第16話 「未来への準備と決意」

青志は、温室の中で一日の作業を終えた後、冷え込む空気を感じる窓の外に目を向けた。外はすっかり夜になり、雪が静かに降り積もっていた。彼の心の中には安心感とともに、次に進むべき準備に対する決意が芽生えていた。

「次は、もっと効率よく食料を生産するための準備が必要だ」
と青志はつぶやいた。ジャガイモやほうれん草が成長することを期待する一方で、他にも育てられる作物を増やす必要性を感じていた。彼は、限られた空間の中でいかに多様な植物を育てるかが、今後の生存に繋がると確信していた。

まずは、栄養豊富な土をさらに集めることから始めることにした。冷たい外気に対抗するため、厚着をして倉庫へ向かう。青志は外に出ると、足元の雪がきゅっ、きゅっ、と音を立てながら、彼の行動を阻むように柔らかく積もっている。冷たい風が顔に当たるたびに、寒さが体にしみ込む感覚を強く感じる。しかし、その厳しい環境の中で、彼は内なる情熱を抱きしめる決意を持っていた。

倉庫に到着すると、青志は中を見渡した。自分の生活に必要な資材はここに揃っている。古い土用の容器がいくつか見つかり、青志はそれを選び取った。これに新鮮な土を入れ、植物を育てるスペースを増やそうと考えた。
「こうやって土を集めれば、十分に育てることができる」
と心の中で思い描く。彼は手を使い、土を掘り起こし、容器に詰める作業に取り掛かる。

作業はあまりスムーズには進まなかった。ここでもやはり、手がかじかんで感覚が鈍くなっていた。それでも、青志は動作を止めず、さらに掘り続けた。
「この冬を乗り越えれば、咲く未来が待っている」
と自分を励ましながら、何度も自分に言い聞かせる。

土を運ぶために、いくつかの容器を用意し、順調に土を集めていると、突然、耳元でうめき声のような音が聞こえた。青志は一瞬驚き、周囲を見回した。
「まさか、誰かが…」
と警戒しながら、静かに息を潜めた。外の暗闇に目を凝らすが、ただ雪が静かに舞っているだけだ。
「気のせいか」
と思い、再び掘り起こす作業に戻った。

容器を持って温室に戻る途中、今日の出来事を振り返りながら青志の胸には充実感が広がっていた。手をかじかませながらも、目的達成への前進を感じていた。温室のドアを開け、中に入ると、温かい空気が彼を包み込む。土を容器に移し替え、さらに必要な土台を作り上げていくことを考え、青志の心は穏やかだった。

さらに、物資を確認しながら、万が一の備えとして乾燥した豆類や種子を温室に仕舞い込む作業を続けることにした。
「栄養価の高い植物は、今後のためにも必要だ」
と彼は考えた。豆類は特に簡単に育てられるし、成長も早い。こうして、彼の食事の選択肢を広げることができる。彼は椅子に腰掛け、ポケットから種の袋を取り出して、しばらく囁くように確認した。

「ああ、これならすぐに芽を出すはずだ」
と青志は微笑んだ。次は、これらの種をどのように育てるかを計画することだ。しかし、どう残りの必要な資材を工夫して用意するか、その点でも考えを巡らせていた。彼のDIYスキルが試される瞬間でもあった。

少し休憩を取りながら、青志は手元にあったノートを取り出した。簡単なメモとして、育てたい植物の種類や必要な場所、湿度の表示を確認しながら、次に何をするべきかを具体的に書き出した。自分の思考を整理することで、計画的に行動できるようにするためだ。

ノートを閉じ、青志は改めて温室を見渡した。段ボールや古い布で作った応急の保温装置が、まるで彼の努力の結晶のように輝いていた。
「これが俺の生きざまだ」
と、彼は心の中で感じた。しかし、周囲はまだ危険が潜んでいることを忘れてはならない。人が多く集まる都市部では、混乱が起き続けていると聞いていたその影響は、こちらの孤独な生活にも影を落としていた。

青志は、今度は温室の壁に補強材を追加する必要性を感じた。出入り口の近くには特に冷気が流れ込みやすい場所があり、ここをしっかりと封じ込めなければならない。彼は手持ちの道具を見て、新たに土台を作るための準備を始めた。

道具を手に取り、できるだけ効率よく作業することに決めた。
「これなら、自分の手で無駄を省いた方法で行ける」
と前向きな気持ちになり、やる気に満ちていた。彼は木の板や、古い家具の部品を使って温室の隙間を埋めることを始める。思い出しながら、以前のDIY経験が役立つと信じ、順調に進むことを願っていた。

作業の最中、青志は孤独感がふと押し寄せてくるのを感じた。周りには誰もいない。友人や家族の顔が浮かび、ふとした瞬間に寂しさが胸を締め付けることがある。しかし、やはり彼は負けてはいなかった。
「誰かと一緒に過ごしたいとは思うが、今はこの選択をした以上、一人で乗り越えなければならない」
と心に言い聞かせた。

温室の壁の補強を終えると、青志は早速新たに集めた種を植え付ける準備を始めた。これにより、春には新しい作物が育ち、食料供給が安定すると彼は思った。
「この苦労が継続的な生命を生み出すのだから、決して無駄ではない」
と強く確信した。時間がかかるが着実に進んでいる彼の思考は、まさに未来へ向かっていた。

作業が進むにつれ、青志は暗く静かな温室の中で、植物の呼吸音が微かに聞こえてくることに気づく。彼はその音に耳を傾けながら、
「植物が成長するために最適な環境を作り出すことが、自分の仕事だ」
と感じることができた。これまで以上に自然と向き合い、協力し合う関係を築くことが始まっているのを実感した。

彼は、手指がかじかむ寒さに耐えながらも、着実に手を動かし続けた。作物たちが成長し、実を結ぶことを信じて、その瞬間を待ち望みながら――。
「この生活がなくなることのないように、守っていくのだ」
と強い決意を持った。

夜の深まりとともに彼自身の思考もまた深化していった。自分がこれからどう進むべきか、何を作り出すべきかを真剣に考える時間が、彼にとっての大きな成長の場でもあった。
「春が来るまで、さらなる準備を続けなければ」
と自らに言い聞かせながら、青志はまだ見ぬ未来に対する期待を胸に、ゆっくりと体を動かし続けた。

心の奥に灯った小さな希望が、青志の行動に力を注いでいた。温室内部をして、彼は一日を振り返り、体力を補っていくことを誓いながら温まるコーヒーを注いだ。一息つき、未来に向かって一歩を踏み出すことが待ち遠しかった。そして、再び新たな希望に満ちた思考を巡らせるのだった。