第29話 「生存のための探索と決意」

麗司は暗闇の中、ゾンビの気配を感じつつも、心臓の音が頭の中で鳴り響いていた。冷静になるために深呼吸を試みるが、恐怖が邪魔をし、なかなか自然に息を吐き出せない。今は何も考えず、じっとその場で隠れるしかないのだ。

彼は目の前に迫るゾンビの姿を必死に思い浮かべる。ぼろぼろの服をまとい、腐りかけた顔は人間の面影を一切残していなかった。目だけが白く濁り、感情を感じさせない金属的な思考を持つように見える。彼にとって、そこにいるものはもはや人でなく、死の象徴として存在しているのだ。

突然、彼の耳に聞こえたのは、カタカタという金属音だった。ゾンビがその音に引き寄せられていることが分かり、背筋が凍る。幸運にも、彼らの気を引いたのは別の音源で、麗司はその隙にすかさず動き出した。目の前の暗がりからそっと音を立てないように進む。背後からの気配を感じながらも、次の行動を取ることに躊躇はなかった。

彼はしばらく周囲を進み、倉庫内を探索し続ける。物を見つけることが次の生存の鍵だと理解していたからだ。暗い奥の方には、他の物が積み重ねられている様子が見えた。意を決してその方へ進み、近づくと、壊れた段ボール箱や古ぼけた日用品が散乱している。ただのゴミのように見えるが、彼はその中に生き残るための希望を抱き、丁寧に一つ一つ確認した。

「何か役立つ物があるはずだ」
と、麗司は自分に言い聞かせる。その瞬間、古いリュックサックが目に留まった。背中に背負うには量がデカいが、道具を収めるには最適かもしれない。そこにはかつてこの倉庫にいた誰かの痕跡が残っている。彼はそれを手に取る。

その中には、少しだけど食料が入っていた。干し肉、簡単にエネルギー補給ができそうなカロリーメイト、そして少しの水も見つけた。どれも彼の生存には非常に役立つ品々だ。麗司はその小さな幸運を胸に抱き、そっとリュックに詰め込む。これでしばらくは持つだろう。

次に彼は周囲の状況を観察し、次の行動を考察する。暗い倉庫内での探索を続けた結果、彼が今後必要な物資について考えていたことが明らかになっていた。だが一方で、その不安を胸に、常に警戒し続けなければならない。ゾンビが意外と近くに潜んでいる可能性は否定できなかった。

「他には何喰えそうなものがあるかな」
とつぶやきながら、彼はさらに倉庫内を進む。目の前の扉に目を向け、その先に何があるのかを思わず想像してしまう。そこで彼の思考が過去を彷徨う。あの頃、友達と遊んでいた日々や、家でオタク趣味に耽っていた時間。それはこの状況とは真逆の、穏やかでありふれた日常だった。

だが、彼にとってそれはただの懐かしさでしかなく、その瞬間には無縁のものなのだ。
「生きなければならない」
と何度も強く自分に言い聞かせながら、意識を明瞭に保つことで今の状況に目を向けた。

ようやくもう一つの物置場所を見つけた。中にはおそらく日用品や工具が入っている。誤って何かを落として音を立てたとしても、もう既にゾンビに広く注意を引かれていることを思い返し、少しずつ慎重に進んでいく。奥の方にある棚には、ロープ、なんとかなりそうな工具、そして部分的には食料が残っている可能性がある。

「ロープはまだ使えそうだ」
と麗司は思った。自行車で持ち歩くことも伝えられた知識の一部だが、何に使うかは分からない。ただ、それが自分を助けてくれるかもしれないと思い、しばし手に取った。彼はその道具を自らの運命に組み込むかのように、しっかりとポケットにしまった。

食料品の確保は本当に大きな一歩だが、次は何を探すか。彼は思考を巡らせ、倉庫の奥深くへ進む。だが、暗闇と静寂の中、少しでも音を出せば重大な結果を招くことを忘れてはいけなかった。最悪の場合、彼の人生そのものがそこに脅かされるのだ。時間をかけて製品を探りながら、
「自分には生き残るための情熱がある」
と心のどこかで信じた。

突然、どこからともなく少しの音が耳に入った。それはさっきとは比べ物にならない程のリアルな動きだった。ひやりと体が冷える。麗司は瞬時に身をひそめ、体を低くしてその音の発生源に集中した。自分の心臓が鼓動を刻む音が、より高まり、耳にこだまする。彼の全身がその瞬間、緊張感で満たされている。

「これは、まずい…」
心の中で何度も繰り返す。ゾンビは近づいている。耳を澄ますと、賑やかな壁の続きが響き渡っていた。反射的に、彼は自らの状況を評価し、逃げたとしても戻る場所を確保する方法を探る。そのためには焦らず、状況を整理しつつ次に進む必要があった。

麗司は隣の棚に移動し、不自然な響きが近づいてきたその瞬間をやり過ごすことに決めた。静けさの中、彼はあらゆる感覚を研ぎ澄ませ、周囲を観察する。何か動きがあると、彼の心の中でも臨戦態勢が整っている。その音が、次第に近づいてくる。

やがて、大きな何かが彼の前を通り過ぎた。ゾンビの姿そのものだ。やはりあの姿を見逃すことはできなかった。ゆっくりとした動作で倉庫内をさまよい、確かに彼の存在に気づいていない。しかし、麗司は注意深く注意を向け、動き続けることを決して忘れない。

麗司は少しずつ進みながら、他に出入り口がないか探っていく。だが、自己を生存させるためにはすぐに行動することが不可欠だった。手のひらの汗がじわじわと広がっていくのが自分の不安の表れだと感じる中、彼は周囲を見渡した。

ここにいる限り、彼は手にしているものを守るために小さな隙間に逃げ込む方が良い。それに、あまり大きな動きをしないことで生存への道を見出せる。彼の視界の先に、運の良い選択肢が待っていることを信じた。その場所へ向けて進んでいくことにした。

ゾンビは動いているが、麗司も負けじと自らのいくつかの行動を一つ一つ積み重ねて、段階を踏んで進むことにした。静かに足を運びながら、予想しない発見をしようと努力を続ける。
「このままではダメだ」
と決意した彼。それは彼の生存と命をかけた違和感だった。

次第に探索が終わりへと向かう時、彼は心音が高鳴り、波のように押し寄せた。しかし、それでも麗司は自分の態度を思い出し、冷静でいる必要があると強く考えた。生存のためには、あらゆる可能性を探るしかないのだ。

彼は次にどのような道を選ぶか、心の底で思案を巡らせながらその場で判断を下すことにした。

「ここから先の行動がどれほど重要か、考えずにはいられない」
と心の中で呟く。しかし、その時、突然目の前の暗がりから新たな影が現れた。麗司はようやく恐れずに自分自身を鼓舞する瞬間を迎えた。

彼の心に希望の火が灯る。どのような運命が待ち受けていても、自分には生きる意思がある。鋭く冷静に判断し、目の前にある道を切り開いたその瞬間、麗司は決断を下す。

「生き残るために、全てを手に入れる」
と、彼は誓ったのだった。彼の孤独な戦いが続く中、今後の行動に影響を与えるとも知らず、自らの決意を強めるのだ。彼が目指すのは、確固たる未来であり、生き抜くための希望だった。

麗司は静かな決意の中、自身の選択肢を見出していくのだった。