黒川梨乃は、毎朝早く学校に行く習慣があった。特に今日はなんだか特別な日な気がする。クラスメイトたちが授業前の時間を楽しむために、黒板に絵を描くというイベントがあるのだ。もちろん、彼女にとってその中心人物は村上和真、彼の優しい笑顔を思い浮かべるだけで胸がドキドキする。
「和真くん、今日も早起きですわね」
と、クラスメイトに優しい声をかけられた時、彼はいつも通りに穏やかな笑顔を浮かべていた。その瞬間、彼女の心の中にいる彼への想いがさらに強くなった。
授業前の準備の時間、クラスメイトたちが黒板の前でワイワイと盛り上がっている中、梨乃はじっと和真に目を向けていた。彼の髪が優しい風に揺れる様子が愛おしくてたまらない。彼女は心の中で、
「今日は何か特別なことを伝えられるチャンスがあるかもしれない」
と期待を胸に抱いていた。
「さあ、みんな絵を描こう!」
と呼びかける声が響くと、クラスは一気に活気づいた。梨乃もその波に乗りながら、様々な色のチョークを手に取る。他のクラスメイトたちがキャラクターや風景を描いている中で、梨乃はもちろん和真をテーマにした絵を描こうと心に決めた。
「これが和真くんのイメージですわ」
と、梨乃は可愛い和真の似顔絵を描き、周りのクラスメイトにも見せびらかした。彼らは笑いながら、彼女の真剣な姿を応援してくれる。
「梨乃、可愛い!でもこれ、和真君に似てるかな?」
とひとりの友達が冗談を言う。
「似てますわ!彼の優しさと純粋さはこれ以上ないですわ!」
と、自信たっぷりに答えた。実際、梨乃のうちにある和真への思いは、彼女の描く絵にも反映されている。彼の優しい笑顔、ふんわりした髪、そしてそのまっすぐな眼差し。彼女はその全てをこの絵に込めていた。
「あ、梨乃その絵、すごく上手だな!」
と声をかけたのは、彼女と同じクラスの男子生徒だった。
「村上に見せたら、絶対喜ぶよ!」
その瞬間、梨乃は何かが胸を締め付けるのを感じた。和真には誤解されてしまうのではないか、そう思うと少し不安になった。けれど、彼女は負けない。自分の想いを彼に届けるためには、少しの勇気を出す必要がある。
「和真くん、ちょっと来てくださいませんか?」
梨乃は彼の方を向いて、少し緊張しながら言った。周りのクラスメイトたちはその様子を見守っている。
和真は意外そうな顔をして、でもやっぱり優しい笑顔でゆっくりと近づいてきた。
「黒川、どうしたの?」
と尋ねる。
「これ、和真くんを描いた絵ですわ」
と言いながら、自分が描いた絵を見せる梨乃の心はドキドキでいっぱいだった。彼女の心の中で、彼に自分の想いを伝えたいという気持ちが渦巻いている。
彼は絵をじっと見つめ、
「すごく似てるね!可愛い!」
と笑顔を浮かべる。梨乃の心臓は
「バクバク」
と音を立てる。彼が自分の気持ちに全く気づいていないなんて、一体どうしてだろうと思う。
その後、絵を囲むクラスメイトたちの反応がすごく楽しい。しかし、梨乃の心の中では
「これは和真くんにしかわからないはずだ」
と強く信じたまま、彼と目を合わせていた。
「梨乃の絵、俺にも描いてもらいたいな」
と自然に和真が言ってみた。
それを聞いた瞬間、彼女の心は完全に高鳴る。
「え、和真くん、私と描くってことですか?」
と彼女はドキドキしながら返事をする。
当たり前ですが、和真は無邪気に頷く。
「うん、梨乃が描いてくれるなら、きっと素敵な絵になると思うから」
思いが強すぎるのか、梨乃はすぐに隣にいる皆を気にせず彼に夢中になった。
「それでは、和真くんの笑顔をもっと引き出すために、強い光のポイントを入れますわ」
と、すっかり満面の笑みで彼の隣に座り、まだ描いていない喜びに浸る。
この瞬間、彼女の心の中には愛情が溢れていた。周りのクラスメイトたちが見ていることも忘れ、ただ彼と一緒にいることだけが幸せだった。
「この絵、和真くんに見せたいですわ!」
と体全体で表現しながら、彼女は自分が彼を想うことを誇りに思った。
けれど、彼女は和真が気づいていないその状況に少し心の中で不安を持っていた。
「どうして和真くんは、私の密かな想いに気づかないのかしら。いつも見守っているのに」
と考えると、急に不安感が彼女を襲った。
その不安を抱えつつも、彼女は頑張って和真のために最高の絵を描こうとエネルギーを注いでいた。和真が自分の気持ちを理解してくれる日が来ることを願いながら、彼女の気持ちは、彼以外の誰にも伝わらないもどかしさを抱えていた。
その後、みんなが描いた絵を並べながら和真と梨乃はたくさんの楽しい会話を交わした。和真は時折、周りのクラスメイトに梨乃の絵を絶賛する様子も見せ、愛おしさがさらに高まった。
時が経つのを忘れ、彼女はただ和真と一緒にすごすことだけに集中していた。彼女の心の中で
「これが私の運命、彼とずっと一緒にいたい」
と強く感じる。一方、和真は無防備にそんな梨乃の愛情を受け止めながら、彼女が怖い夢にうなされたりすることが全く理解できなかった。
「梨乃、今日も素敵な絵だね」
と和真が再度褒めると、梨乃の顔は真っ赤になった。
「和真くんのために手が込んだのですわ、喜んでもらえると嬉しいですわ!」
と自信満々に言ったけれど、内心は
「本当に彼に気持ちが伝わっているのか不安だ」
と悩んでいた。
クラスの楽しい雰囲気の中、周囲の友達とともに笑い合ったり、絵を描いたりする中で、梨乃は何度も小さく
「和真くん、私をもっと見てください。私の真剣な想いに気づいてください」
と心の中で叫んでいた。
その日、学校でのイベントは終わり、教室を出ていくとき、梨乃は思わず短いため息をついた。彼に全部を伝える自信が持てなかった彼女は、また次のチャンスを待ち続ける。彼女の心の中には、たくさんの愛が詰まっていたが、自然と和真に向けた勇気がなかなか出てこない。
それでも、みんなが楽しい時間を共有し、彼女の心の中には少しでも和真に気持ちが伝わったことを思った。その優しい笑顔が自分のために特別なものになるように、梨乃は何とかその日を乗り越えた後、小さく思った。
「次はもっと大胆に、和真くんのために挑戦しますわ」
次の日、また新しく描く日が来ることを心待ちにし、自宅で彼について色々考える。和真のことを想うだけで、梨乃の心は暖かくなるのであった。
「いつか、必ず和真くんに私の気持ちを伝えるのですわ、その日が来ることを楽しみにしながら、頑張りますわ」
と、彼女は再び心を立て直すのだった。