第4話 「料理を通して生き延びる青志の物語」

青志は鍋の中でポテトが湯気を立てる様子を見つめながら、次の準備を進めるために考えを巡らせた。冷たい空気が肌を刺す中、彼は熱が蓄えられたポテトを一粒一粒、ゆっくりと取り出す。この工程一つ一つが、彼の日々の生活を支え、また、彼がこれから直面する困難な状況に立ち向かうエネルギーになるのだと実感していた。

まず最初に、ポテトを冷やす前にそれを切り分け、肉じゃがやシチュー、またはポテトグラタンに変わる可能性を秘めた材料として丁寧に調理していく。青志は、ポテトの皮を剥いた状態のものを見つめ、
「こいつは冷凍保存できるな」
と心の中でつぶやいた。ポテトを水分を含んだまま放置すると、凍ることで食感が悪くなってしまうため、しっかりと水分を取った後に一口サイズにカットしなければならない。

外は強風が吹き荒れ、時折、氷の塊が屋根を叩く音が響く。その音がまた、青志の心に不安を与える。こうした自然の猛威が、彼の心を深く冷やすのだ。しかし、彼はその不安を料理で忘れようと努めた。彼が作るものには、ただの食材以上の意味がある。サバイバルという観点から見れば、栄養が豊富で、長期間持ちこたえられる食事が必要だ。

「まずはキャベツだ」

青志は、すでに用意した塩漬けのキャベツに目を向けた。キャベツの香りが漂い、冷蔵庫から取り出した際のシャキッとした手触りが彼の心を少し和らげてくれる。塩漬けにしておくことで、長期保存が可能になり、必要なときに必要なだけ取り出せる利点がある。彼はキャベツをボウルから慎重に取り出し、適当な大きさに切り分けて、再び保存することにした。

「塩が効いている良い味になるだろう」

そう念じながら、青志は切ったキャベツを別の保存容器に移し替える。彼の手際は徐々に良くなり、効率が上がっていた。安定した作業のリズムが心地よく、作業を進めるにつれて心が温かくなってくる。どんなに冷たい環境にあっても、彼は自分の手で生き延びるための道を見つけているという自信を持ち始めていた。

次に目を向けたのは、冷蔵庫の中で残された数本のニンジンだった。青志はそれを手に取り、皮をむいてカットすることにした。ニンジンはポテトやキャベツと違い、少しの間常温でも保存可能だったが、冷蔵庫の限られたスペース内で新鮮なまま活用するために早めに使いたかった。

「これもスープに入れられるな」

そう考えながら、ニンジンを乱切りにしていく。彼は目の前にあるニンジンの色鮮やかさを楽しみつつ、その栄養が彼の力になってくれることを願った。サバイバルでは、栄養価の高いものを意識して取り入れることが重要だ。青志は過去に学んだスキルをフルに活かし、野菜たちの特性をどのように生かしていくかを考え続ける。

手間をかけて調理をすることで、食材が冷たくて味気ないだけのものではなく、彼の心に欠かせない温かさになっていく。青志にとって、料理は単なる栄養摂取の手段ではなく、自分の生活を支える大事なアートでもあった。

冷蔵庫の隅には玉ねぎも残っていた。彼はそれを取り出し、皮をむいてスライスする。この玉ねぎもポテトやキャベツとの相性が良く、入れることで味が深まることが期待できた。時には涙がこぼれそうになるが、青志は笑顔すら浮かべながら、一定のリズムで作業を進める。何かを作り出すこの瞬間、彼は孤独を少しでも忘れられるからだ。

こうして彼の作業は次から次へと続いていく。料理を通して、彼は自分自身を見つめ直し、日々の生活の意義を考えることができる。時間を忘れるほど没頭することが、逆に孤独を埋めることにつながっていた。青志は様々な食材を配置し、どのようにしてそれらを組み合わせ、次の食事を作るかを忘れないように心に留めた。

最後の工程として、彼は箱から取ってきた米を洗うことに決めた。今の彼には、炊きたての炭水化物が必要だ。冷たい世界の中で、あたたかい食事を囲むことがどれだけの幸せをもたらすか、彼はそれを強く知っていた。

米を研ぐ手元に目を落としながら、
「今夜は肉じゃがでも作ってみようか」
と考えた。心の奥で何かワクワクする気持ちが広がってくる。料理をすることはただの生存手段ではなく、一歩一歩日々の喜びを感じる方法でもあった。

「こうやって、一つずつ手をかけて生き延びていくんだな」

青志は心の中でそう呟き、さらなる意思をもって作業を進めた。どんなに難しい状況でも、自らの手で未来を創り出し、希望を持って生きることができる。彼は料理を通じて、極寒の世界でも温もりを与えてくれる人生の一環を見つけていた。

次第に、彼の周囲には完成した料理の香りが広がっていく。彼の心の中の孤独は、彼が生み出した熱気に包まれていった。料理が進むにつれて、彼は自分の状況が少しでも良くなることを信じ、未来への希望を持って次の手を考えていく。

こうした長い時間をかけた作業は、彼にただの食事以上の意味を持たせていた。青志は心地よい疲労感を感じながらも、目の前に広がる食材の数々が彼に新たなチャレンジを与えてくれているように思え、ニンジン、玉ねぎ、キャベツやポテトを用いて、次々と料理を進めていくことが彼の生への意志であり、『極寒の世界』での彼の生活の象徴でもあった。

外からの冷たい風の音が聞こえるたびに、彼はその音と向き合いながらも、いかに自分をしっかりと持ち続けるかに意識を向けていた。無限の選択肢の中で何かを選ぶこと。それは、彼の未来に向かうための一歩であり、また生きるための道でもあった。