久遠乃愛(くおん のあ)は、大学の文学部で研究に没頭していた。20歳の彼女は、心理学や論理学に興味を持ち、探偵としての趣味に従事していた。その探偵活動は既にいくつかの事件を解決に導いており、周囲からは少し特別な視線で見られていた。彼女の黒髪は長くストレートで、知的な印象を与える。彼女の冷静な観察眼とミステリアスな雰囲気は、周囲からの信頼を得る要因でもあった。
そんな彼女の相棒は、幼馴染の雪村彩音(ゆきむら あやね)だ。彩音は活発で社交的な性格を持ち、多くの友人と交わる日々を楽しんでいた。彼女の茶色いボブカットの髪はいつもピシッと整えられており、彼女自身の明るさを引き立てている。彩音は、乃愛が持っている冷静さとは対照的に、純粋で天然な一面を持っている。だが、その行動力は圧倒的で、乃愛が推理を進める間に、彼女はいつも先手を打ってサポートをしてくれた。
「乃愛ちゃん、ちょっと面白い依頼があるの!」
ある日、彩音はハイテンションで乃愛のもとに駆け寄ってきた。彼女の目はキラキラと輝いており、その興奮が乃愛にまで伝わってくる。
「何かあったのかしら?」
乃愛はいつものお嬢様口調で問いかけた。
「大学のゼミ室で、美術品が偽造されているって噂が立ってるの。教授が気づいて、誰か真相を知りたいらしいのよ!」
その言葉を聞いた乃愛は、胸の中で何かが高まるのを感じた。美術品に絡む事件は、怪しさと魅力に溢れている。面白そうだ。彼女の思考はすぐにシフトし、事件の調査へと向かう気持ちが湧き上がってきた。
「彩音さん、行ってみましょうか」
そうして二人は大学へ向かうことにした。ゼミ室に到着すると、教授が困惑した顔で待っていた。乃愛は軽くお辞儀をして、
「先生、こちらに依頼があるとのお話を伺いましたが、詳しくお聞かせいただけますでしょうか?」
教授は感謝の意を表しながら、事の次第を説明してくれた。美術品の一部が偽造されている可能性がある。教授の心配は尽きることがなく、活動を続ける中で、ますます多くの美術品が影響を受けているという。それはゼミ室の間近で起こる問題であり、その最中も模造が進む可能性がある。乃愛はすぐに考えを巡らせた。
「では、手がかりを探す必要がありそうですわね」
二人はゼミ室の中を見渡した。そこで乃愛は不自然に動かされた家具に目を留めた。
「彩音さん、見てください。この机、もう少し端に寄せると、普段の配置と違いますわね」
と乃愛が指摘すると、彩音は頷いた。
「確かに、ここにこぼれている文房具も違和感があるわ」
乃愛がさらに観察を続けると、机の下に古びた絵画が一枚落ちているのを発見した。それは、今までの知識が生かされるチャンスであった。
「この絵、独特なタッチがありますわね。不自然に置かれている気がします」
「もしかして、何かの手がかりになるのかな?」
彩音が疑問に思い、不安な表情を見せる。
「絵画とその周囲の状況から、犯人の行動を考える必要がありますね」
二人はそれぞれの視点から手がかりを集め始めた。乃愛は冷静に観察し、彩音の行動力を借りて周囲の人々に話を聞いたり、教授の意見を求めたりする。彼女たちの絆は、徐々に事件の核心に近づく助けとなった。
何日かの調査の結果、乃愛は滑らかな手がかりを見つけた。それは、周囲の目撃者から得た情報だった。特に、大学周辺にいたランダムなフリーカメラマンの存在が気になってきた。動機や行動が不自然で、何か隠している様子も見えた。そのカメラマンの話を彩音が聞くことになった。
「乃愛ちゃん、彼は最近体調を崩したらしいよ。それが原因でパニックに陥っていたみたい」
と彩音が話す。
「美術品に対する興味もあったから、偽造を思いついたかもしれない」
その情報は両者にとって重要な明るみに繋がった。
「なんだか、真相が見えてきましたわね」
「やっと掴みかけてきたかも」
と乃愛は頷いた。
そして、ついにそのカメラマンを呼び出し、問い詰めることにした。彼を捕まえるために、乃愛は策略を練り、彩音はいつもの明るさで彼を迎え入れた。しかし、その一瞬、乃愛が目にしたのは彼の緊張した表情だった。
「何かがうまく行かないかも…」
乃愛が質問を始めると、カメラマンは取り乱し、感情を揺さぶられる。彼は自分が何をしたのかを認め始めた。
「美術品を偽造することは、優れた技術を披露したくて…それに、周囲へのアピールがしたかった」
「でも、それは間違っているわ。あなたの行動が皆に影響を及ぼすのですわ」
と乃愛は冷静に指摘する。
カメラマンは思いにふけった後、徐々に小さくなっていく。
「本当にごめん…僕にはそんな判り方しかなかったんだ」
彼の言葉を受けて、乃愛は少しの苦しみを感じた。それでも正義を追求するためには、真実を伝えることが大切だと理解していた。
「あなたの行動が与えた影響を、しっかり反省しなければならないのですわ」
そう言いながら、乃愛は彼に助けを差し伸べることはできないと痛感した。
二人は、美術品の偽造事件を解決する際に、真実が生きるための道のりがつながったことを身に感じた。これからも、様々な事件が待ち受けていることが確信できた。乃愛と彩音は共にこの時を胸に刻み、未来に期待を寄せるのだった。