第23話 「ゾンビの脅威からのサバイバル」

麗司は出口へ向け、一歩を踏み出した。その瞬間、心臓が大きく跳ね上がった。ゾンビへの恐怖が彼を押しつぶすような感覚があった。背筋を伸ばし、呼吸を整える彼。無数の思考が脳裏を過ぎ去る中、彼は冷静さを取り戻そうと努めた。

出口に向かう道は薄暗く、所々で壊れた木材が落ちている。おそらく、昨晩の嵐がここに残した痕跡だろう。麗司はその音を阻むため、少しずつ慎重に動いた。音を立てぬよう、彼は木材を避け、滑らかな床を選ぶ。どれだけ注意を払っても、ゾンビたちの驚異は彼の心の中にうっすらと影を落とす。

「正面はどうだ…」

麗司は静かに耳を澄ませた。出口が近いという実感が彼を少し大胆にさせた。しかし、その期待は彼が出て行くべきという圧迫感に浸透している。今ここから逃げ出したとしても、彼が目の前に待ち構えている難題を克服できなければ、安堵や実りはない。

出口に近づくにつれて、彼は周囲に目を配り続けた。ゾンビの気配が近くにないか、そこに一縷の望みを託しながら。彼の本能が警告する。ドキドキと鼓動が高鳴る。しかし、その感覚が彼の判断を曇らせることなく、むしろ冷静さを保つ原動力となった。

ひどく緊張するその時、薄暗い出口の先からわずかに光が漏れているのを見た。彼はその光の先に何があるのかを確認するため、立ち止まっては周囲を凝視した。出口を開いてみれば、彼はすぐに外の状況を認識しなければならない。

「ここから出られる…!」

と、心の中で叫ぶ。麗司は警戒しながら、そっとその明かりの方向に身を寄せた。ゾンビは音に反応すると学んでいる。音を立てぬよう、彼は自分の存在を消そうとした。そして、足元の障害物にも気を配りながら、ゆっくりと出口に近づいていく。

外の景色が明るく浮かび上がる。その光景は、彼の思い描いていた都会の風景とはかけ離れていた。街は死んだ都市のように見え、道にはひび割れたアスファルトと、折れた街路樹が無残に転がっていた。どこを見てもゾンビが徘徊する様子は見当たらなかったが、その油断は命取りになるということを彼は骨の髄から理解していた。

「まずは安全な場所を見つける必要がある」

麗司は心に決めた。これからの行動計画を練るためには、まず安定した場所に身を置くのが先決だ。彼はさらに周囲を見渡し、次の逃げ道を探ることにした。もちろん、周りの状況を注意深く観察しながら。

目の前の通りには、数軒の家や商業施設が並んでいる。その中でも、目を引いたのは近くのファミリーレストランの赤い看板だ。食材を確保するため、彼にとっては良い場所かもしれない。即座に行動を決めた彼は、心の中で計画を組み立てる。ゾンビの存在を警戒しつつ、あのレストランを目指す。

彼の心には安堵もあったが、それ以上に
「やってやる」
という強い意志が満ちていた。おそるおそる走り始める。風も収まり、周囲の静寂が彼を包み込む。時折、かすかな呻き声が耳に入るものの、自身を隠し続けている限り、何とかやり過ごせるだろうと信じた。

人々のいた風景が破壊されたことに疑問を持ちながらも、彼はその時が来るまで進み続けた。もし自分が変わらず生き残るなら、必ず手に入れたいものがある。そのためには一歩でも前に進む必要がある。

「なぜ生き延びるのか…」

それを問うのは無意味だと思いながら、彼は必死に笑みを浮かべずにスピードを上げていた。最初の目標に向かって駆け抜ける中、その小さな希望を捨てないでいようと根性を奮い立たせた。

レストランの入り口が目の前に迫る。麗司はさらに注意を払ってその場所に触れないようにした。だが、突然の物音が彼を驚かせた。背後から近づく影。彼は急に心拍数を上げ、振り返る。

そこに見えたのは一頭の野生の犬だった。ゾンビ同様に、何も考えずに近づいてくる。状況を一瞬で判断する麗司。彼はその犬が自分に向かってくることを悟った。
「こいつも生き延びようとしてるんだ」
という思いがより一層強く芽生えた。

その瞬間、彼は後ろに下がった。犬はゾンビではない。だが、野生の本能で恐怖を感じていた。音を立てぬよう身を隠しながら、手を挙げ、犬が恐れないように気を使って静かに後退した。目の前のレストランにはそんな気ぜわしさに満ちた中、思わぬトラブルが待ち受けていた。

犬が少しずつ姿を変えながら近づいてくる。そのコンパクトな体躯は見えなかったが、獰猛な表情をしていることは間違いなかった。身を縮めながら、どうするべきかを考え、麗司は自らの思考を巡らせる。

「やっぱり、何か投げてみるか…?」

麗司は持ち物の中から小さな缶詰を取り出した。犬はそれに興味を示すかどうかを、彼は見守った。何らかの注意を引くことで、自分を逃がすチャンスを得られるのではないかと考えた。彼はその缶詰を地面に投げた。大きな音を立てぬようゆっくりと。

缶詰が地面を転がり狗の目の前に到達した。匂いを感じ取った犬の顔つきが変わった。興味津々だ。麗司はその隙に、もっと早く移動するためにその場を離れた。小さな勝利を得るための戦略だった。

犬が缶詰に集中している隙に、麗司は出口を目がけて再び走り出した。心拍数が戻りつつあるが、その興奮がある間はこのまま走り続けることを決める。今彼の目の前にある建物が、彼にとっての新たな拠点になることを願い、心の中で再度確認しあった。

レストランのドアに辿り着き、無事に扉を開けることができた。この場所には食材が残されているかもしれない。彼の心には早くも期待が膨らむ。万が一ゾンビが待ち構えていても、彼の冷静さは乱されない。

薄暗い店内に入り込むと、すぐに冷たい空気が彼の身体を包み込んだ。周囲には倒れたテーブルや椅子が散らばっているが、無事のようだ。一瞬の安堵感を覚え、麗司は周囲を見渡した。

「まず確認しよう」

冷蔵庫を探し回って適当な食材があるか確認する。その中身が生存のための鍵になる。彼はサバイバルのための新しい食材を得るために突入した。選ぶ必要があるのはここから先の運命を決する行動になる。

冷蔵庫の扉を開けてみると、中には焼肉や刺身、野菜類が整然と並んでいた。見た目には新鮮そうな食材があった。ここはうまく道を見つけることができたようだ。麗司は早速、冷凍食品をリュックに詰め込み始めた。

「今のうちに、食材をたくさん確保しておくしかない…」

彼はやはり食材の重要性を強調した。日々の食事は、彼にとって単なる栄養源以上のものだった。彼は自らの時間を少しでも楽しく託けるための必要不可欠な要素だ。インスタント食品とも合算すれば、長期間持ちそうなその食材は彼の貴重な資源となるはずだ。

冷凍庫の中には、見事に包装された肉類もあった。彼はそれを選び、目に止まる新鮮な食材を選び続けた。やがてリュックがどんどん満ちてゆき、自身の動きを果たすための気迫が高まっていく。

「これだけあればしばらくは安心かも…」

麗司は自分の選択に満足し、とても穏やかな気持ちになった。しかしその気持ちは続かなかった。急に、背後から不気味な音が響いてきた。ゾンビの呻き声だ。彼の心は一瞬にして、再度恐怖で満たされる。

「ここに気づかれたらまずい」

再度、冷静さを取り戻す。心拍数が高まる中で彼はすぐに行動へ移さなければならない、と素早く判断した。冷蔵庫から飛び出した後、隠れる場所を探す。急いで隣の部屋に移動する際には、その速度を意識しなければならなかった。

その部屋は大きな食堂のような場所だが、今ではひどく荒れている。破壊されたテーブルやカウンターが散乱。敵に見つかる危険がそこに隠れている。麗司は他の場所にいても、ここにいる限り生き抜かねばならないという現実を思い知らされる。

「ここはどのように生き延びるか…?」

彼は心の中で、次の行動を模索した。冷蔵庫からの迅速な移動が生き残りの鍵であることを忘れずに、隠れるべき場所を見つけなければいけない。暗闇の中で耳を澄ませ、彼は目を閉じた。

静寂が全てを包み込んでいく。その空気が、今後の選択を意味する。ある意味で、そこには麗司の運命を左右する要素がある。流れた時間は頑固に彼を試すかのように続いていた。生生しい世界が彼に示す痛みが、彼を冷静に、かつ積極的に行動するために駆り立てていた。

麗司は自身を信じて、希望を持ちながら立ち向かわなければならない。ゾンビの脅威が迫る中で、彼の生存は努力そのものであるという事実を忘れずに。それが彼の間もない現実であった。そして、求めた未来に向かって進むために、精一杯の努力を彼はし続けた。

さて、次なる準備を整えよう。隠れている間に思考を整理し、その不安感を静めなくてはなるまい。麗司は生き延びるために次の行動を決定する必要がある。それが生き延びられるかどうか、その選択が彼にかかっているのだ。

彼のサバイバルはこれからどこへ進むのか、運命の道を走り続ける。日常の平穏は過去のものとして飛び去り、今はただ生き残りを賭けた戦いを続ける時。勝ち取るべき未来へと歩み続ける彼の背中は、希望の光で満ちた道を探り続ける。

この先の行動と、その結果が彼を砕いていくのか。それとも、彼に新たな希望をもたらすのか。彼の選択によって、運命は変わる。生き延びること、この絶望の中で彼は自分自身を信じ、生き続けるために戦うのだった。