第13話 「冬の寒さを乗り越えるDIY温室の創造」

青志は、温かいスープを口に運び、その豊かな風味を楽しむうちに、心の奥底に安堵感が広がっていくのを感じた。食事を終え、彼はゆっくりとテーブルに置かれた鍋を見つめながら、今後の準備に取りかかる時間だと感じ始めていた。この極寒の環境で生き残るためには、ただ適応するだけではなく、積極的に次のステップを考えなければならなかった。

まず彼が考えたのは、今後の食材をどう効率良く確保するかということだ。食材を収穫することで確かな結果が得られたが、やはり冷たく厳しいこの冬の中で、常に新しい資源を探し出す努力が必要だった。青志はメモ帳を取り出し、食材のリストを作成し始めた。そこには、大根、リンゴ、柑橘類の他に、冬に強い野菜や果物、さらには肉類が含まれている。

「次は何を育てようか」

青志はそう考えながら、自宅の裏庭を見つめた。かつては美しい庭であった場所も今は雪に覆われ、引き締まった冷気が漂っている。彼の中のDIY心が騒ぎ、少しでも効率的に植物を育てるための工夫が求められた。なるべく早く温まるような小さな温室を作ることができれば、冬季でも野菜を育てる可能性が広がるだろう。

そんな思いで、青志は庭に散らばる材料を集めることにした。古い木材や金属のスクラップ、プラスチックのバケツなど、彼にとって必要な資源は身近にあった。寒さが身を締め付ける中で、彼は手袋をしっかりとはめて作業を始めた。作業用の手袋の中は冷たく、冬の厳しさを感じさせたが、それを乗り越えるための第一歩だった。

焦ることなく、ゆっくりと木材を整理しながら、青志は自宅の裏庭のスペースをイメージする。まずは地面を掘り、必要な寸法を測る。その作業は単調であるが、徐々に形を整えていくにつれ、胸が高鳴るのを感じた。
「ここにパレットで組み立てたフレームが出来れば、きっと良い感じになるだろう」
と、青志は希望を持っている。

古いパレットを見つけた青志は、それを使おうと決めた。木製のパレットを組み立てるのは簡単ではないが、手元にある工具を駆使して、少しずつフレームを作り上げていく。ドライバーやのこぎりを手に取り、パレットを切り分け、必要な部分を固定した。冬の冷気が彼の頬をなでるが、その刺激が逆に彼の体を引き締め、作業を進める活力となる。

「不安の種はやっぱり、発酵だ」

ふと青志は、過去に見たドキュメンタリーを思い出す。農業の専門家が寒冷地でも野菜を育てる工夫を紹介していたことがあり、その時に強く印象に残った
「発酵の力」
だった。彼の中にある運営の知識を組み合わせることで、冷たい環境でも少し意外性のある食材を確保できる可能性を広げることができるだろう。

青志は、パレットの組み立てが進む中で少しづつ心が充実を増していくのを感じた。何か創り上げることこそが、生きる力の原動力であるとしっかり理解できたからである。彼は特にDIYすることに喜びを見いだしていたが、物作りを通じて物と心の充実感を届けることが、孤独な冬を乗り越えるためには欠かせなかった。青志自身の力で、必要なものを作り出せると実感することで、彼の自信は高まっていた。

風がさっと背中を吹き抜け、それが呼びかけだったかのように青志は気を引き締めた。作業用手袋を深くはめ、それからクツを履きかえて屋外に出る。体を動かして体温が上がってくれば、少し寒さも和らぐ。

次に彼は、組み立てたパレットを支えるための土台を作る必要があった。たとえ冬の冷気がどれほど厳しくても、彼には自分が借りている家のために努力をする責任があった。適切な土台をしっかりと組むことで、今後の温室や育成する野菜たちの命を支える役割を果たすのだから。

青志は、少し離れた場所に保管してあったレンガを集め始めた。雪に覆われた下には、彼が何度も使った道具や材料が眠っていた。身体が重く感じるが、彼はその一歩を踏み出し、レンガを一区画ずつ運ぶ。手の先がかじかむが、その努力が自分を成長させると信じているため、冷たさにも耐えることが出来た。

レンガを置き終え、その後にパレットのフレームを乗せる。青志はその安定感を確認し、何度も確認することで満足感を得た。次に彼の手にしたのは、透明なビニールシートだった。これを温室に張ることでまずは保温効果を得られるだろう。
「このビニールシートさえあれば、少しでも温かな環境を提供できるはず」
と、青志は期待を寄せた。

しかし、ビニールシートを取り扱うためには、隅をしっかり固定しなければならない。そのための器具がないかと周囲を見渡すと、目の前にあった金属のスクラップで作業を進めようと考えた。これを使えば、強度を保ちながらビニールシートを固定し、冷気をシャットアウトすることができるだろう。

青志はスクラップを手に取り、その金属をドライバーでフレームに固定していく。動作は単調だが、手元の作業に集中することで、日常の喧騒を忘れ、世界が広がっていく感覚が彼を包んだ。色々な物音が響くが、今はただ目の前の作業に取り組むことが最も大切であった。

次々にビニールシートをフレームに掛け、彼は特に冷たい外気と温室の温かさの境界を意識した。その瞬間、ビニールの独特の透明感が彼に新しい喜びをもたらす。自分の頑張りが目に見える形で確かな形となり、少しずつ果実を実らせていくことが出来る未来が広がっているように思えたからだ。

あまりにも寒い風が彼に当たる中でも、心の中には小さな光が灯っていた。それは、自分の努力が形を持ち、成長していくことの確信であった。これまでの孤独であった生活の中で、青志はその明かりを胸に抱きながら温かい未来へと進む決意を新たにした。

「ここから食べ物が育つのか」

温室の中に広がる空間に身を置くと、彼の目はさまざまな夢で満たされていく。自分が育てた食材や果物、日々の生活の一部として不可欠な存在となることへの喜びを感じる。それは、小さな命が宿る瞬間でもあった。

青志は一瞬目を閉じ、温室で育てることができるかもしれない未来の自分を思い描く。生き生きと育った野菜たちが、緑の葉を茂らせ、その色合いが彼の日々を彩ることへの期待が、心の中で膨らんでいくを感じた。そのことは、これまでの孤独を超えて、明日へと彼を進ませる力を与えていた。

彼はその温室を見つめながら、今までの生活とこれからの未来を結びつける架け橋となるような瞬間を感じずにはいられなかった。寒さに立ち向かいながらも、自身で創り出した空間は希望の象徴だった。この厳しい冬の中で、独りであっても生きる力を切り開いていく自信が、彼を強くさせていた。

青志はその場で深呼吸をし、内に満ちた喜びを噛みしめた。彼はここから、どんな植物が育っていくのか、どんな材料を活かすことができるのかを自ら考え、無限の創造性を発揮していくストーリーが待っていることを予感したのである。