黒川梨乃は、心の中でドキドキが止まらない。今日、私たちの高校で美術部の作品展が開かれるのだ。もちろん、私が一番楽しみにしているのは、同じクラスの村上和真くんの作品だ。彼は本当に優しくて、皆に好かれるお人好し。だから、作品展でも注目されること間違いなしだわ。
私は早めに学校に行って、和真くんのブースを目立たせたくて、いくつかの花を持ってきて彼の作品のそばに飾りつけることにした。私自身も美術部の一員だから、美意識には自信がある。でも、和真くんのことを考えると、どうしてもドキドキしてしまう。彼に少しでも喜んでもらえたらいいのだけれど。
「おはようございます、梨乃さん」
声をかけてくれたのは、美術部の部長の佐藤さんだ。彼女は、優れたアーティストであり、いつも私をサポートしてくれる。私はニコッと微笑んで、挨拶を返した。
「おはようございます、佐藤さん。今日は楽しい日になりそうですわ」
私たちが準備をしていると、何やら和真くんが声をかけてきた。彼のふんわりとしたミディアムヘアが、柔らかな光を反射しているようだ。私は心の中で
「和真くん!」
と叫び、思わず顔が赤らむ。
「お、黒川。この花、すごくいいセンスだね」
彼は私が飾った花を指さして笑っている。
「本当ですわ? 和真くんがそう言ってくれるなら、嬉しいですわ」
私は心の中で、彼が私のことを気にかけてくれていると感じ、ますます意気揚々になる。
「ただ、もう少しド派手にした方がインパクトがあっていいかもね」
和真くんは、私の趣味を尊重しつつも、さらなるアイデアを提案してくれた。私の心は、その瞬間にさらに高鳴る。
「このまま和真くんと一緒にやることができたら、もっと幸せになれるのに」
の想いが疼く。
私は彼の提案を受け入れ、他の花を追加で飾ろうと思った。その時、彼の笑顔が私の心に直撃する。
「こうしていると、まるで私たち二人だけの作品展みたいだわ」
と思ってしまう。ますます和真くんに夢中になってしまう。
展示が始まると、生徒たちや先生たちが次々に訪れて作品を見る。和真くんは人に囲まれてとても楽しそうだった。その笑顔を見ていると、私の心はまたドキドキし始める。自分だけの和真くんのような気持ちになり、他の人たちから『私の』和真くんを守りたい思いが強くなる。
でも、その瞬間、ちょっとした悩みが頭をよぎった。和真くんが他の女の子に話しかけている姿が見えて、私の心がザワザワし始める。
「なんであの子と笑ってるのかしら…」
私の独占欲がムクムクと顔を出す。
少し苛立ちを覚えつつも、私は自分を落ち着ける。
「梨乃、冷静に。和真くんは誰に対しても優しいだけだわ。特別じゃなくても、彼の優しい一面を全部見ているのは私なのだから」
と、自分に言い聞かせる。
その後も和真くんを遠くから見守り、しっかりと気を引く方法を考え続けた。もう一度彼に近づくために、手作りのお弁当を見せに行くことに決めた。梨乃の特製オムライスは、彼の大好物なのだ。
お弁当を持って和真くんのところに行くと、彼は私の手作りを見て目を輝かせる。
「うわ、梨乃のオムライス!ありがとう!」
その瞬間、私の心はまるで花が咲き誇っているように感じた。
「どうしてそんなに私のことを大切にしてくれるのかしら?」
私は自問自答しながら、和真くんと一緒に笑顔で食べることができる幸せをかみしめる。
少しすると、周囲から視線を感じた。友達が私の様子を見てニヤニヤ笑っているのだ。
「やっぱり梨乃は和真くんに本気だよね」
と囁かれているのが聞こえてくる。私はドキッとしてしまったけれど、自分の気持ちを大事にすることに決めた。
その後、展示は大成功のうちに終わりを迎える。和真くんはたくさんの人に褒められて、その笑顔はまるで太陽のようだ。
「梨乃、この作品展、すごく楽しかったよ。ありがとう」
和真くんが私に微笑む。彼の目が私を見てくれるその瞬間、まるで時が止まったように感じた。
「これが私の想いだと思ってもらえるかしら?」
私は思わず心の声が大きくなってしまう。
「楽しかったですわ。和真くんがいてくれたからですわ」
私は春の風に乗せて、彼に想いを伝えた。この瞬間、自分の気持ちがどうにかして彼に通じていると願いたくなる。すると、彼はちょっと戸惑ったような顔をして言う。
「黒川、なんか重いこと言うね。でも優しい子なんだね、ありがとう」
あぁ、やっぱり和真くんは天然だ。私の気持ち、全然伝わっていない。でも、和真くんは私の想いを軽く受け止めてくれる。きっと、いつかは彼の心に私の存在が届くことを信じたくなる。
展示が終わり、クラスメイトとの楽しい時間を過ごした後、校門の外で和真くんと別れることになった。
「じゃあ、また明日ね、合唱祭のこともあるし!」
彼は笑顔で手を振ってくれる。それと同時に私の心の中に、彼の笑顔が深く刻まれていく。心の中の独占欲がどこかで満たされるような感覚。
「また明日、和真くん。楽しみにしているわ」
彼が去った後、私は一人で帰り道を歩きながら、今日の出来事を思い返していた。
「もしかしたら、彼の心に少しでも私が住み着いている証なのかもしれない」
と。明日も彼と過ごす時間が楽しみだ。私は心の底からそう思ったのだった。
こうして、私のヤンデレな恋心と天然な和真くんとの微妙なすれ違いが続く日常がまた一日増えた。どんなラブコメ展開が待ち受けているのか、私は胸を躍らせながら、少しばかりの期待を抱いていた。