第35話 「生存をかけた選択」

麗司は河原の水面を静かに見つめ続けていた。水の流れは穏やかで、彼の心を少し和らげてくれる。しかし、次の行動を考えなければならなかった。水の確保は重要だが、食料の検討も急務だ。周囲の状況を確認しながら、彼は何をするべきか思案を巡らせる。

「水はここで確保できそうだが、食料…」
と呟いた。彼の持っている缶詰や乾燥食品が尽きれば、次にどこに行くべきか考えなければならない。周囲にある自然の恵みを求めるか、さらに別のスーパーを探しに行くか、その二択に彼は頭を悩ませる。

「ただ、今は安全な場所にいることが最優先だな」
と思い直し、彼は河原の木陰に身を隠すことにした。草と木に囲まれたこの場所は、外敵の目からも比較的見えにくく、しばらくここで様子を見るべきだ。しかし、安心している暇はない。麗司は自分の持ち物を確認し始めた。

リュックサックの中には、缶詰や乾燥食品がいくつか入っている。彼はそれぞれの消費期限を思い返し、どれが優先的に食べるべきか考える。生存の知恵として、食料を無駄にせず、その栄養価を最大限に引き出すことが求められた。

「今は何を食べようか」
と思った時、頭に浮かんだのは米だった。乾燥米は軽く、エネルギーを補充するには適している。しかし、食べるためには水が必要だ。水をどう確保し、保存するかが今後の動きの鍵になると彼は思った。

「水の管理が必要だな」
と決意し、流れる川を見つめた。今の時期は春、雪解け水が流れ込むこの時期は水資源が豊富だ。彼は川から水を汲むための容器として、缶詰の空き缶を使用することを思いついた。小さいながらも、十分な水を確保できるだろう。

麗司は空き缶を取り出し、慎重に水を汲むために川へと向かう。水が流れる音が彼の耳に心地よく響き、少しだけ緊張がほぐれた。だが、その瞬間、周囲の静けさは彼の心に警戒を促す。

「まずはここを出た方がいいかもしれない」
と彼は考えた。水を汲むことが第一の目的だが、その行動がゾンビの目に留まる可能性が高い。彼は注意深く、周囲を見回しながら空き缶で水を汲み始めた。

缶を水に浸し、静かに水を汲む。水が缶の中に溜まると、その清らかな色が彼の目に映った。今はまだ大丈夫だが、いつ危険が迫るかわからないという緊張感がいっそう彼の心を締め付ける。無駄に長居することはできなかった。

「これで十分だ」
と思い、麗司は缶を持って木陰の中に戻る。そして、河原の座る場所を見つけ、しばらく休むことにした。心を落ち着けるために深呼吸をし、周囲の景色を再確認する。安全が確保されているか、再度チェックを忘れずに行う。

次に、彼は缶詰を持ち出し、食事の支度を始めた。小青色の光を放つ缶詰のラベルを読み、
「うん、これがいいだろう」
と判断した。中身を出して食べ始めると、口に広がる味が彼を安心させた。栄養を摂取すること、そのことが今は何よりも大切なのだ。

腹を満たし、少しずつ状況を考える時間ができた。彼の心の中で孤独感が増していくが、同時に一人で生き延びることの重要性を感じていた。
「他者と接触するリスクがある以上、一人でいることが利益になる」
と思う。

その瞬間、彼は小さな違和感を覚えた。何かが視界に入り込む。気を緩めすぎたことに気づいた瞬間、麗司は心臓が跳ね上がるのを感じた。周囲の木々の間に、ゾンビが立っていた。

「どうしても警戒し続けなければならない」
と痛感した。すぐに彼は身を隠し、音を立てないように気配を消した。ゾンビは静かに、彼のいる場所から少し離れた位置にいて、ただ無心でうろついている。麗司は冷静になり、自分の行動を考える。

「ここは安全な場所だが、移動するべきだ」
と判断し、彼はゆっくりと体を引き、近くの木の陰に身を隠した。動きの幅を少なくし、自分が見つからないようにする。この状況を見守るため、アクションを起こすのはもう少しあとだと決めた。

しかし、ゆっくりと良い方向へ進むべきだと信じ、動き出すタイミングを探る。自分の身を守り、周囲の脅威を把握する。彼の中で煮えたぎる感情は、ただ生き延びたいという強い願いに変わっていく。

しばらくの間、じっとしているとゾンビはゆっくりと離れていった。彼はその瞬間を逃さず、すぐに木陰から出て、脅威が去った方向へ移動することにした。体の動きを素早くすることは、意志を持って走り続けることと同じだ。

移動する際も、彼は周囲を気にしながら進む。数回目を光らせることを意識し、耳を澄ませて周囲の音に注意した。
「一瞬の隙も見逃すわけにはいかない」
「音を立てず、次の行動を考えよう」
と自分に言い聞かせる。

少し進むと、彼はかつての住居街へと差し掛かった。このような場所では、失われた思い出が蘇る。しかし、今そんな感情に浸ってはいられない。彼は再び食料や水の確保を考え、地域をうまく利用することに集中した。

「近くのコンビニに行くべきか、自宅のゾンビを回避しつつ、ストックがありそうな場所を狙っていくべきか」
と考えた。毎日生き延びるためには、複数の選択肢を持たなければならない。そしてそれを適切に実行することが求められた。

彼の決心は、自分を守ることであった。行動することでしか生き延びる術はない。そのためには、闘志を持ち、周囲を観察しながら注意深く動くことが必要だ。

通りに出た彼は、住宅の隙間を利用しながら目的地を定め、進むことにした。何かが待ち受けているのか、彼はわからなかった。それでも、食料と水を求める冒険は続いていく。

その瞬間、自宅の方角からかすかな雑音が聞こえた。
「何かが近づいて?」
と思いつつ、麗司は緊張感を持ちながら身を隠すための場所を探し始めた。成行きを見守り、自分の命を守るために再び体を低くし、様子を見るこことにした。生き延びるためには、どんな行動も重要だった。

麗司はその場で静かに待ち続け、音の正体を見極めるために心を落ち着けた。生命を脅かす事態が一歩近づいてきていることを理解し、ただ立ち尽くすわけにはいかなかった。生存をかけた選択、彼はどのように行動すべきかを冷静に考え続けるしかなかった。