愛は頷き、
「きっと、何か秘密を持っているに違いありませんわ」

居酒屋に着くと、教授が個室の扉を開けて中に入っていく。乃愛と彩音はそのすぐ隣に座り込むことにし、静かに耳を澄ませた。

暗い個室の中、教授の声が聞こえる。
「事情が変わった。約束は守らなければならないが……」

その言葉にぎょっとした乃愛は、彩音と目を合わせた。何か大きな秘密がここにあるのかもしれない。教授の言葉が続く中で思考を巡らせた。不審な動作、食事の話題、隠された料理教室。そして、不意に教授の声が途切れた。

しばらくして、部屋から出てくる教授。すれ違う瞬間、乃愛は冷静にその視線を交わした。教授の目には動揺があった。そして、何かを抱えていたことを感じ取った乃愛は、
「教室に隠れるのも困難ですわね」
と囁いた。

居酒屋の店員が入ってきて、教授の顔には一層の緊張が走った。乃愛はその様子を観察していると、何かしらのピンと来る気がした。
「もしかして、この冷蔵庫の中に何かを隠しているのでは?」
思わず、そう閃いた。

その瞬間、彩音が目を輝かせた。
「よし、乃愛ちゃん、行動しましょう!」

背後から静かに近づき、冷蔵庫の前に立つと、その扉が開かれた。彼の視線から逃れられないことを知り、乃愛は冷静に中を調べ始めた。すると、キラリと光る何かを見つける。冷蔵庫の奥に隠されていたのは、封印された証拠物件だった。さらに、何かのメモがついている。

乃愛はメモを手に取り、それに目を通した。
「ここには、教授が詐欺を働いていたことが示されたレシピがある」
と言い、彩音に見せた。

菜食主義者の名簿や、レシピの予約の数々。乃愛はすぐに理解した。
「つまり、彼は家庭料理の名講師として虚偽の教室を設けていたということですわ」

彩音も驚き。
「すごい!それが真実だとしたら、彼は教え子を騙していましたよね?」

乃愛は頷き、決定的な状況を築き上げていく。
「これがあれば、教授を追及する材料になりますわ。闇に隠れた真実を明るみに出すことができるかもしれませんわ」

そうして二人は、解決の道を進むことになった。事実に対して行動を起こす勇気を持ちながら、彼女たちは事件を明らかにするための一歩を踏み出した。この瞬間、乃愛の冷静な推理が新たな展開をもたらしたのだ。

そして、個室を出て教授を追い詰めていく。今や事件は解決に向けてのクライマックスを迎えようとしている。ブワァッとした熱い空気の中で、乃愛と彩音は力強く一歩ずつ進んでいった。

最終的に、その事実が世に出ることになれば、彼女たちの友情も試されることになるだろう。その道のりは、決して平坦ではないかもしれないが、しっかりと手を取りながら進んでいく。それこそが、彼女たちが選んだ探偵としての道ではないだろうか。

そして、乃愛は改めて思う。彼女たちの冒険はただの探偵活動ではなく、未来への選択の物語でもあるのだと。