第20話 「孤独な冬の土壌作り」

水無月青志は、静まり返った夜の温室の中で瞑想していた。心の中に浮かぶのは、これからの計画と次なる作業への期待だ。
「明日は培養土の準備を進めて、ほんの少しでも土壌の質を向上させなければ」
と彼は思いを巡らせていた。昼間の努力があってこそ、今の自分がここにいる。極寒の環境での孤独な生活は、時折不安や孤独感をもたらすが、同時に自分を成長させてくれる時間でもあった。

彼は寝床に横たわることをためらい、しばらく静かに考え込んでいた。
「そのためには、まずは何を用意しよう」
と反芻する。彼の作業場には、DIYに欠かせない道具も整っている。その道具を使って、どうにかこの冬を乗り越えなければならない。

目を閉じたまま、彼は頭の中にある計画を整理する。おそらく、必要な素材は温室にすでに存在している。青志は自分のアイデアを具体化するために、心の中でメモを取るように思考を進めた。
「まずは、育てる作物に合った土壌作りをしなければならない」
自分が育てたいキヌアとアマランサスは、栄養が豊富で適切な環境が必要だ。彼はそれを頭に置き、平安な気持ちで眠りに落ちていった。

次の日の朝、青志は早めに目を覚ました。自宅の温度を気にしながら、彼は温室に向かう準備を始めた。寒さが厳しいこの冬、朝の冷気は勢いを増すばかりだ。彼は鼻をくすぐるような冷たい空気に負けじと、心を奮い立たせた。
「さあ、今日もやってやろう」
と力強く思った。

温室に足を踏み入れると、いつもとは少し違う空気感が青志を包み込んだ。冷たさが空気の隙間から忍び込んできている。彼はまず温度計を確認した。
「昨日より少し低いな。今のうちに何とかしないと」
と彼は心を引き締めた。作業がすべて終わるまで、温度を一定に保たなければならない。

青志は培養土の材料を鞄から取り出した。古い米袋や枯れ草、以前に集めた落ち葉など、多種多様な素材が詰まっている。まずはそれをかき混ぜて、栄養を均等に分散させるところから始めることにした。
「これをうまく活用すれば、もう少し土が良くなるはずだ」
と青志は意気込み、やる気を出させる。

彼は作業台に材料を並べると、必要な道具を用意した。スコップと手袋とともに、青志は培養土に手を加える準備を整えた。まず、空気を含ませるためのかき混ぜ作業に取り掛かることにする。質の良い土によって、作物が育つかどうかが決まるのだ。
「ここでしっかりとやっておかないと、先がない」
と自分に言い聞かせながら、彼は手を動かした。

土を混ぜていくうちに、彼の心の中に小さな喜びが芽生えた。何かを成し遂げるという感覚が彼を包み、孤独感が少し和らいでいく。
「自分が育てるんだ。この土が作物たちの栄養源になってくれる」
と思うと、心に温かさが戻ってくるような気がした。

しばらく作業が続いた後、青志は次に堆肥作りにも触れることにした。
「これも大事な作業。土の質を上げるには欠かせない」
と彼は再確認した。今取り扱っている落ち葉や米ぬかを使うことで、堆肥を作る計画を立てる。
「まず、落ち葉と米ぬかを混ぜていこう」
と心の中で手順を確認する。

そうしているうちに、青志は何かが足りないことに気づき始めた。堆肥が適切に変化するためには、温度や湿度を管理することが必要だ。水分を与えすぎれば腐敗してしまうし、逆に乾燥すれば変化しない。彼は
「どうやったら最適な環境を作れるのだろう」
と思案を巡らせた。)

外の寒さが厳しくなる中、青志は新たな道具を思いついた。古いブリキ缶を使って、水分管理のためのシステムを考えようと。彼は早速、缶を探しに行く。転がっている缶を見つけると、彼はその缶を取り上げ、土壌覚えを水供給用のタンクとして変身させる構想にワクワクした。
「これなら、堆肥に適度の水を与えやすくなるだろう」
と彼は嬉しさを隠せなかった。

活用方法を考えると、缶に水を注ぎ、適度に土へ流し込む仕組みが必要だ。彼はしっかりと缶に小さな穴を開け、水が放出されるようにしていった。
「これで、堆肥の状態が良くなった時に、すぐに水を与えられる」
その成果を思い描きながら、彼は心の中で一歩前進を感じた。

この缶を設置した後、青志は温室の隅っこに戻り、堆肥と育成のための土を引き続き整理することにした。また少し冷え込む前に、土をしっかり干させるためにも順調に進めなくてはならない。
「冷え込む前にやりきらなければ」
と自分に言い聞かせた。

次なる作業は重い土を運ぶことだ。しっかりと養分が取り込まれたら、そこに育ちやすい環境を整えなければならない。彼はしっかりと手袋をつけ、好きな土を選んで運び入れることにした。
「地道な作業が、結果に繋がるからこそ大切だ」
と思って。時間がかかる仕事だが、一歩ずつ前進していると感じていた。

数時間が経過し、口を開けた土壌作りが進んでいく。青志は手を動かしながら、
「こうやって作業を続けることで、土の質が徐々に改善されている証だ」
と心が満たされていた。彼にとって、DIY作業はもはや手段ではなく、自身の成長を実感する瞬間でもあった。

しかし、時折訪れる孤独感がふと心をねじり始める。手を動かしながらも、
「誰かと一緒にやりたかったな」
と小さく呟くこともあった。しかし、孤独と向き合うことは彼にできる強さをもたらしてくれた。
「この環境は自分が作ったものだ。ここで自分を磨く力を見つける」
と思い直し、再び手を動かすことに。

そんな時、温室の外で強い風が吹き始めた。
「また厳しい寒さが来ているのか」
とつぶやき、冷気が侵入してきたと感じながら作業を続けた。彼は慎重に動き、少しでも温室内部を温かく保てるよう心掛けた。体と心が引き締まる中、辛い状況も新たな挑戦を生み出す原動力になるのだと改めて自覚した。

日が暮れかけたころ、青志は最後の作業に取りかかった。さまざまな土から取った栄養分を混ぜ合わせて、彼は更なる改良を試みた。たっぷりと時間をかけて、成果を確認する。混ぜた土壌は気持ちよくまとまり、手ごたえを感じた。
「いい土ができそうだ」
と確認した時、彼の心に、少しだけ明るい光が灯った。

最後に彼は全ての道具を元の位置に戻し、ようやく一息つくことができた。心地よい疲れが全身を包み込む中で、穏やかな満足感が得られた。
「これが自分の努力の賜物だ。今後が楽しみだ」
と思いつつ、外の風が穏やかになったかに思える夜に耳を澄ます。
「果たして明日はどんな作業が待っているのだろう」
と考えながら、心の奥に希望を持って再び寝床に向かう彼の姿には、自分を育てるための日々の努力がにじみ出ていた。

そして、彼は静かな夜に包まれながら、さらなる成長を願って目を閉じた。明日への計画を思い描きながら、彼はこの極寒の世界の中で生き延びる力を一手に引き寄せていた。