久遠乃愛（くおん のあ）は、20歳の女子大生で、文学を専攻していた。彼女は冷静沈着な性格ながら、探偵としての活動に情熱を注いでいた。推理小説が大好きで、幼少期から家族に影響を受けて育った影響もあり、探偵として活動することに特別な魅力を感じていた。
その日、乃愛は大学の図書館で本を読んでいると、幼馴染の雪村彩音が彼女のもとに駆け寄ってきた。彩音は明るく、人懐っこい性格で、乃愛の冷静さと対照的な存在だった。彼女はいつも乃愛にさまざまな事件を持ち込んでくれる頼りになる相棒だった。
「乃愛ちゃん！大変だよ！」
彩音が息を切らしながら言った。
「どうしたのですわ、彩音さん？」
乃愛はその様子を見て、心に不安がよぎった。彩音は続けた。
「公園のカフェでバッグが盗まれたんだって！お客さんが、隣の席に置いてたバッグがなくなったんだよ！」
乃愛はすぐに興味を引かれた。さっそく事件現場を調査することにした。
「行きましょう、彩音さん。公園のカフェに向かうですわ」
乃愛はそう言うと、彩音と共にカフェへと向かった。公園の中にあるカフェは、休日には多くの人々が集まる人気のスポットである。現場に着くと、店内は騒然としていた。お客たちがざわめき合い、店員も慌ただしく動いていた。
乃愛はまず、お客さんの話を聞くことにした。彼女はカフェの奥に座っていた女性の向かいに座り、静かに声をかけた。
「お話を聞かせていただけますでしょうか？」
女性は驚いたような表情を浮かべたが、やがて頷きながら話し始めた。
「私は友人と一緒にここでお茶をしていたのですが、隣の席に置いてたバッグがいつの間にか消えていたんです。本当にびっくりしました」
女性は涙ぐみながら続けた。
「中には私のノートパソコンや貴重品も入っていたんです。本当にどうしよう、警察にも連絡したけど、あんなのって、信じられませんよね」
乃愛はその様子を観察しながら、女性の話の中に何か手がかりが隠されているのではないかと感じた。
「バックは他にどのような特徴がありましたか？」
「黒のレザー製で、金色の飾りがついています。私が使っているのは特別なモデルなので、ここで見かけたらすぐに分かると思います」
ノートパソコンのアクセスログが重要な手がかりになるかもしれないと考えつつ、乃愛はその女性の証言をメモに取った。
「それでは、私たちがこの件を調査しますわ。その間、何か追加の情報があれば教えてください」
女性は感謝の意を示し、乃愛は彩音と共にカフェを出ることにした。
「どうする、乃愛ちゃん？次は何をするの？」
彩音が尋ねてきた。
「まずは、カフェの周りを調査しますわ。その後、盗まれたバッグがどこに行ったのかを探るために手がかりを集める必要があります」
乃愛は思案しながら歩き出した。周囲を見渡すと、公園で遊んでいる子供たちやカフェの外で待っているカップルが目に入った。その中に、何か異様な雰囲気を醸し出している人影があった。
「彩音さん、見て。あの清掃員の人、気になりませんか？」
乃愛の視線の先には、黒い作業服を着た清掃員の男性がいた。彼はカフェの外に立ち、無表情で周囲を見渡していた。乃愛は何か直感的に彼に引かれるものを感じた。
「彼に話を聞いてみましょうか」
乃愛がそう言うと、彩音は少し不安そうにうなずいた。
「でも、彼が犯人かもしれないなんて分からないよね……」
「そうですわ。しかし、彼を避ける理由もそれほどないと思います」
乃愛は清掃員の元へと歩み寄った。彼の姿勢はまるで何もかもを受け入れるかのよう、あるいはそれとは正反対のように見えた。
「すみません、少しお話をよろしいでしょうか？」
清掃員は驚いた様子でこちらを見たが、すぐに表情を戻し続けた。
「何か問題でもありますか？」
「今日は隣の席に隠していたバッグが盗まれたと聞きました。周囲で何か気になることはありませんでしたか？」
清掃員は考え込んだ後、若干の挙動不審を見せながら答えた。
「それは…特に何も。でも、カフェの裏にいる変な人を見かけて、ちょっと怖かったんです」
「変な人？」
「ええ。白い服を着た男性で、ずっとカフェの方を見ていました。その後、すぐにどこかに消えました」
乃愛はさらに聞き続けた。
「何か特徴などは覚えていますか？」
「覚えてます。長い髪を束ねていて、ちょっと不気味でした。それに、バックが隣にある席を指さしていました。何か計画的なことをしているのかと……」
乃愛はこの清掃員の証言に興味を持ち、その日記を取り出してメモをした。
「分かりました。ありがとうございます」
清掃員は少し安堵した顔をしたが、乃愛の視線はその表情には留まらなかった。彼が何かを隠しているように感じられたからだ。
「彩音さん、この清掃員の言葉、何か引っかかりますか？」
「うーん、やっぱり不自然なところがあるよね。バッグを見ているなんて、何かしらの理由があるかも」
「確かに、普段は客のバッグを見ていても、そこまで注意深く観察しない気がしますわね。しかし、もう少し調査が必要です。裏を探りましょう」
その後、乃愛と彩音はカフェの裏へと向かった。清掃員が指さしていた場所は、カフェの裏手にある小道だった。そこにはお手入れされていない花壇があり、少しばかり雑草が伸びている。
「この辺りには何か落ちていないかしら？」
乃愛は地面を注意深く観察していた。すると、何か光るものが目に入った。
「彩音さん、あれを見てください」
彼女はその場所に近づくと、地面に落ちていたのは小さなUSBメモリだった。乃愛はそれを拾い上げ、彩音に見せた。
「これは……何かの手がかりかも」
「ねえ、乃愛ちゃん。中を見てみようよ」
「もちろんですわ。どこかでパソコンを借りられないかしら？」
公園内には、カフェの他にも数軒の店舗があった。乃愛と彩音は急いで近くの喫茶店に向かい、スタッフに頼んでパソコンを貸してもらうことにした。
「さて、早速このUSBメモリを接続してみますわ」
乃愛は鼻プロに立つと、USBメモリをパソコンに挿入した。ファイルが開くと、いくつかのフォルダが並んでいた。その中には
「カフェデータ」
と題されたフォルダがあり、乃愛はそれをクリックした。
驚くことに、そこにはカフェの顧客情報とともに、アクセスログが記録されていた。特に、先週の金曜日に公開されたパスワード付きのデータを暗号化したファイルがいくつか見受けられた。
「彩音さん、これを見てください。先週の金曜日、何か特別なことがあったようですわ」
「何か、どこかで使われていたのかな？」
乃愛はさらにログを確認していると、
「盗んだバッグにアクセスログが残っている」
旨が記されていることに気づいた。もしや、盗まれたバッグにはこのアクセスログと関係があるのではないか？
「このデータを元に、調査してみましょう」
乃愛はノートにメモをしながら、不思議な思考を巡らせた。その瞬間、彩音が彼女の肩を叩いた。
「ねえ、あの清掃員の人、今どうしているんだろう？」
乃愛はそのことを考え始めた。清掃員がここにいるものの、何か隠していることに気づいていたのかもしれない。彼女は急いでカフェの元へ戻った。
しかし、カフェに戻ると、驚くべき光景が広がっていた。清掃員が姿を消しており、同時に警察の車両が一緒に駆けつけているのを見た。
「警察が来てしまった！何かあったのですか？」
乃愛は警官に近づき、事情を尋ねた。
「隣のカフェで、何かおかしなことが起こったようです。状況を確認するために来ました」
警官の言葉に、乃愛は焦りを感じた。彼女は急いで彩音に命じた。
「彩音さん、私たちも手伝いましょう。カフェの情報を集めていますから」
警官たちに状況を説明するつもりで、乃愛はカフェの奥の清掃員の記録を確認しなければならなかった。果たして、何が待っているのかを見届けるべく、彼女は店内に向かった。
不安と期待が交錯する中、乃愛は清掃員の書類に目を通し始めた。そこには、彼の過去の仕事や、カフェに関連する過去のトラブルが記載されていた。
「見てください、彩音さん。過去に問題を起こした記録があるわ」
彩音と共にその詳細を確認し始めると、何かが明らかになってきた。清掃員には同僚とのトラブルや、過去の失業歴があったようで、彼は他の職場での失敗が影響していた。
「彼の背後には、競争相手か何かが潜んでいるかもしれませんわ…」
その瞬間、乃愛はその清掃員が盗んだバッグの中に何を隠しているのかを考えざるを得なかった。その背後には、恐らく競争関係の何かが隠れていた。彼は仕事を失いたくなかったのかもしれない。
「乃愛ちゃん、もう警察が来ているし、これを次に持って行かないと！」
彩音の声が、乃愛を現実に引き戻した。その時、カフェの入り口に清掃員を見つけることはできなかったが、すでに彼はどこかに逃げてしまったのかもしれなかった。
「私たちもすぐにどこかで清掃員を追わないと。彼が犯人である可能性が非常に高いですわ」
乃愛は彩音と共にカフェを後にし、清掃員の居場所を探すことにした。彼の行動で、不穏な風を感じていた。
公園内を彷徨い歩いているうちに、乃愛は心が強くなった。彼女は気を引き締め、事件解決への決意を固めた。同時に、彼女自身の推理も進展する中で、彩音との連携が重要な意味を持つことを理解していた。
「すぐにでも追い詰めましょう！」
「はい！私たちにできることは全部やるよ！」
乃愛と彩音は、事件に対処するために行動を開始した。それがどのような結末を迎えるか、その先にどんな真実が待っているのか、彼女たちは一歩ずつ進んでいった。彼女たちの探偵活動は続き、事件の真相に迫っていく。
