第20話 「サバイバルの中での奮闘」

麗司はスーパーの中で少し安堵の息を吐いた。背負ったリュックに物資が一つまた一つと積み込まれていく。それは彼にとってかけがえのない財産であり、今後の生存に直結するものだった。しかし、悠然とした空気は彼には許されていなかった。心臓の鼓動が高鳴る中、ゾンビに見つかることは許されない。

彼は周囲を警戒しながら、先ほど確保した水のボトルをリュックの奥へ仕舞い込む。同時に、次に必要となる物資を思案していた。食料と水はもちろんのこと、最低限の防衛具や調理器具、薬品なども必要だ。それらを手に入れるため、再び動かなければならない。

再び棚に目をやる。目の前に広がる混乱の中で、運が良ければ役に立ちそうなアイテムが見つかるかもしれない。彼は頭の中でプランを練る。まず、周囲の状況をしっかりと把握することから始めた。音がしないように、そっと物の位置を確認していく。

気になるポーションや缶詰などが散らばっている棚を見つめ、こっそりと足を進めた。スーパーの冷蔵庫の扉は開きっぱなしになっており、そこからは冷たい空気が漏れ出してくる。中には今や腐敗した食材が並べられているが、真っ白なパッケージの即席ラーメンが目を引いた。

彼は心の中で願った。このラーメンはまだ食べられるものであってほしい。もし、期限が来ていなければ、これを食料の一つとして確保できるはずだ。彼はすぐにその商品に手を伸ばす。

後ろから音が聞こえる。その音は確実にゾンビだ。
「まずい、見つかるかもしれない」
。麗司は慌てて目の前の棚から商品を取り、リュックに詰めこむ。音はどんどん近づいてきている。その瞬間、彼は背中に冷たい汗が流れるのを感じた。心臓の音が耳に響き、呼吸が次第に乱れていく。恐怖に打ち勝つため、彼は自分に言い聞かせる。

「冷静になるんだ、落ち着け」

その思考が彼を助けた。麗司は不安に駆られながらも、後ろを振り返らずに済ませることができた。すぐに近くの食品棚の影に身を隠し、息を潜める。恐ろしい存在が彼の目の前に迫っている。それを想像しただけで、再び冷静さを失いそうになる。しかし、数回の深呼吸で心を整えた。

目の前のゾンビは、彼が隠れている方向に来る。歩く様子は異様に遅く、ただただ音に反応している。麗司は、逃げ道を考えながら徐々に心を落ち着けた。彼は思考を巡らせ、今後の行動を選択することに集中する。動作を最小限にし、今は目の前を通り過ぎるのを待つしかない。彼は見えない形で、運に任せるつもりだった。

ゾンビの鼻先にいるという恐怖の中で、彼の心拍数が収束していく。近くまで近づいたゾンビは、そのまま隣の棚に引き寄せられ、彼の常識を超越していく。麗司は、これが現実であり、想定していた
「サバイバル」
だと実感する。

その瞬間、彼は反射的に動く。ゾンビが棚の隙間を這いずり回っていた隙に、彼は別の道へと抜けることにした。音を立てないよう足元を気にしながら駆け出す。運良く通り抜けた先には、別の冷蔵庫があった。そこには生鮮食品や缶詰もまだありそうだ。

背後を振り返りつつ、麗司は急いで移動を続ける。しかし、次の瞬間、彼は道を間違えかけた。彼が向かった冷蔵庫近くに一体のゾンビが居座っており、その迫力ある動きと目の前に広がる空間が彼の行動を幾度となく阻んだ。

「この姿勢のままでいる限り、いつまでも脱出はできない」

心の中で叫びながら、彼は立ち止まらないことにした。そのまま元の道へと戻り、別の通路を進む。冷静さを装い、小さな音に耳を澄ませる。彼の目は、物を探しながらも周囲の移動を追った。

そしてユニークなパッケージが視界に入った。即席のキャンプ用品がしまわれていた小さなスペースに、災害用の嚙みごたえのあるエネルギーバーが確かに存在していた。潔癖な食べ物であれば食べることができるだろうと考えた。そして何より、この瞬間を逃してはならないという思いが強まった。

「確保するしかない」

麗司はそこで少し耐え、手を伸ばした。同時にリュックを背負っていた腕で物の重さを測っているうち、ちらっと振り返ると目の前にゾンビがいることに気づいた。すでに逃げ道はない、何とか逃れなければ生き延びることすらままならない状況だった。

「逃げるしかない!」

体が指示を出すのと同時に、彼は何とかローリングしながら素早く周囲を確認した。人気のない空間を目の当たりにし、背を向けて走り出る。音が接近しているのがわかる。麗司は果敢に冷静さを失わず、ゾンビたちの姿を気にしながら隠れ場所へ走った。

彼は周りを見渡し、最寄りの出口へ進んでいく。奇跡的に通路の先を見つけ、急いで突き進む。人の目が見えない中、彼は必要最低限のものをひたすら求め続ける。再び目的地の近くに近づくと、後ろから音がする。

精一杯の気力で無事の道を見つけ、麗司は安堵の気持ちを隠しつつ、再度行動を決意する。後ろに迫ってくるゾンビたちの影に怯えつつ、強く心の中で思う。

「今日もなんとか無事に帰りたい」

その言葉を自分に言い聞かせる。少しでも運を天に任せるように。待機する時間を少なくし、彼は気を集中させてここから逃れ、次なる品物を確保するための動きへと移る決意をする。

その瞬間、麗司は将来への不安が増すことを感じていた。世の中が崩壊し、自分の目の前に立っているのはゾンビたち。その者たちは一度でも噛まれてしまえば、その運命は暗転してしまう。彼のサバイバルは始まったばかりだ。麗司はまだ、この恐怖の中で戦わなければならなかった。

彼は危険を承知で、周囲を静まり返らせ、今のうちに取りこぼさないよう、リスクを背負って先を急ぐ。そして、今の注意力や冷静さを失わぬまま、次なる行動を決める。

リュックに水や食料が確保された。しかし、次の動きはそれに依存することで、さらなる生存が可能になることがこの先の重要な課題であった。

物資を無事に持ち帰ることができるのか。その思いを胸に、彼は次なる目的地を探り始める。そして、彼の新たな生活の一歩が、街の荒廃の中でどのように形作られていくのか。何が待ち受けているのか、彼は生き延びるための知恵を試される時が続いていく。