第3話 「学園祭の特別な日と恋心の成長」

黒川梨乃は今日も心がウキウキしている。彼女の心の中には、同じクラスの村上和真への密かな恋心が渦巻いているのだ。まるで、彼のことを思うたびにお花畑が広がるような気持ち。もしかしたら、今日は学園祭もあるし、彼と一緒に過ごせるかもしれないという期待が膨らんでいた。

「今日は特別な日ですわ」

私は一人、鏡の前で自分の髪を整えながら頬を染めた。今日は学校での学園祭。薄い白いブラウスを着て、スカートも少しふんわりさせて、清楚で上品な印象を与えるための服装を選んだ。いつも通りの冷静で優等生の私、でもその奥に隠しているのは和真くんへの情熱。内心ドキドキしながら、今日という日がどうなるのか期待に胸をふくらませていた。

クラスメイトたちが準備を進める中、私は和真くんの姿を探した。彼はのんびりした性格で、困っている人を放っておけないお人好し。彼のそういうところが、私の心をただの恋心を超えた独占欲へと駆り立てるのだ。

「和真くん、どこですの?」

小声で呟く。周りにいる友人たちが私の様子を見咎めて、楽しげに笑う。
「梨乃、また和真くん?」
そんな目を向けられるのが、少し恥ずかしい。けれど、和真くんのことを考えずにはいられないのだから、仕方がない。

学園祭が始まると、校内は一気に賑やかになった。出店の明るい照明が灯り、さまざまな音が響いている。友達と一緒にあちこちと楽しんでいると、その瞬間、ふと子供の泣き声が聞こえた。

「泣いているのは…」

心の中で何かがざわついた。私は顔を向けると、見えたのは迷子になって泣いている小さな女の子。彼女は道に迷ったのか、同じように周りを見渡しながら不安そうな表情をしている。

「可哀そうですわ」

私はその子に駆け寄り、優しく声をかけた。
「大丈夫ですの、ここにいるよ」
と、彼女を抱きしめるように手を差し出した。彼女はちょっと目を大きくして、私の顔を見上げてくる。

「お、親が見当たらないのかしら?私と一緒にお家を見つけましょう」
と、微笑みかける。すると子供はすぐに頷いて、私の手をしっかりと握った。

その間、ふと視線を感じた。振り返ると、和真くんが少し離れたところで、驚いた表情を浮かべながら私たちを見ていた。彼の優しい笑顔が、すごく魅力的で心が踊る。その瞬間、私は和真くんに自分の想いを伝えたくなった。

「和真くん、助けを必要としていますわ!」

私がそう叫ぶと、和真くんは少し戸惑ったように、近づいてきた。彼の姿を見ると、なぜだか心が一瞬高鳴る。きっとこの瞬間に、私たちの運命が交わるのではないかと感じていた。

和真くんもその迷子の女の子に気づき、急いで近づいてきた。
「ちょっと大丈夫かな?」
と、心配そうに抱きかかえるように彼女のために声をかけている。私は、その優しい姿を見てさらに好感を抱いてしまった。

「お家はどこにあるの?お父さんやお母さんはどこにいるのかしら?」

女の子は涙を拭きながら、少し整理した様子で
「お母さんが近くの屋台にいる」
と話した。私たちはその情報をもとに、彼女のお母さんを探し始めた。

和真くんと一緒に歩くと、心が躍る。彼は私に向かって
「黒川、迷子の子が無事にお母さんに会えるといいね」
と言った。まるで私の気持ちを知らないかのように、彼は素直な言葉をかけてくれる。私の心の中にはドキドキとした気持ちが流れていく。

「もちろんですわ。あの子のために、絶対にお母さんを探さないと」
と心の中で思いながら、私は和真くんと手を取り合うように女の子を導いていった。

あちこちの屋台を見ながら、和真くんと一緒に女の子のお母さんを探した。和真くんは人に優しいだけでなく、時折その天然な言動に思わず笑いを誘われてしまう。私の気持ちを知らないまま、和真くんの自然な発言に耳を傾けていると、時々彼が女の子に向かって
「お菓子、好き?」
なんて質問するのが、なんとも微笑ましい。

「まずは、優しく接することがポイントですわ」
と一人心の中で呟く。

私たちが屋台を巡る中で、女の子は自然と笑顔を取り戻していった。それもひとえに和真くんの優しさのおかげだと思う。彼が話しかけるたびに、子どもはほっとした表情を浮かべている。私も和真くんの優しさに胸が高鳴る。

「もしお母さんが見つからなかったら、私たちが一緒に何か食べに行くのもいいかしら」

と、私は口を滑らせた。まるでデートのようだ。普通なら考えすぎだと笑われてしまうかもしれないが、私にとってはこの瞬間が何よりも特別で、心が踊っていた。

「黒川、いいね。それじゃ、美味しいものを紹介してあげようよ」
と和真くんが微笑んだ。彼の無邪気な笑顔を目の前で見ることができるのは、私にとって何よりも嬉しいこと。

やがて、私たちは迷子の女の子のお母さんを見つけた。お母さんは心配そうに私たちを見て、私の手を取る女の子を抱きしめた。
「ありがとう、ありがとうございます!」
と感謝の言葉をこぼす。

「本当に、良かったですわ!」
と私は心から嬉しさを込める。その瞬間、和真くんもどこか照れくさそうに頭をかきながら、
「よかったね、黒川。無事に会えて」
と言った。彼の無邪気な声が私の心に深く響く。

「和真くん、ありがと…」
と、思わず嬉しさをこみ上げる。彼の行動に感謝したい気持ちと、もっと彼といたいという欲望が互いに交差している。

今日の出来事を思い出しながら、彼のことをもっと知りたい、一緒に過ごしたいと思う気持ちが強くなる。だが、和真くんの天然ぶりには、ほんの少しだけ焦りが募る。

「難しいですわ…どうやったら、思いを伝えられるかしら」
と、どうしようもない悩みを抱える。思っているだけでは足りないと感じ、この学園祭の終わりまでに彼に自分の想いを伝えたいと思うようになる。

その後、学園祭の楽しさに誘われるように、友達と一緒にお祭りを楽しみつつも、今日の出来事が心に残る。迷子の女の子や和真くんとの時間が大切な思い出として結びつく。心にじんわりと広がる幸福感と同時に、和真くんへの感情もますます膨れ上がる。

一日の終わりに、ふと和真くんと夕焼け色に染まった空を見ながら、考えた。
「ん?」
と彼が振り返ると、その瞬間、私は彼に向かって思い切って言葉を発した。

「和真くん、今日は本当に楽しかったですわ。ありがとう、また…次も一緒に過ごしてくれます?」

彼の自然な笑顔が私の心を掴む。その笑顔が本当に愛おしい。心臓が鼓動する音が聞こえてくる。その瞬間、私の中で何かが大きく変わりそうな感覚を覚える。

「もちろん、黒川。また一緒に遊ぼう!」
と彼は明るく答えてくれた。その言葉に嬉しさが胸いっぱいに広がる。

「それなら、今度は私の手作りお弁当を…」
と小声で呟く。彼に気づかれたくないが、ドキドキが隠せない。

その日、私の心には恋心と一緒に新たな希望の光が灯った。あの天然な和真くんに、いつか自分の気持ちを伝えたい。そう思うと同時に、心の奥で彼への想いが更に深まったのだった。

今後、どんなエピソードが待っているのだろうか。私と和真くんの知られざる物語が、今日からまた一歩進んで行くのだ。私がどんなに重い愛の始まりでも、彼にはその重さを感じさせないように、心から楽しんでいきたいと思った。