ある晴れた午後、久遠乃愛は大学のキャンパス内の中庭に腰を下ろし、友人とのおしゃべりに花を咲かせていた。彼女の黒髪は陽の光を受けてゆらりと揺れ、彼女の周りにいる人々から注目を浴びている。乃愛は冷静でミステリアスな雰囲気を持ちながらも、どこか茶目っ気があり、学生たちから親しまれていた。
「乃愛ちゃん、また何か事件でもあるの?」
と彼女の幼馴染で相棒の雪村彩音が問いかけた。彩音の茶髪のボブカットが陽の光に照らされ、彼女自身も明るく輝いている。
「そうですわね、少し変な噂を耳にしましたの」
と乃愛はお嬢様口調で答えた。
「最近、インターネット上でなりすまし事件が起きているらしいのですわ。その中で、私たちの大学の名前も出ているそうです」
彩音は目を大きく開け、
「それは大変だ!どんな感じの事件なの?」
と興味津々で聞いた。
「具体的には、誰かが有名人になりすまして、SNSで虚偽の情報を発信しているのです。そしてその被害者たちが、私たちの大学の中庭で暴力沙汰に巻き込まれているというのですわ」
「えっ、それって本当に危険だよ!すぐに調査しよう!」
と彩音は立ち上がった。彼女の行動力は乃愛の冷静さとよく合い、二人は最高のコンビとなっていた。
「まずは、手がかりを探しましょう。この場所で何が起きているのか、観察してみますわ」
と乃愛が続けた。彼女はその場の雰囲気を敏感に感じ取り、周囲をよく観察し始めた。
彩音は近くの休憩スペースを突き止め、人々への聞き取り調査を開始した。
「最近、変わった人を見かけた?」
と尋ねる様子は、明るい笑顔を絶やさない。不安や恐れを感じさせない彼女の表情が、人々の心を開かせるのだ。
数時間が経過し、乃愛は注意深く花瓶の配置が不自然なことに気づいた。中庭にはいくつかの花が活けられているが、特に中央に置かれた一つの花瓶が周囲と異なる印象を与えていた。
「彩音さん、こちらに来てください」
と乃愛が声をかけた。
「この花瓶、なんだか妙ですわ」
彩音は花瓶のところに駆け寄り、
「どうして?ただの花瓶じゃない?」
と問いかけた。
「そうですが、この花瓶だけが妙に汚れているように見えるのですわ。それに、周囲の花よりも大きい」
と乃愛はじっと見つめながら説明した。
「なるほど、本当だ!気づかなかった!」
と彩音は感心し、
「どうする?触ってみてもいいかな?」
と心配そうに尋ねた。
「触るのは危険かもしれませんわ。それに、ただの花瓶ではないかもしれません。まずは周りを確認してみましょう」
と乃愛は警戒を怠らなかった。そして、彼女たちは周辺を調査しながら、気になる人物を探し始めた。
すると、乃愛の目に、ある店主が飛び込んできた。彼は地元商店街の店主で、
「不景気の影響で店を閉めざるを得ないかもしれない」
と愚痴っていた。どうやら彼もこの事件に関わっている可能性があると乃愛は考えた。
「彩音さん、あの店主、気になりますわね。声を掛けて、一緒に話を聞いてみませんか?」
乃愛は一歩前に進み、彩音と共にその店主に近づいた。
「こんにちは、こちらの花瓶について何か知っていることがあるかしら?」
と乃愛が尋ねる。
店主は驚いた表情を浮かべて、
「私には関係ないが…あれはただの花瓶だよ。特に何もない」
と言い訳をするように答えた。
彩音は彼の言葉に敏感になり、
「それにしても、最近誰かがあなたのお店の話をしていた気がします。なりすまし事件のことです」
と続けた。
店主は少し顔色を変え、
「そうかもしれない。だが、私には関係ないだろう」
と言い捨てた。
「どうしてそこで嘘をつくのかしら。あなたには商売を続けてほしいと思っているけれど、それを隠そうとしているのは狼狽しか見えませんわ」
と乃愛は冷静に指摘した。
店主は若干青ざめ、言葉を失った表情を見せた。
「確かに最近、私も目立ちたくて宣伝を考えていたんだ。だが、そんな大それたことをするつもりはなかった。偶然、いくつかのイベントに参加しただけだ…」
「つい、好奇心でひどいことをしてしまったのですか?」
彩音が静かに尋ねた。
店主は俯きながら
「皆に注目されたいという思いが強くなって、気づいた時には遅かった」
と告白する。
「やっぱり、そうだったのですね。私たちも今回の事件を解決できるかもしれません」
と乃愛は微笑んだ。
皆の注目を集めたかったという彼の動機と、なりすましの背後にいる黒幕がついに明らかになった時、彩音はいつもの明るい笑顔を浮かべた。
「乃愛ちゃん、私たちはこの事件を解決しよう!全ての真実を暴きたい!」
思っても見なかった方向からこの事件は迫ってきた。純粋な人間心理から生まれた犯行は、商店街の店主の影に隠されていた。でも、そのすべてが彼女たちには見える。このなりすまし事件を解決するために、乃愛の直感と彩音の行動力が必要な瞬間が来たのだ。
数時間後、彼女たちの努力によって、事件の真相が暴かれた。店主は自身の思惑を超えて、他の人々を巻き込み、さらに悪化させてしまったことを悔いていた。
警察に連絡し、商店街の名を汚した犯人を捕まえたことに安堵しながら、彼女たちはお互いを見つめた。
「私たちの協力で、また一つの事件が解決できましたわ。この調子で、もっと多くの事件を解決したいですわね」
と乃愛が言った。
彩音は嬉しそうに笑った。
「そうだね、乃愛ちゃん。たくさんの事件を解決して、私たちの名を広めよう!」
二人の冒険心はそれからも続き、新たな事件に巻き込まれることは確実だった。しかし、一緒にいればどんな困難も乗り越えられると信じ、彼女たちは次なる舞台へと進んでいくのだった。様々な出来事が彼女たちを待っている。今日の事件はその序章に過ぎなかったのだから。