第3話 「サバイバルの選択肢」

麗司は息をひそめて身を潜めた。周囲の暗闇に耳を澄ませ、動く気配を感じ取ろうとする。音が止んでしまうか、あるいは何か別の音が聞こえるまで、彼は微動だにしなかった。心臓の鼓動が耳に響く。恐怖に包まれた彼の心は、サバイバルの知恵を呼び起こすことを厳命していた。

彼の目の前には、冷蔵庫や棚が並ぶ通路が広がっている。物音の正体が全くわからず、彼の心には不安が募る。周囲の静けさは、彼にとって余計に不気味だった。もしかして、何者かが自分の存在を感知しているのかもしれない。その恐れが麗司をさらに緊張させた。

少しずつ姿勢を崩し、彼は壁際に身を寄せて物音の出所に近づいた。通路の向こう側で物音が微かに続いていた。ひょっとしたら、ゾンビの徘徊か、それとも他の生存者がいるのか。麗司は自分の心の奥底で戦慄を覚えながらも、生き延びるためにはこの恐怖と向き合わなければならなかった。

「どちらにせよ、行動するしかない」

彼は自分自身に言い聞かせ、大きく息を吸い込んだ。胸の高鳴りを抑えることはできなかったが、今できることは前に進むことだ。再び、心の中で冷静さを保つように心掛けた。この状況での小さな判断が命に関わることを理解し、一歩目を踏み出す準備を整えた。

その瞬間、ふいに通路の先から金属がぶつかり合う音が聞こえた。麗司はひるんだが、すぐさま低音で潜む気配を研ぎ澄まし、注意深く周囲を確認した。影のようなものが動く気配を感じたが、動く存在はまだ見えなかった。彼の神経は張り詰め、覚悟を決める。

「静かに、静かに……」

つぶやきながら、麗司はより目を凝らし、足音を潜めた。運命の瞬間、彼は角を曲がり、一気に通路に入っていく。暗い内部の光が懐中電灯の明かりによって明らかにつながれていく。目を凝らして進むと、前方に見える衝撃的な光景に目を見開いた。

そこには、彼と同じようにサバイバルを行っているように見える一人の生存者がいた。彼女は恐る恐る物資を取り扱っていた。麗司は狼狽しつつも、その姿を見守る。意識を確保された彼が感じたのは、終末世界に生き残っている仲間かもしれないという期待感だった。

しかし、何も考えずに彼女に近づくわけにはいかない。彼女がどのような状況にいるのか、サバイバル知識の共有ができるのか、それとも自分さえも襲撃する可能性があるのか、あらゆる可能性を想定しなければならなかった。彼は一瞬心の中で葛藤し、彼女の姿をいたずらに心を惹かれる存在と確認する。

「声をかけるべきか……?」

彼は心の中でつぶやいたが、直後に冷静な判断が勝敗を決する。この不気味な状況下で、相手を警戒させずに声をかけることができるだろうか? 妄想とは裏腹に、生存者同士の友情を築く暇はなく、彼らはお互いに危険な脅威であってもおかしくないのだ。

慎重に後退し、麗司は視線を外し、あらためて物資の取り扱いに目をやった。困難な生存環境を考えるに、この場から物資を集め続けなければならなかった。しかし、前には恐れを抱く生存者がいる。時には冷静であること、時には大胆であること、彼の心には葛藤が渦巻いていた。

物資の確保を優先することはもちろん重要だ。しかし、目の前の生存者に発見された場合、彼女の行動次第では逆に自分にとっての脅威となるかもしれない。そこで彼は、もう一度周囲を確認し、適切なルートを選び取ることにした。

「まずは物資の見極め」

麗司は自らの冷静さを保ちつつ、近くにある棚を探り始めた。周囲にはさまざまな食材が散らばっており、どれも今の彼に必要なものであった。彼はできるだけ静かに、方位と照明を確認しながら進んだ。

手元に広がる物資の中から、彼は乾燥食品や缶詰、野菜を探り当て、それらがすぐに使えるかどうかを判断した。何日も生きていくためには十分な物資を確保しなければならない。そのための短期的な計画を立てていく。持っているリュックの大きさを考慮しつつ、何を選ぶべきかを考える。

次第に彼の手には食品が集まり、リュックが重たく感じられるようになったが、それでも彼の心は希望に満ちていた。様々な選択肢を踏まえ、サバイバル状態に必要な物資選びに気を配ることで、彼の生存の確率はわずかに向上するのだ。

周囲の音を確かめつつある時、麗司は不意に生存者に目を向け直す。彼女は依然として食材を選んでいるようだったが、その様子には警戒心が漂っていた。どちらにせよ、彼が注意を怠るわけにはいかない。気配を消し、さらなる物資を求めて進む必要がある。

せめて彼女との出会いを仲間と理解し合うために、一言でもいいから声をかけるべきだろうか。しかし気がかりなのは、彼女が自分を拒絶した場合の反応だ。もしかしたら、彼女も生存に必死で、他の生存者との接触を恐れているのかもしれない。

彼は考えを巡らせるうち、物資をつかむ手が次第に活動を速める。意識が逸れ始めた彼は、もう少し周囲に気を使う必要がある。自分を守るためにも、自分の立場を相手に徹底させること、もしもの場合には身をひいて飛び込んでいく危険さを考慮しながら物資を持ち運ぶ。

だがある時、突然金のような手触りを感じ取る。思わず手を止めると、麗司の目に現れたのは、以前自分が気にしていたキャンプ用のコンロのセットだった。このセットは、日々の暮らしを少しでも快適にするためには必須なものであった。

小さな火を起こせれば、食事も準備できるし、温かい飲み物も手に入る。この瞬間が彼にとっての大きな転機となる可能性を秘めていた。リュックの中には空きがあったため、キャンプ用コンロを持つことを決意した。

意識が鋭く、困難な状況に立ち向かうその瞬間が彼の運命を変えることを信じていた。麗司は無理なく道を探り出したものの、再び冷静に考えるように心がける。

行動することが命を守ること、おそらく彼の選択は目の前に現れた可能性の一つだった。そして、それを手に入れるためには、まずは注意深く周囲の人々に対して気を配る必要があった。麗司はコンロをリュックに詰め込み、再び生存者の方に目を寄せて言葉を探る。

「生き延びるためには物資が必要だ」

彼はその言葉を心の中で呟く。果たして自分が彼女に向けて話しかける時が来るのか、それともこの不気味な静けさの中で別の道を進まなければならないのか。その選択肢に対する懸念を抱えつつも、彼はサバイバルの知識と直感を駆使し、次の一歩を繰り出す準備を整えた。