麗司は息を潜めながら、リュックの中身に手を入れていた。音を立てないように、慎重に缶詰の蓋を確認し、次に水のペットボトルを見つめる。心臓が早鐘のように打つ中で、彼の手は震えていたが、冷静さを保つことが生存の鍵であることは、彼自身が強く理解していた。
背後でゾンビの動きが鈍くなる。一瞬の静寂が訪れ、麗司はその隙を使うことにした。冷蔵庫の中から新たに取得した食材を手に、彼は急いでリュックの中に詰め込む。即席ラーメンと新鮮な食材の組み合わせが生存への道筋を与えてくれることを願った。
冷蔵庫周囲の薄暗い影の中で、麗司は一瞬の判断を試みながら身をひそめていた。ゾンビの存在が近づいてきそうな気配を背に、再び静寂を感じ取る。もし音を立てれば、全てが終わってしまう。彼は徐々に身を隠しながら、次なる脱出を考え始めた。
彼は超然とした心持ちで、次の道を選ぶ準備を進める。このレベルの緊張感は、もはや彼の日常の一部となりつつあった。大都市であるはずのこの場所が、いまはゾンビたちが徘徊する荒れた地と化してしまっている。麗司は、自身のもつ知識を駆使してサバイバルを続けなければならなかった。
「どうする、次は…」
心の中で問いかける。現状を把握し、冷静に思考を進める必要があった。近くのスーパーの出口はどこか、周囲にゾンビはいないか。その確認が彼にとって第一の優先事項だ。かすかな音さえも彼の動きに影響を与えかねない。背を屈めて身を縮めた彼は、目を閉じ、心の準備を整えた。
静かに息を吐き出し、麗司はもう一度周囲を觀察する。棚の間を通り抜けてみれば、そこには冷蔵庫が残してきた食材の香りと共に、次なる一歩を踏み出すためのチャンスが広がっていた。ゾンビの呻き声が近くで響く中、彼は再度冷蔵庫の中を覗き込む。
「これさえあれば…」
思い浮かんだのは、インスタントラーメンに加えることができる調味料の数々だった。彼は何度もそれを使って、新しいレシピを考えていたことを思い出し、その経験を生かそうと決意する。ゾンビを避けながら、食材を確保するだけでなく、彼自身の楽しみにつながる形にもできるはずだ。
その確信を胸に、麗司は音を立てないように慎重に動き出した。無我夢中で確保した品々を確認し、再び近づくゾンビとの距離を縮めることが無いように行動する。彼の目の前に広がる光景は、どうしても彼に希望を与えようとはしてくれなかった。
彼はリュックを背負い直し、出口へ向けて動き始めた。間違ってゾンビの近くには行かないように意識し、ゆっくりと慎重に選び抜いた道を進んだ。周囲の根気強さが彼に次なる一手を思わせる。自然と集中力が高まり、他のことを考えないように彼は誘導されていた。
ドアを越えると、外界の空気が彼に強く作用してくる。湿気と腐敗臭が混じり合う情景。その中に、一筋の冷たい風が入り込む。麗司は一瞬、足を止め、じっと耳を澄ませた。その瞬間、すぐ近くに隠れた仲間やあるいは仲間となり得る者の姿を想像し、自己の存在意義を見出した。
「どうして、どこに…」
孤独な感情が心をざわつかせる。周囲には彼だけしかいないという事実が再度彼を包み込んでいく。麗司は自らに呼びかけ、高めた集中力に身を委ねた。仮に他者と繋がりがあったとしても、現状では自己の存在が重要であることを改めて確認しなくてはならない。
次なる行動を選ぶ時が来た。彼は再度、その場に身をかがめ、出口へ向かう方向を明確に決めた。その緊張感が彼を奮い立たせ、不安を小さくさせる。周囲に潜むゾンビの存在など、気にする暇はない。彼は生き残りをかけ、進まなければならなかった。
麗司は目の前の壁を慎重に越えた。その際、首を高く持ち上げ、自身の目の前に迫り来る危険を一目で確認しようとした。その姿勢でドアの動きに敏感になりながら、新たな姿勢で立ち向かう準備を整えた。
ゾンビに出くわすことのないことを切に願い、彼はまるで生きているかのように立ち止まった。内なる焦りや恐れを押し込め、ついには数歩ずつ進む覚悟ができていた。その姿勢が、彼の前に立つ運命に立ち向かわせてくれるはずだった。
麗司は再び周囲の気配を探った。冷蔵庫が彼の背後にある限り、彼には一つの選択が待っている。その時、今一度、リュックの中を確認し、新しい食料品を全て把握していた。新鮮な食材が彼のサバイバルを支えてくれる。その期待感が広がる中、麗司は目の前の入り口を凝視した。
「行くしかない」
一歩踏み出す。その瞬間、彼は思わずリュックを背中にしっかりと担ぎ直し、周囲を見渡した。もし栄養補助食品や飲み水の不足を避けられるのならば、彼の選択肢は幅広くなるはずだ。空腹さを一時的に解消しつつ、仲間よりも自分の生命を優先させるのが彼の選択だった。
周囲の気配を鋭く感じながらも、次第に空気の変化が彼を癒してくれる。麗司は背中の重さを軽く感じ、より前へ進む気持ちが高まった。遠くから響くゾンビの静かな呻き声を掛け合わせながら、彼はこれからどんな展開が待ち受けるのか自らを鼓舞した。
彼は生存をかけ、都市機能が崩壊した日本に再び光をもたらすことができるかもしれないと、淡い期待に包まれていた。この瞬間、彼が取る行動が運命の分かれ道となるのだという認識が芽生えていた。全ての選択肢が彼の指先にかかっているのだと、思考を巡らせる。
「決まった、前へ」
麗司は躊躇うことなく、出口へ向かって力強く足を踏み出した。彼の未来が切り開かれる時が来たのだ。ゾンビという恐怖に打ち克つことで、新たな生を求めて前進する勇気を胸に、彼は目の前の扉を開け放つ準備をした。
彼の体が動き出すと、出口へと続く暗いトンネルのような道へ進む決意が固まった。確かな希望をもって、彼は生き抜くために前に進む。果たして麗司は、生き延びることができるのか。これから待ち受ける運命の日々は、どんな展開を見せていくのか。それは彼自身の選択によって決まるのだ。無限の可能性に満ちた未来が、今彼の目の前に広がっている。