第34話 「孤独なサバイバーの決意」

麗司は周囲の静けさに耳を澄ませる。暗い店内には、さまざまな物音が漂っていた。かすかな振動、時折聞こえる金属がぶつかる音。自分が今、何をしているのか、一瞬戸惑いを覚える。しかし、すぐにその感情に蓋をし、現実に目を向けることにした。生き残るために、今は進むしかない。

彼は目の前の山のような缶詰の中から、最も整理された部分に手を伸ばした。冷静に、一つ一つ手に取り、その消費期限を確認する。
「まずはこれだ」
と心の中で選び出した缶詰をリュックに入れる。数個の缶詰を手にした後、何か音がまた近づいてきた気配に、彼は一瞬、身を固くする。

「まさか、来たのか」
と心臓がドキリとする。だが、麗司は慌てず、深呼吸をし、ゆっくりと気持ちを落ち着けることにした。動きのルールを思い出す。
「まず、落ち着いて。周りを見渡せ」
と自分に言い聞かせる。恐怖 mindを脇に置き、さらに薄暗い店内を観察する。

少し観察した後、音の正体が分からないまま、彼は再び缶詰に目を向ける。
「これで食糧をある程度確保できれば、数日は安心できるだろう」
と考えつつ、次の缶詰を選ぶ。静かな動作で行動を続ける。何が起こっているのか、何が自分に襲いかかるのか、全ての情報を拾い上げ、同時に自らの動きを阻む要因を無くしていく。

「やっぱり申し訳ないけれど、他の人たちと生き延びることは絶望的だ。これが今の選択肢だ」
と、麗司は心の底で冷静に自分の状況を再評価した。彼にできるのは、孤独な道を選ぶことだった。他者との接触のリスクを考えれば、彼一人の方が生存の可能性があると感じる。

ただ、孤独が彼にどれほどのストレスをもたらしているのか、心の奥底では日々増してくる重圧を感じていることを否定できなかった。

次に彼は乾燥食品を捜すことにした。カロリーと栄養を考え、少しでも助けになる食品がどこかに転がっていることを願い、周囲を見渡す。
「そうだ、あそこだ」
と、棚の奥にあった数パックの乾燥米を見つける。
「これなら軽く持ち運べて、腹を満たせる」
と、心中で予測する。

乾燥米を手に入れた際、彼は他の食品にも目を向けたが、すぐに不安に襲われる。再び足元から音が聞こえ、彼はその音を確認するため警戒心を強めた。
「近くにいるのか?」
自分の直感を信じながら、再度身を隠す場所を探し、少しだけでも離れた棚の陰に身を隠し、様子をうかがう。心臓の鼓動が早まり、時間が止まったかのように感じる。

その時、視界の隅にちらりと動く影が見えた。整頓されていない棚の間から、ゾンビの姿を認める。
「ゾンビが近づいてきた」
、その瞬間、麗司の思考は一瞬でフルスロットルとなった。

「まずは逃げるしかない」

「冷静になれ、冷静に」
と自分に言い聞かせる。目の前のゾンビはうまく隠れることができれば気づかないはずだ。彼は息をひそめ、足音を立てないように道を移動する。どんな道屈折しようとも、少しでも物音を立てないように自制を強める。

一歩一歩、彼は背中を屈め、身を縮めながら、近くの後方へ静かに動いていく。その瞬間、ゾンビはその場で止まったかのようだ。音の発生源に興味を持ち、彼の方を向く。麗司の心臓はドクンドクンと高鳴った。

「今だ、早く脱出しないと」
促され、彼は全力で動きだす。目の前の小さな出入口の方へと進み、心臓がまだ高鳴っている。このまま何かが起こるまで隠れているわけにはいかない。生き延びるためには、今動くしかないと心の奥で繰り返す。

何とか小さな出入り口にたどり着いた。体が通り抜けられるよう体を曲げ、バックパックを引きずり込む。
「間に合え、間に合え」
と祈るように目を閉じていると、出口に出た途端、ゾンビが背後から来る気配を感じた。

命からがら外に出た麗司は空気を思い切り吸い込む。体中の緊張が少しずつ緩んでいくことを感じる。
「くそ、今のは危なかった」
と心の中で自分に叱責した。

辺りを見渡し、瞬時に状況を把握する。周囲には静けさが漂い、目指すべき隠れ場所が必要だ。
「とにかく早く移動しなくちゃ、縄張りを作らないとならない」
と自分を鼓舞しつつ、移動する方角を決める。どこへ向かうのか、何が待ち受けているのか、不安な気持ちを押し込める。

麗司は再び身を隠せる場所を探し始める。周囲を見回し、前進する。廃墟と化したビルの合間を縫いながら、必死に駆け足を進める。
「所持品が無駄にならないよう、何としてでも生き残ることだ」
と強い決意が彼の中に脈打つ。

しばらく歩くと、一見して何もない道に出た。
「ここまでは大丈夫だ、冷静になれ」
と心を落ち着け、次なる目的地を選ぼうと決める。近くの川に行くためにはできるだけ幽静なルートを選ばなければならない。

再び足取りを軽くしながら街の中心部を避け、速やかに脇道へと入り込む。過去には友人たちと賑やかに遊んでいた道、そこが今は静寂に包まれた場所になっている事実に心が重くなる。麗司は
「移動の時間を無駄にしてはいけない」
と思い直し、進むべき道筋を意識する。

次第に彼は、長い道を抜けることができた。田んぼと川の風景が彼の目の前に広がり、ひとたび繁忙な都市環境から離れ、自然に身を委ねる時間が戻る。かつての賑やかな音が遠ざかり、静けさが彼を包む。

だが、次第にその嬉しさも薄れていく。
「ここも危険に満ちている」
、生き延びるには常に周囲を警戒している必要がある。
「運を天に任せず、自らの力で行動しなければならない」
と、また決意を新たにする。

彼は先に進むための準備をしなければならない。生き延びる知恵や技術を駆使しながら、こつこつと未来の見通しを立てていく。自分の力で道を切り開いていく努力こそが、彼の意志を強くするのだ。

麗司は田んぼの水面を見つめ、
「水の確保、そして食料の確認、次はどうしよう」
と頭の中で考えを巡らせ始めた。苦悩の先に待つ新しい希望へと、一歩一歩動いていく。その過程こそが、彼にとっての生きざまとなるのだ。