麗司は深く息を吸い込み、準備に取りかかることに決めた。彼の計画を実現するためには、必要な物を手に入れるだけでなく、その過程で遭遇するかもしれない危険を回避しなければならない。それは、現実の痛々しい状況を思い知らせるものだった。彼は心の中で、次にするべき行動を一つ一つしっかりと確認した。
まず、彼は備品の確認を行った。自宅の中にある物を無駄にしないよう注意しながら、彼の持っているナイフを丁寧に拭き上げる。手にした瞬間、彼の中で生き残るための力を確信させるものとなった。しかし、それだけでは不十分であった。彼は日用品、保存水、食糧、そしてあるとすれば、武器に使えそうなものを探す必要がある。
せめて、少しでも安全を確保するために彼は周りを視認することにした。マンションの窓から見える外の世界は、まだ自分にとっては恐怖で満ちていた。住宅街が静まり返り、自らの存在が目立ってしまうことを避ける必要があった。無用な音を立てることでゾンビの注意を引くことは避けなければならない。これから決行するサバイバルの根幹は、それにかかっている。
窓から外を覗いていると、麗司の目にうつったのはいつもの風景とは異なる光景だった。彼の目に映る街は、昔の面影を残しながらも、今とは全く違うものとなっていた。無数のゾンビが通りをゆっくりと徘徊し、時折互いにうめき声を上げていた。その姿はまるで異世界にいるような錯覚を引き起こし、麗司にとって心底恐ろしいものだった。
彼は一方で、ゾンビたちの動きに注目していた。音に反応するとはいえ、人の姿にとても敏感であることが見て取れる。静かに藪の中を隠れるように進むか、存在を潜めて場所を移動することで、今は生存の可能性を高めるためのチャンスを待てると麗司は思った。そのためには、今までの冷静さに加えて観察力も必要だった。
次に、麗司は自分の持ち物を整理し始める。まず目に付いたのは駄菓子の食料品たちだった。ひとまず集めておくことにしたが、日持ちする食品が必要だ。そして、彼は近所のスーパーで見かけた缶詰料理や、非常食が彼にとっての重要なアイテムとなると心に決めていた。数日分の食料を確保したい彼にとって、その選択は避けられない義務だった。
少しずつ持ち物をまとめ、彼は計画の進行を着実に進めていく。自ら考えた逃げ道や、避けるべき場所もリストを書き出すことにした。確実に生き残るためには、考えるだけではなく行動に移さなければならない。この理想が持つ現実的な側面を考慮し、現実的なアプローチに重点を置いた。
自宅にある本も手に取り、手元に役立つ情報を集めることにした。過去の趣味だったサバイバル生活術やサバイバル小説に関連する書籍を揃え、必要なページをいくつか選びながらその知識を思い出す。知識は役立つものであり、自ら戦って生き残る準備に繋がることを彼は認識した。
昼間の明るさが何よりも助けとなった。彼は部屋を暗くする必要はなく、音も立てずに情報を得ることができる。いつでも考えられる選択肢を持ちながら、不安を抱えたままで計画を練っていくことは、彼にとって非常に重い作業だった。
極力移動する際の音を出さないように、手袋をつけ、慎重に動くことを心がける。彼は音を最小限に抑え、周辺を無駄に刺激しないよう細心の注意を払った。深呼吸して落ち着き、もう一度窓から外を見るが、やはりゾンビたちは変わらぬ無関心さで徘徊していた。麗司は、自らの準備の重要性を再確認する。
確保するものについてさらに考え続けた。これから出るのは日常の買い物と酷似したものではない。目の前には命がけのサバイバルが待ち構えているのだ。越えなければならない障壁は多いが、彼には耐える手段がある。それは無私の戦いであり、冷静であることが生き残るための秘訣となるだろう。
彼はすでに目を付けているスーパーのリストを見返し、安全マップを作成することにした。物資がどこにあるか、その整頓された情報の上に確固たる戦略を設けていく。その時、素敵なアイデアも浮かんできた。それは、近所に住む子供がもらっていた古いアナログラジオを使用するということだった。音を遠くまで飛ばし、ゾンビたちを更に引きつけるかもしれなかった。彼は帰ってきたときに見ている風景の中にそのものを探し出し、決行の準備に組み込むことを心に決めた。
数時間の間、彼はこの戦略を考えながら必要物資の設計図をつくることに専念した。音響を外に飛ばすことで、間違った方向へ集中させ、逃げる時間を得ることができる可能性について考える。そして今、自らの装備が整い始めるのを感じた。自分自身で得た情報を最大限に活用することで、その成果を彼は期待していた。
積んだ労力を感じつつ、麗司はふと手元のノートを見直す。そこには無数に書き込まれたメモが彼を見つめ返していた。今の彼にはこの計画がどれだけの意味を持つのか、数回見直すことで自然にイメージが確認されるようになっていた。自らの気持ちと純粋な直感的な思考が結びついて感じられる。しかし、そこで終わりではなかった。もっと効率的に行動するための道を模索し続けるべきだった。
麗司は部屋の光源を消し、周囲を注意深く観察し、外に出る準備を整えた。冷たい空気が肌を這い回り、彼の心に警戒心を呼び起こす。何かの拍子に運命を変えるクライマックスが待ち構えているのではないか。その思考の中で、彼は清冽な意思を持って外に飛び出す。
やがて、彼はすべての確認と準備を終え、外へ踏み出した。僅かな時間でもゾンビの注意をあえる隙を狙いつつ、やはり特定の行動規範を守りながら進む。ニヒリスティックな世界の中で、麗司は希望の光を見出す。生き延びるための第一歩は、彼の行動そのものにかかっていることを深く自覚していた。
外の闇に足を踏み入れた瞬間、彼は不安と期待を胸いっぱいにしながら、次なる物資獲得のための冒険の扉をこじ開けた。どのように逃げるか、どう戦うか、それは彼が活きるための選択が迫られる時までの段階だった。次の瞬間、彼の目の前には広がる無限の可能性が待っている。彼の運命は、今始まる。