第11話 「生き残るための孤独な戦い」

麗司は静かな部屋の中、心の中で次の行動を巡らせていた。今は何をするべきか、何を整えなければならないのか。彼はこの異常事態による孤独と恐怖に押し潰されないよう、自らに言い聞かせた。
「生き残るためには、計画的に行動しなければならない」
と。準備を進めることこそが、彼を支える唯一の方策なのだ。

彼は窓の近くに座り、周囲の景色を注意深く観察した。薄暗い光の中、廃墟と化した地面には、遠くで微かな動きが見え隠れしている。正体不明の影は、ゾンビであろうか、それともほかの何かか。麗司は瞬時に反応し、視線を逸らした。もし自分の存在が知られたら、彼は命の危険にさらされることになる。そのため、窓のすぐ近くにいることは避け、少し後退して作業を続けることにした。

彼は空いた空間に散乱した道具を整理し、次に必要なものをリストアップすることにした。まずは水だ。水の供給が途絶えた今、周囲の環境を探ることが急務であった。マンション周辺には水道があったはずだが、すでにゾンビに満ちた街を相手に、簡単には取りに行けない。そこで彼は考えた。
「ペットボトルや空き缶で集められる水はないか」
。浮かんだアイデアは、ささやかではあるが、命をつなぐ要素として非常に重要だった。

麗司は部屋の片隅に置き去りにされていた空き箱を手に取り、整理を始めた。器用には動かせないが、隅々まで探ることだけは忘れなかった。かつての彼にはこの孤独な作業は得意だが、今は心の奥底から不安が押し寄せる。彼は手元の物品を一つ一つ見直し、一体何が役立つのか考えながら、心の中で焦燥感が高まっているのを感じていた。

次に、彼はスーパーで調達した食材を見直し、消費期限や保存方法を確認した。それから、食材を何日間生き延びさせることができるかを計算する。せっかく手に入れた食料を無駄にしないためにも、無駄な動きを避け、最大限に活用しなければならない。
「これまでの生活よりも、より計画的に行動する必要がある」
と心に決める。

麗司は食材の中からインスタントラーメンや缶詰の数を確認した。彼にとって、シンプルな料理の技術は冬の寒さを生き延びるための大きな武器となった。お湯を沸かす道具としてちょうどいい鍋があったことに気づき、その鍋を大切に扱うことにした。
「湯を沸かすための燃料も必要だ」
と彼は思った。外に出て材料を集めることは不可能だが、何か手に入れられる手段を探し出すつもりだ。

それから彼は、ダンボールや雑誌をまとめておくことも検討した。燃料として使えるかもしれない。彼の頭の中にいくつもの生存戦略が巡り始めた。次の準備作業では、燃料の確保に加え、食材を効率的に保存するための工夫が必要だと感じた。冷蔵庫は使えないが、その中に保存されている食材をそのまま持ち出しては、自らの生活を圧迫することになる。そこで、彼は新しい入れ物として空き箱を使い、新鮮さを保てるように工夫することに決めた。

しかし、これらの準備を進めている中で、麗司は孤独の中に感じる恐怖が全く消え去ったわけではなかった。初日の混乱は消え去らず、彼の裏には常に暗い影が付きまとっていた。周囲から生き残りへの圧力と恐怖感が漂っており、その感覚は体温を下げるように思えた。
「不安に押しつぶされるわけにはいかない」
と必死に自分を奮い立たせる。一瞬の隙を生まぬよう、行動はスピーディに。しかし、注意が散漫にならないよう気を引き締めて進もうとする。

次に何をするか、次の準備に思いを巡らせる。食べ物が尽きたとはいえ、十分な数量が手元にあり、周囲の状況を考慮すると生き残りの道は見つかりそうだ。すでに周囲の環境は整えられた。刃物や道具を使い、今後の自主的な生活空間を整えられるよう努めなければならない。何もできず無為に日が過ぎるだけの日々を送ることは、彼にとって最も許しがたい事態だった。

次に、麗司は壁に掛けてあった小さな布を手に取り、それを物の間仕切りとして使えないかと考えた。少しでも視覚的な目印を付けることで、どれだけ空間を利用できるかが変わる。その布があれば、ストレージエリアと寝床を分けられ、生活空間が整う。
「少しでも快適に過ごせる空間を作れるかもしれない」
と始めた彼の心には、やる気が湧き上がった。

もちろん、周囲からの危険が消えるわけではなく、大気の中には腐敗と恐怖が漂っている。ゆっくりと、確実に作業を進めるべきだ。布を使って仕切りを作り、食事の場所、作業する場所、そして寝る場所として明確に分けられる空間を作る。手先を動かしながら、
「これを終わらせることで、少しでも安心できる」
という期待感に心が弾む。

だが、これらの行動は彼を孤独にするものでもあった。自分の空間を整えつつある一方で、外の混沌との狭間で葛藤し続けている。彼の手元にあるのは自らの孤独な戦い。人間社会の中で、急速に変わっていく環境に対する無力感が、薄暗いスペースの中で彼を包み込んでいく。

周りの物が片付いていく中で、彼は思わず笑みを浮かべることがあった。
「もしかしたらこれが、本当に生き延びる手助けになるかもしれない」
と希望を持った瞬間が確かに存在したのだ。しかし、希望が生まれる裏側には、次なる危機が待ち構えていることを忘れないでいた。

彼は自分を奮い立たせながら、道具や物を適切に活用することに努めていた。周囲が崩れてしまったこの都市で、生き延びる道を模索する彼の姿には、やはり可笑しさもある。いつしか自分の生活のために奮闘する自らが、この悪夢の中で本当に生き延びられるのか、その不安が心の中で焦燥感と共に膨らんでいく。

しかし、恐怖に身を任せることは選ばなかった。彼の心の底にある、決してあきらめないという思いは、彼に行動を促していた。孤独から生まれる恐怖感が、彼を圧迫するようでいて、それを克服するためにただ進むしかないとの思いが強くなった。心の中の小さな希望を抱きしめ、次の行動へと繋げていく——。

麗司は再び心を整理し、次に取りかかりますべき作業を考え始めた。生活空間が整ったとはいえ、次は日常生活に必要な物資を探し出す必要があった。彼はもう一度、外に出ることを考えました。その際、最大限の注意が必要であることを理解しつつ。

確保すべきは、近隣のスーパーやコンビニの物資だったが、決して無防備に外出するわけにはいかない。少しずつ外に出る危険を減らし、必要最低限の物資を手に入れられる方法を探らなければならない。次の行動は、そうした生存の可能性を高める、新たな試みに違いなかった。確実に言えるのは、命を守るためなら、どんな手段でも講じるつもりだった。

彼はこうして日常生活の再構築を進めつつ、自らの意志を大切に胸に抱えていた。いつか彼がこの暗闇の最中から抜け出し、再び陽の光の中で生活できる日が来るのかどうかは分からない。それでも、確かな一歩を踏み出すことが、命を繋ぐための確実な手段であるのだということを忘れないようにしていた。生き延びる力は、孤独の底から決して芽生えないとは思っていなかった。

彼は立ち上がり、身支度を整える。次の行動が新たな一歩となることを心に決める。
「進むべき道は、正面にある」
と、一瞬の決意のもとに心を強める。これから何が待ち受けているかは分からないが、次の探索の旅に出かける準備を整えていくのだった。