第14話 「温室での植物育成への挑戦」

青志は温室を完成させた後、その中で育てるための植物の選定に取りかかることにした。メモ帳には、すでに大根やリンゴ、柑橘類、そして冬に強い野菜や果物のリストがあった。彼は今、どの植物が最も育てやすく、また自分の食卓に生彩を添えてくれるかを考え始めた。

「まずは、どうしても必要な食材を選ぼう」
と青志は自分に言い聞かせた。特に、これからの過酷な冬を生き抜くために、エネルギー源が確保できる根菜類は重要だと思った。そして、彼の頭に浮かんだのはジャガイモだった。
「これなら成長が早く、暖かい環境を作れば、まずは収穫が期待できるかもしれない」
と、彼はメモに
「ジャガイモ」
と書き込んだ。

次に、青志は温室の条件を整えるための準備を進めることにした。温室内の温度や湿度を自分で調整できれば、植物がより元気に育つと思った。彼はDIYでヒーターを作ることを決意した。昔ながらのストーブを利用するとともに、家庭にあまった材料を活用する方向で考える。

古くなったアルミ缶や空き瓶を集め、温室のどこに設置しようか頭を悩ませていた。その時、青志の頭にふと思いついたのは
「光の反射」
だった。温室内の複数の面を反射材で覆うことで、効率的に温めることができるかもしれないと考えたからだ。彼は日々の生活で得た経験をフル活用し、作業を進める覚悟を決める。

青志は早速、アルミ缶を手に取り、周囲に散らばっていた古いボードを使って、反射板を作ることにした。まずは缶を叩き潰し、平面にする。そしてそれを古い板があった位置に合わせて、切り出していく。寒さに震えながらも、手は動き続けた。缶を使った反射版が完成し、青志はそれを適切に設置するために試行錯誤を重ねた。

数時間後、頭を悩ませた甲斐もあり、温室が少しずつ形になり始めた。青志はそのプロセスの中で、少しの温かさを得るためにどれだけのエネルギーをかける必要があるか、心の中で計算した。
「この季節に暖を取り続けることは簡単ではないが、挑戦する価値はある」
と彼の意志は揺るがなかった。

その晩、青志は冷たい美味しいスープを作り、心地よい疲れを感じながら食事を取り終えた。彼は食事を済ませると、再び温室に目を向けた。夜の冷気が迫る中、彼はそのツルツルした表面が、真っ白な雪の中に浮かぶ姿を想像した。彼の中で、温室は小さな希望の灯火のように輝いていた。

「明日の朝には、もう少し進められる」
青志はそう呟き、自分を寝かしつける。彼の心は明日の展望で満たされ、生成される命へのあこがれが膨らんでいた。次の日、彼はまだ明るくない空の下で目を覚ました。外からは、風の音と、雪がさらさらと地面に降りつづく不穏な音が聞こえてくる。

「どれくらいの積雪なのだろうか」
彼は窓の外を確認する。すぐに分かるほど、外の風景は雪一面に覆われたが、しっかりとした安心感が青志の中に広がった。彼は食材を育てるための温室や、自分の手で新たに何かを生み出そうとする意志が強くなっていた。

彼は朝食を済ませると、早速温室に向かった。玄関のドアを開けると、冷たい風が彼を迎えた。
「なんとかここから脱出しないと」
と胸に誓わせる。青志は温室のドアを開け、その中に足を踏み入れる。前日に整えた備品たちが、まだ真新しい顔でそこにあった。

青志はさっそく温室の温度を計測し、外の厳しい寒さの影響を最小限に食い止める努力を開始した。彼は古いペットボトルを集め、中に水を入れ、太陽の光を集められる位置に並べ始めた。日中の光をバッテリーにして、時間をかけて暖房効果を得るためのDIYな手段だ。

「これが役に立てば、毎晩凍える思いをしなくて済むだろう」
と、一つ一つ水を入れたペットボトルを見てにやりと微笑む。彼の心には、今後の成長が期待される生命の芽生えが見えていた。自分の手で作り上げた空間が、自らを守ることができると実感する喜びは、他の何にも代えがたいものだ。

続いて、もう一度ジャガイモを植える準備を進めることにした。まず確保したほうれん草の種を持ち歩き、土に混ぜ込む。その土を温室内に持ち込み、あらかじめ整備したプランターに混入する。彼は、どれだけ木やペットボトルが必要なバランスの中で、ジャガイモを掘り出すか想像した。

「この作業がどれほど現実的か、最初に試さなければ」
と彼は自分に言い聞かせる。ちゃんとした土を混ぜ込む努力を続けるうち、ふと彼は、力を入れてどれほどの量を作り出せるかを考えさせられた。これがこの厳しい冬をどう生き抜くかを左右する大切なポイントに思えたからだ。

青志はすぐさま集中して作業にとりかかり、次第に自分の目指す理想の形を明瞭に描き出す。ジャガイモとほうれん草、そしてかつての大根たちがどう共存できるかを思考しながら、彼は一歩一歩、確実に土を掘っていく。

彼の手が冷たくなり、指先が痛むが、その感覚も彼にやる気を与える。自分が成し遂げていくことによる動機がある限り、気持ちが薄れることはなかった。植物を育て、収穫することを通じて、自分だけのリズムで進んでいける幸せを感じていたからだ。

やがて、予定していた時間の少し前に、ジャガイモを植え終わることができた。彼の心の中には、思った以上の達成感があり、自らの努力が実を結ぶ可能性を十分に感じられた。
「これで少しだけ明るい未来へ近づいた」
と、安堵感を感じる。青志はしっかりと手を震わせながら、次なる作業へと心を向けた。

その後、自宅の倉庫へ向かった青志は、さらに冬を乗り越えるための材料探しに精を出した。雪に埋もれた場所から、古い毛布や衣類を引っ張り出した。これらを利用して、希望の灯火になる追加の温室作りを目指す。当面の保温対策を実施するため、材料を重ねて囲い込み、暖かい環境を保つための壁面を整理していく。

「しかし、干し草も必要だな」
と青志は慎重に思考を巡らせる。できる限り、無駄な行動を取らずに自分の必要な物を集めたいと考えていた。彼はそのために更に調査を進めていくことになった。草が今後の発酵のエネルギーとなり、温暖化の役を果たす可能性があるのだ。

青志は徐々に喉が渇き、冷気に晒される時間が増えて来たことに気付いたが、そのことからも、何かを生み出す喜びの部分が上回っていた。彼は手間を惜しまず、次の段階へ進む活力を得ていた。自分の手で物を作り上げるという経験が、まさに彼の日々の彩を加えていたからだ。

温室の備品が整う中、ジャガイモを植えたことによって、いつか訪れる収穫の時が待たれてならない。やがて、彼はガレージに保管している道具や資材をさらに調整し、次なる挑戦に備えた。思うに、どんな極寒の冬でも彼には温かい未来が待ち受けていると確信し、新たな計画を立てるのだった。どれほどの厳しさが待ち受けていても、彼は決して挑戦の手を緩めるつもりはなかった。自らの手で、新たな未来を創り出すという意志が彼の心の深堀に刻まれていたのだ。

彼の努力が手にできる実をつけたその瞬間が待っていることに、青志は小さな喜びを感じていた。そして、得られる成果こそが、どれほどの孤独をも超える力になると確信していたのである。