第13話 「生き延びるための戦略」

麗司は自宅に逃げ戻った。精一杯のスピードで走り、何とかマンションのドアを閉めた瞬間、背後でゾンビたちがうめき声を上げる音が聞こえた。彼の心臓はうなりを上げ、耳鳴りが頭をかすめた。何とか逃げ切れたと思った瞬間、彼は自分の行動のリスクの重さに気づく。あのスーパーで物資を確保するという目的は果たせなかったが、彼は未だ彼の命をつなぎとめるための新たな決意を胸に抱えている。

マンションの扉をしっかりとロックし、そのまま壁にもたれかかる。息を整える時間すら惜しむように、彼は苦い苦笑を浮かべた。“何をやっているんだ、俺は”と心の中で呟く。その思考は、虚無感に包まれた。外の世界は、すでに彼の想像を遥かに超える恐怖が広がっている。

麗司は一度深呼吸をし、気持ちを落ち着けようとしたが、体の震えは収まらない。安全だと思っていた空間すら、不安の影が忍び寄っている。この状況を打破するには、新たな戦略を立てる必要があると彼は瞬時に理解した。

彼はまず、スーパーでの失敗を反省した。確保できなかった物資のリストを頭の中で点検する。食料、水、薬、燃料、それに自衛手段など、どれも彼には必要不可欠だった。しかし、やみくもに室外に出て行くのは危険だ。今後の行動を練るために、彼は頭を使うことに決めた。

また、彼に必要なのは冷静さだ。だからこそ、この危険に挑む際はしっかりと計画を立てようとする。机に向かい、手元のノートを引き寄せると、思いつく限りの必要な物資をリストアップした。

水が最優先だ。彼は以前、隣のマンションの住人が備蓄していた水のペットボトルを思い出す。それがまだ残っているかもしれない。また、缶詰やインスタント食品も多くは嗜好品だが、手に入る限りは確保したい。保存しておけるすべての食材は、命を繋ぐ重要な要素となる。さらに、薬品、特に消毒液などの衛生面の維持にも気を配る必要がある。

考えをまとめるうちに、彼は一つのアイデアを思いついた。もし外出する際の安全策を講じれば、少しでも生存の可能性を高めることができるだろう。手近にあるアイテムを活用し、何らかのエスケープルートをモデルを描くべきだと決心した。

彼は生活空間の電気を使わず窓から外を観察し、周囲の状況を把握することにした。屋外の様子を見極めることが肝心だ。音には充分に気をつけながら、景色を眺める。荒廃した町並みに、無数のゾンビの姿がちらほらとうごめいている。動きのあるものには警戒しなければならないと感じ、彼はスリリングな感覚を覚えた。

昼の外の光が、彼の日常とは完全に異なる非日常的なものに感じられた。かつて彼が歩いていた道が、今や恐怖に満ちた世界であることを思い知らされた。彼は腕を組み、何かいいアイデアが湧いてこむのを待っていた。自分が普段感じる熱を冷たく変え、思考に力を与えようとしている。

麗司はこの状況を打破するため手持ちの武器を改めて見定めた。小さなナイフしか持っていないが、自ら作ったものだ。そう、手作りの武器は彼の中で大きな存在になっていた。どのように使用するか、戦うことにどれほどのリスクを伴うかを思考するのは非常に重い作業だが、逃げることができるかどうかも重要なのだ。

とりあえず、彼にはナイフしかないが、それを使って自らの安全を守ることを考慮する。襲われた際に立ち回ることも考えたが、耐えて逃れるのが最良だと判断した。
「これは極限の状況で、カッとなって刺したらどうなる?」
そんな不安をよぎらせつつ、彼は手を入念に磨く。武器の準備が整った後、再びスーパーへ行くための具体的な計画を立てていく。

彼は行動する際のルールを設けることが大切だと考えた。まず、状況の見極めだ。自分以外にどれだけの生存者やゾンビがいるか、敵の反応に常に目を光らせる。次に逃げ道を確保しておくことも重要だ。入った道とは異なる道から出入りすることを想定し、あらかじめ逃げ道を準備しておくことで気分も少し楽になる。

これから何を取ってくるかを考えながら、しばらくじっとしているのも空しく、麗司は自身の行動を振り返った。もう一度致命的な失敗を繰り返すことはできないのだ。彼は思った。
「どうせ死ぬなら、最良の選択を取るしかない」
と自分を奮い立たせた。彼はその言葉を心の底で掘り起こし、立ち上がった。

彼は部屋の中にあった,過去の自分の趣味を打ち込んだ古い本を持ち出し、彼の計画の一環として、参考になる情報を抜き出すことを試みた。へたに動くよりも、事前に計画を立てた方が生き延びるポテンシャルが高まることを自覚しているからだ。
「こんな状況下で何が役に立つのか」
と考えるにつれ、心が彩られた。

本をめくりながら、彼は生存術やセルフディフェンスのテクニックを思い出す。特に生存術に関しては、いくつかのメモを手に取って直感的に取り組むことができた。重要なポイントやポイントを付箋にメモし、リストとしてまとめ上げる。スリリングで満足感を感じる作業だった。

次に工夫を凝らしてみることにした。外にいるゾンビたちを引き離すためのトリックを思いつく。彼は、音を出したり、視覚のないことを利用して遠くから引き寄せるためのアイデアを頭に描く。具体的には、どこかで出た音に添って自分が動くこと。

思いつくものは全て試そうと考え、彼は近所で未使用のアナログラジオを思い出す。あれがあれば、音を遠くまで流せる。周囲の人々が生き延びるために使うこともできるだろうと考えた。この計画が成功する可能性はあるかもしれなかった。

いくつかの計画を立てつつ、麗司は最後に自分が一番確保したいものに目を向けた。それも食料だ。持ち帰りの際に、可能な限り多くの食料をカゴに奪い取らせ、その数を倍にしたいのだ。彼の拠点に近いスーパーのリストを見ながら、彼は決意を新たにする。

「理想的な目的だけではなく、現実的な計画を立てるためのふさわしい準備をしよう。もし空かもしれない未来に備えるなら、強く生きるための道を手にすることになっている」
彼はそう思い、深く息を吸った。

彼の周囲の空気が再び冷たくなる中、彼は自分の考えを深めた。次の行動は準備だけでなく、過去の自分を背負い込む形で生き残るためだ。頑張って戦うのではなく、どうにかして道を作るための
「生き延びる能力」
を目指すための準備を心に誓った。

そのためにはまず、外に出ることだ。確実に計画を立て、用意を整え、準備を始める。彼は明確に目指す方向を定め、運命を変えるために動き始める。出発の瞬間が迫っていた。彼は重苦しい現実を受け入れながらも、希望の光を目指して冷静に行動を起こそうと誓った。