第8話 「サバイバルの中での決意と葛藤」

麗司は、少しの安堵を感じながらも、すぐに状況を整理し直す必要があった。彼の手にはハサミと鋸のような工具が握られている。ホームセンターでの生存の危機を感じての行動は、彼の心に新たな決意をもたらしたが、依然としてここから脱出する必要があった。

周囲を見渡しながら、麗司はできるだけ静かに次の行動を考える。彼が求める物資は、自身の生命を延命させるための必需品だ。ハサミは小型で持ち運びやすく、突発的な攻撃をする際には役立つが、その使い方には慎重さが求められる。彼はすぐにでも物資を集めて、マグネットを使って簡易な防御策を作りたいと考えた。

「段階的に進めていこう」
と心の中で自分に言い聞かせる。囚われの環境では、冷静な判断が生き残りにつながる。これまでの体験から、彼はその意義を強く認識していた。まず、何が必要かを考えるために、ホームセンターの中を慎重に歩くことにした。

彼は薄暗い中、商品棚の間を行き来しながら、目に入るものを片っ端からチェックした。目の前にあるのは、日用品から工具まで、様々なアイテムである。彼の頭の中には、日常的な生活の名残があるが、今はその日常が崩れ去ってしまったことを痛感する。何気ない日々の中で、彼は知らず知らずのうちに持っていた便利さを危機的状況の中で思い知らされていた。

ある売り場の裏に回ると、彼はおむつや衛生用品のコーナーを見つけた。
「これもあったら便利だ」
と思い、入手することにした。彼は袋を手に取り、無造作にその中に詰め込んでいく。しかし、その最中に後ろから耳にした不意の音で体が硬直する。音の源に背を向けて隠れていたが、そのゾンビの気配は鮮烈で彼の心を震わせる。

麗司は、慌てず冷静に動く。その場を離れられなければならない。音の近づく気配は確実に迫っているが、彼には選択肢があった。何とか影に隠れつつ、おむつを積んだ袋を持って、他の通路に逃げ込む。逃げた先では周囲の物音を警戒しつつ、さらなるアイテムを掴むための行動を急ぐことにした。

この廃墟のようなホームセンターでは、ひっそりとした静けさの中に非日常が潜む。八方ふさがりの状況では、彼の思考は絞られていく。『生きるためには何を手に入れなければいけないか』と内心で問う。彼はこの機会を逃さないために、自らの生存ルートを考える必要があった。

通路を進んでいると、麗司は洗剤のコーナーを発見する。衛生意識を高め、今後も生き延びる中で衛生的な生活を送るためにも、洗剤は重要なアイテムだ。
「これも持っていこう」
と考え、適当に洗濯用の洗剤と筆洗用の少量を詰め込む。これまで意識しなかった本能的な欲求が湧き上がる。

彼は再度生存本能を取り戻しつつ、店内の片隅にあった雑巾も手に入れる。
「今の状況で何が必要なのか、もう一度考え直して、万全を期そう」
と自らを奮い立たせながら、物資を集めていった。空になったリュックが充実していく感覚の中にも、どこか虚無感が漂っていた。彼はかつての自分を思い出し、再び生まれ変わったかのような気持ちになるが、それでも彼の心には孤独が影を落とす。

しばらくの間、物資を集めた後、彼は休憩を取るために奥まった通路に身を潜める。通路の奥で少しの時間を確保し、目を閉じる。
「どうにか安全な場所で身を休めたい」
と考えるが、その中で不意の音が聞こえるのが怖い。他の生存者に出会えることを祈りながらも、この状況では困難な道を進むことに他ならなかった。

厳しい状況下、ひとしきり集めた物資を整理する時間を確保し、自らのリュックを再機能させる。優先順位を定めることで、彼はさらに効果的なサバイバルを実現しようと考えながら進めていた。そのパズルめいた計画を脳内で描きながら、
「今こそ自分の強さを信じるべきだ」
と思う。

移動中、耳を澄ませば、近くでゾンビの唸り声が聞こえてくる。麗司は心臓が高鳴った。生き延びるためには何としてでもこの場を去る必要がある。恐怖を抱えていては無意味だ。
「知識と冷静さ。それが唯一の道具だ」
と自分に言い聞かせ、思考を次へ進めていく。

どうにか棚を越え、隠れた物品の中から活用できる道具を見つけることができた。中にあったアイテムをひとつずつ見ていくと、見覚えのあるものもあった。
「これがあれば、さらに工夫ができる」
と手に取る。必要なものを徹底的に洗い出し、その中でどのアイテムが最も利用価値が高いかを見抜くこと。豊富な資源の中で選りすぐることが生存に繋がる。

「まだ取りこぼしている物資があるはずだ」
と心の中で葛藤しつつ、彼は次なる場所に向かって動き出す。彼が集めた全てのアイテムが彼を守るための道具であり、これからの生活の糧となる。運が良ければ次の移動で他の生存者とも出会えるかもしれないが、あくまでもこの状況下では慎重な行動が求められる。

彼は新たな目的地を目指し、冷静に続行する。先日までの生活では考えられなかったサバイバル環境の破片の中を漂うように進むその姿は、ある種の孤独感を伴いつつも、強さを秘めていた。それは、彼自身を取り戻すために戦い続ける姿でもあった。

やがて、隣接するエリアに達すると、さらに様々な物資が映る。ここでは食品類が豊富に残っている。麗司は動揺しながらも、
「これで今後の日々を持ちこたえられるかもしれない」
と考え、長い時間をかけて選び抜くことにする。材料一つ一つに意味を持たせるように、彼はそこから必要な物資を選んでいく。

一つの缶詰に目をとめ、そこに手を伸ばす。『お米』『パスタ』と書かれたラベルが彼の目に飛び込んでくる。それらは彼の今後の日常食に必要な物資だ。彼は次第に蓄積されていく缶詰や袋詰めの食品類をリュックに詰め込んでいく。小さな品々であっても、彼の生存に寄与するアイテムであることを忘れない。

その瞬間、脳裏に過去の記憶がよみがえり、彼の心に温かみを残す。
「これで帰ったら、家でゆっくり食材を味わえる日がくるだろうか」
。彼は少年時代に家族とともに食べた食事のことを思い浮かべていた。しかし、現実に戻ると、その思い出が薄れていくことを痛感する。そして、ふたたび現実に直面する。彼にとっての
「帰る場所」
は今や遥か彼方にある。

心の中でその葛藤を抱えつつ、麗司は
「これが生きるために必要な道具」
と自らを鼓舞し続けた。そして思う。どんな困難な状況でも生き残る必要があり、そのためには柔軟な思考が欠かせないのだと。

物資を集めながら時間は過ぎていく。しかし、その緊張感に慣れ始めた彼の心の中にも、少しずつ余裕が生まれていた。目的の物資を見つけ出すために、行動に而志し続けることこそが彼に与えられた生存のチャンスであり、それに立ち向かう意志を持っていることを実感した。

この孤独なサバイバル生活が、彼自身の人格や意志を形成し続けていることを実感しながら、新たな物資を手に入れていく。表面的には不適切な状況にもかかわらず、彼の内なる思考は生きる力に転じつつあった。この日々がどれだけ長く続くかわからないが、彼はその瞬間を大切にし、未来に目を向けることができていた。

さらに進み、周囲を観察していると、突然の音が響く。そして、次つぎと現れるゾンビの気配に、彼はレバーを引く。最悪の状況となる前に、無駄のない行動を心掛ける。”冷静に冷静に”と、無意識のうちに念じながら日々を生き延びる。その中で新たな発見を望んで生きていく決意を胸に、彼は次なる動きに一歩踏み出すのだった。