第4話 「サバイバルの意志」

麗司は慎重に周囲を見渡し、心の中で緊張の糸を保ち続けていた。彼の視線は、目の前の生存者が取り扱う物資に吸い寄せられていく。サバイバルのためには、自分の持っているもの以上に多くの物資が必要だった。彼女がどれほどの物資を持っているのか、また、彼女がどれほどの危険を抱えているのか、麗司は未知であった。この不安が、彼の心を何度も締め付けていた。

一つの大きな決断を下すとするならば、物資の確保が最優先である。この静けさの中で彼が何を考えていようとも、恐れずに行動することが肝要だった。麗司の内心でつぶやく声は、ただ生き延びるための意志を振り絞る心情そのものであった。それに続き、物資の選択もまた、彼にとって考えなければならない重要な要素である。

「まずは、キャンプ用コンロをリュックに詰め込もう」

麗司はその決意を固めると、コンロを持ち上げ、ゆっくりとリュックの隙間にしまい込んだ。これまでの知識を駆使し、必要なアイテムを選別することが彼の任務だった。この頼りない状況で彼が生き延びるための武器を一つでも増やすことが、命を繋ぐことにつながるのだ。

次に目に映ったのは缶詰の棚だった。色とりどりの缶が並べられ、その中には様々な種類の食材が詰まっているようだ。麗司は軽やかに近づき、最も多くのエネルギー源となる食品を探し始めた。ここでの選択肢は重要だ。彼の現在の体力を考え、長期間保存できるものが求められる。それには、カレーやスープのような調理が不要な缶詰が最適だった。

彼は慎重に缶のラベルを確かめ、特にカロリーが高いものを優先して手に取っていく。その瞬間、物影がちらっと動いた。思わず身体が硬直し、持っていた缶を床に落としてしまう。音が響いた。麗司は反射的に身をかがめ、心臓が激しく鼓動するのを感じた。

「な、何かが来る」

彼の唇が微かに動く。音の源を確かめようと、緊張感を持って周囲を見渡したが、不安を讓ることはできなかった。この瞬間が彼の運命を左右する恐れもある。いまできることは、大きな音を立てないこと。彼はすぐにしゃがみ込み、物音の発生源を見つけようとした。

静かな通路に、足音がほとんど聴こえなくなる。音の先に何かが迫っているのだ。それがゾンビならば逃げる道を考えなければならないし、生存者ならば、その対話の必要性を感じる。しかし、麗司の頭の中で計算が崩れそうになる、この瞬間に取るべき行動が目の前に迫ることを思い知らされる。

しばらく時間が経過した後に、一瞬の静寂が戻ってきた。心の中の恐怖を無に化して、麗司は再び物資の収集を続けた。彼は持ち上げていた缶詰を手に取り、他のものと同様に慎重に選別を心掛けながら続けた。

さらに、乾燥食品も探し始める。サバイバルにおいて、長持ちするものが多くを占めるため、スープの素や米、パスタなどは非常に重要な食材だった。麗司は手を延ばし、目の前の棚からそれらを選んでいく彼の手は次第に重荷になり、リュックの中に入れ込まれていった。

食料を手に入れたとき、彼は再び周囲に耳を澄ませた。それでもやっぱり物音が全く気配を消している日は不気味さを際立たせた。生存のための物資を確保しているのに、その静けさの向こうには何が待ち受けているのか分からない。麗司はその不安から逃れる方法を見つける必要があった。

しかし、心の中にはまだ希望の光が射していた。日が暮れるまでに十分な物資を持って帰ることさえできれば、明日の計画を立て直すことができる。今の彼には、物品を集めることと、次の一手を考え続けることが肝要である。

次に目に留まったのは、ひとつのバックパックだった。麗司は手に取って調べてみると、内部にはなんと食材の一部がすでに入っていた。古いと思われる物が幾つか存在していたが、他の食材とコンディションを確認する限り、まだ使用可能なものも見られた。

「これは、運が良いのかもしれない」

彼はすぐさまそのバックパックをリュックの中に加え、さらなる探索を続けた。人間の目は敏感であり、少しの変化に対して気がつくことができる。小さな気配の変化、風の揺れ、物からの音。すべて警戒を高めるためのままでもあった。

周囲の空気が不穏に流れ、得体の知れない恐怖感に包まれる中、彼はさらに恐れているようだ。しかし彼の持つ知識と直感が、彼を生き延びさせるカギでもある。少なくとも、目の前の生存者に背を向けない限り、麗司は彼女との接触を避けることで安定を保つ。

その時、またもや何かが動いた音がした。麗司は心臓が高鳴り、身を引き締めた。次に何かが彼を襲うのだとしても、動く前に意識を集中させて行動しなければならない。何も躊躇する理由はない、ここで自分が生き残るためには奉仕する必要があるのだ。何かをしなければならない。

音の源に気付きながら急いで動き始めた彼は、物資を探る手を動かし始めた。サバイバルに耐えられる余裕が生まれていた。それを体現するかのように、彼の頭の中には持てもぎとることが必要なバランスの感覚が生まれていた。

恐怖とサバイバルが混在するこの終末的な状況の中では、生存が最優先である。そのためには、自分の持つ知識を最大限活かしていかなければならない。目の前の暗闇に目を凝らしながら、麗司は再び背後から小さな音を聞いて息を殺した。

少しでもその唯一の騒音に注意を引くことは、想像以上のリスクをもたらすことになる。心拍数が急上昇し、全身が緊張で固まる。やがて、声を光変えた麗司は、彼女が見えないように身体を隠し、かすかに耳を傾けた。

再び音自体が高まりつつある。やがて隣の通路で金属のような音が耳に入った。それは一瞬の静けさを引き裂くような音であった。麗司はいよいよ心がざわついていたが、気配が全く感じられない。彼は強く心を持ち直し、サバイバルの本能が次に取るべき行動を語りかける。

「生き延びるためだ、何があっても」

彼は自分を励ますようにつぶやきつつ、もう一度物資の収集に集中する。そして、麗司は決してその恐怖から逃げることはせず、自らの運命を切り開こうとする意思を強く抱きつづけた。どこかで冷静さを保ちながら、自分の持つ全ての知識と力量を駆使することで、次の行動を決定する準備が進んでいた。

これまでの小さな努力が、分厚い壁の扉を押し開く力を持つことを信じて、麗司はさらなる物資の収集を続ける。そして、周囲の空気を注意深く感じながら、彼は生存のための新たな一歩を踏み出す準備を整えた。彼の運命は、このサバイバルによる試練の中にある。

間もなく、麗司は周りの物資を根気強さをもって掘り起こす中で、今求めている生活を少しでも持続できる力を見出した。地道な努力の先に未来を感じることができれば、彼は再びあの意図なき孤独の世界から一歩を踏み出せるかもしれない。

彼が抱え込みながら思う、今日のこの瞬間も、この終末の世界に生き残る闘いの一環なのだと。少しずつ確保した物資は、やがて彼を生かす燃料となるだろう。そのひとつひとつに意味があることを信じて、彼は冷静を保ちながら、さらなる収集に挑む準備を行った。生存は、彼の手の中にあるのだ。

現実には、まだ多くの困難が待ち受ける道。その不安の中でも、麗司は一歩一歩その道を進んでいく覚悟を決め、サバイバルの意志を強化させていった。物資を集め、未来へ向かう足取りを確かなものとするために。