麗司は、日の出とともに目を覚まし、窓から差し込むやわらかな光を感じた。この光景が以前の生活と同じだと思うと、まるで夢の中にいるような気持ちになった。しかし、すぐに周囲の現実を思い出し、心に重苦しいものがのしかかってきた。彼が生き延びるためには、今日の準備をしっかりと整える必要があった。
冷蔵庫を開け、残りの食材を確認する。肉類は今晩にでも使い切る必要があり、乳製品は早めに処理をと考え、夕飯に焦点をあてた。彼は一晩寝かせた肉をとり、焼いて食べることに決めた。
「炭火焼にでもできれば、より長持ちするだろう」
と思い、厨房に向かった。
わずかな食材の中から、彼は冷蔵庫の隅にあった鶏もも肉を取り出す。脂身が少しついていたため、焼き手間はかかったが、彼はその旨みのある香りが堪らなく好きだった。火を通すことで、食材の安全性も高まる。だが、まさにこの
「焼く」
という行為が、今の生活においてほんの少しだけでもマイナスの音を立てることを意味するのだ。
「音を立てないように」
と自分に言い聞かせ、彼は一枚ずつゆっくりと食材を焼き始めた。焦らず、じっくりと肉を温める。外の静けさを耳にしながら、危険を回避することがこの日の最優先事項である。焼きあがる匂いは思わず彼の喉を刺激し、彼は肉を皿に置くと、心のどこかで満足感を得た。
「少なくとも今日は生き延びた」
。
食事を終えた彼は、次の重要な作業に取り掛かった。それは、スーパーへの出発準備だ。必要な物資を整えるため、彼の頭の中ではリストが形成されていた。炭水化物、調理に必要な調味料、果物や水、そして新たな食材を加えることで、今後の栄養供給を確保したかった。どのくらいの種類や量が必要か、彼の頭の中には様々なアイデアが渦巻いていた。
彼は再びメモ用紙を手に取り、どんな物が必要なのか筆を走らせた。米、パスタ、缶詰、これらの基本的な食材は絶対に忘れてはいけない。さらに、非常用として持つための水が必須だった。物資の種類を確認しながら、彼はそれに加えたいくつかの材料を思いついた。
「乾燥豆類、調味料…そうだ、昨日の肉の残りを使うために、スパイスを足したい」
自分の計画をより具体化していく。
「今の換気状態では、次回の食事も継続して安全にするには、こういった調味料が絶対に必要だ」
と、彼は自らのサバイバル知識をもとに着実にリストに項目を追加していく。普段から自炊を楽しんでいた彼は、こういった状況でも敵として抵抗できる力を持つことが大事と思っていた。自分の大好きな食べ物が少しでも手に入る毎日を意識しながら、丁寧にリストを作った。
次に彼は持ち物の選定に入った。リュックサックの軽量化が求められる。彼は必要最小限の道具を選び、出発時の体力消耗を意識した。
「簡素化することがポイントか」
と、瞬時にじっくり考える。懐中電灯や水分補給用のボトル、ポケットナイフは優先すべきだが、さらにその中から不要なアイテムを削ぎ落とすべきだと感じた。
数分の間、彼は道具を見直しながら、最小限で要所を抑えた状態をイメージし、次第に手際も良くなっていく。最終的には、軽い空気の中に最愛のアイテムを詰め込み、リュックサックを持つことにした。
「よし、これで行こう」
と彼は満足そうに頷く。
準備を整えた後、彼は再び外の状況を確認した。空気は冷たいにもかかわらず、街は依然として静まり返る中で薄暗く、常に危険を孕む。外の気配に気を配る麗司は、心から安心できる瞬間を見つけることが難しい。周囲に警戒心を抱きつつ、彼は自らに言い聞かせ、静かな口調で
「今日は成功させるんだ」
と自分を鼓舞した。
すると、ふとした瞬間、彼は廊下で何かが動く音を聞いた。自らの直感が、これまでの静かな生活が一変する前触れのように思わせた。彼は動きが何のものなのか確認するため、静かにドアを開けて外を覗き込んだ。外は静かだったが、少しの間音の正体を掴もうとした。
その時、遠くでかすかな音が耳につく。
「もしかすると、動物かもしれない。これは近づいて何をするべきかの分岐点だ」
と麗司は考えた。彼は動く影に慎重に目を凝らし、
「あれがゾンビでなければいいが」
と心配しつつ、引きこもりの生活の中でのちょっとした刺激が新鮮だった。
その動きは徐々に大きくなり、少しずつ近づいてくる。思わず息を呑む彼の鼓動が早くなる。彼は意を決して、その音の出所を追いかけることにした。
「可能性を追求することは、サバイバルにおいて大事だ」
と計画を続ける。
同時に、麗司は物音を立てないように注意し、静かに部屋にいる間に起きたことがどう影響するかを考えた。彼が外に出て見るべきか、他に何か別の行動を取るべきか悩んだ。その選択は感情の揺れが少なかれ生まれるものである。
無理にでも見てしまうことで、他に自分がどのように行動するべきか考えさせられる。
「継続して動き、目的を果たすのが今の自分の責務だ」
と自分を戒める。
「よし、出よう」
と彼は自分に言い聞かせ、リュックの中身を確認した。全てが整っているか、随時逐次確認することは義務でもあった。再び音が現れることを予想しつつ、彼は窓を閉め、その先の旅へ踏み出す準備を整えていた。
周囲を確認して外に出る時、その場の静けさは彼の神経を研ぎ澄まし、足元の一歩が意識される。すべての行動が危険を伴い、周りの微細な音に対する警戒心の強さが彼の生活ゆえなのだと感じられる。
ついに彼は外に出た。心の中に大きな決意を抱き、何もかもついて行く準備を整えていた。次の瞬間、かすかに周囲の空気が変わり、その気配を背に受けながら、彼の体は再び前を向く。
「目的地へ向かって、全力で行こう」
と自らに言い聞かせ、静かに足音を立てる。
スーパーへの道をひたすら進む麗司は、今まで感じたことのないような緊張感が背中を押し、まるで何かに追われているような感覚を覚えた。それでも、次の行動が明日の自分を支える道だ。
「止まることなく、前進し続ける」
彼は固く自分の信念を貫き通し、終末の世界を生き抜くために歩み続けた。
街はひどく荒れ果てていたが、麗司はそれでも前を向き続ける。音を立てないように気を使い、心のどこかで生存にかけた思いを原動力にして、彼はさらに進んでいった。
「これが、終末世界での私の運命なんだ」
と再び心に刻むことを忘れない。
次の瞬間、彼がしウエアに到着することには、どんな試練が待ち受けているのか、その心の内にはもう何も恐れはなかった。生き延びるため、これまでの孤独な戦いに身を乗り出し、麗司は自己との戦いを続けるべく足を進めていく。